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中国農業展望報告(2025−2034)を発表(飼料編)(中国)

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 中国農業農村部は2025年4月20日および21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2025−2034)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は24年の総括と34年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。
 本稿では同報告のうち、飼料について紹介する。

1.2024年の飼料需給動向

 2024年の飼料生産量(注1)は、3億1503万トン(前年比2.1%減)とわずかに減少した(表)。内訳を見ると、濃厚飼料(1294万トン、同8.8%減)はかなりの程度、配合飼料(2億9354万トン、同2.3%減)およびプレミックス(注2)(695万トン、同2.0%減)はわずかに、いずれも減少した。

 (注1)配合飼料、濃厚飼料、プレミックスの生産量の合計。
 (注2)配合飼料の原料として不可欠なビタミンやミネラルなどの微量成分をあらかじめ混合(プレミックス)したもの。
表 飼料の需給動向および見通し
 飼料の消費量は、豚の飼養頭数減少などによる需要低下の影響を受け、3億1162万トン(同2.5%減)とわずかに減少した。仕向け先別では、養豚向けが1億4222万トン(同4.3%減)とやや減少し、反すう動物向けが1545万トン(同6.9%減)、水産向けが2198万トン(同6.0%減)と、いずれもかなりの程度減少した。一方で、肉用家きん向けは飼養羽数の増加を背景に9567万トン(同1.2%増)、採卵用家きん向けも同じく3278万トン(同0.6%増)と、いずれもわずかに増加した。
 飼料原料の輸入量は、中国国内の飼料穀物価格が比較的低い水準を維持したことや、国内需要の低下などから減少した(図1)。エネルギー源となる飼料原料(トウモロコシや大麦、こうりゃんなど)の輸入量は、4872万トン(同15.8%減)とかなり大きく減少した。このうち、トウモロコシは1378万トン(同49.2%減)と大幅に減少したが、大麦は1424万トン(同25.7%増)、こうりゃんは866万トン(同66.1%増)と、いずれも大幅に増加した。
図1 飼料原料(エネルギー源)の輸入動向
 たんぱく源となる飼料原料(大豆かすや菜種かす、魚粉など)の輸入量は、862万トン(同10.4%減)とかなりの程度減少した(図2)。一方、大豆および菜種(注4)の輸入量は1億1100万トン(同6.7%増)と、かなりの程度増加した。

 (注4)大豆や菜種は、国内で搾油し、その残渣(大豆かす、菜種かす)を飼料として利用する。
図2 飼料原料(たんぱく源)および大豆、菜種の輸入動向
 飼料原料全体の主な輸入先を見ると、ブラジル、米国、カナダ、豪州およびウクライナの5カ国で輸入量全体の87.0%を占めた。このうち、ブラジルからの輸入が48.2%(同0.2ポイント減)、米国からの輸入は19.1%(同1.4ポイント減)と、いずれも減少した。
 飼料の年間平均価格は、飼料原料価格の下落を受け、養豚向けが1キログラム当たり3.54元(72円:1元=20.31円(注5)、同9.4%安)、肉用鶏向けが同3.65元(74円、同8.6%安)、採卵鶏向けが同3.36元(68円、同8.9%安)となった。

 (注5)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年5月末TTS相場。

2.2034年までの飼料需給動向予測

 2025年の飼料の生産量および消費量は、家畜飼育の工業化、大規模化が進んでおり、配合飼料の使用割合が増加すると見込まれていることなどから、3億1907万トン(前年比1.3%増)および3億1788万トン(同2.0%増)と、いずれもわずかな増加が見込まれている(表)。また、飼料価格は、飼料原料であるトウモロコシや大豆の供給量が十分と予測されることから、緩やかな下落が見込まれている。
 長期的には、飼料原料である国産のトウモロコシと大豆の単収向上に伴い供給能力の上昇が見込まれていることで、34年の飼料生産量は3億3810万トン(年平均0.8%増、基準期間比<22〜24年の平均値からの増減率>8.0%増)、消費量は3億3488万トン(年平均0.8%増、基準期間比7.9%増)と予測されている。また、飼料価格は、飼料原料の自給率が向上し、輸入先の多様化から安定的な原料の確保が進むことで、家畜・家きんの飼養規模と飼料需要が徐々に均衡するため、変動率も縮小すると予測されている。
 今回の展望報告では、前年と同じく飼料原料の輸入量についての展望は示されていない。ただし、国内のトウモロコシと大豆の単収向上や飼料作物の品質向上、たんぱく質飼料資源の有効活用により、飼料原料の自給率が向上することで、輸入依存度は徐々に低下すると見込まれている。
 今後の見通しに関し留意すべき事項として、1)国際的なサプライチェーンに影響する政治的もしくは軍事的な諸課題に関するリスク(中東情勢を受けた紅海航路からの迂回など)、2)技術革新の進展状況(技術開発し、産業転換をするまで)、3)世界的な天候不順、4)家畜疾病、5)米国との貿易摩擦−などが挙げられている。

【参考】
各畜種などの需給動向および見通しについては、以下をご参照ください。
・海外情報「中国農業展望報告(2025−2034)を発表(豚肉編)(中国)
・海外情報「中国農業展望報告(2025−2034)を発表(鶏肉編)(中国)
・海外情報「中国農業展望報告(2025−2034)を発表(牛肉編)(中国)
・海外情報「中国農業展望報告(2025−2034)を発表(牛乳・乳製品編)(中国)
・海外情報「中国農業展望報告(2025−2034)を発表(トウモロコシ編)(中国)
【田中 美宇 令和7年6月27日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4389