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中国国際乳製品業界大会において政府機関が講演(中国)

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 中国食品土畜輸出入商会(注1)は6月20日、北京市で中国国際乳製品業界大会を開催した。この大会は同商会が毎年主催し、中国の乳製品貿易に関係する外国政府、政府系機関(注2)、中国政府機関および中国企業の代表者が乳製品や酪農業に関する取り組み内容を紹介し合うものである。今年も昨年に引き続き、中国の大手乳業会社である伊利集団が全面的に協賛した。

 (注1)同商会は、2001年に「WTOセーフガード協定等及び関税定率法」に基づき、ねぎ、生しいたけなどのセーフガード緊急暫定措置が取られた際の中国側の関係団体であり、中国全国に約4500社の会員(主に農畜産物や木製品の貿易関係)を抱えている。昨年の同大会の様子について「中国国際乳製品業界大会において政府機関が講演(中国)」(令和6年6月27日発)をご参照ください。
 (注2)外国政府系機関としては、デンマーク大使館担当参事官が冒頭挨拶を行ったほか、ベルギー、豪州、オランダ、ドイツ、米国およびチリの各大使館担当参事官が自国の取り組みを紹介した。

中国の乳製品輸出入状況

 中国の乳製品(生乳を除く)の輸入量は、中国政府が乳製品の消費拡大を積極的に呼びかけた2021年に401.7万トンを記録して以降、3年連続で下降した(図1)。その理由は国内消費の不振にあるとされている。
図1 乳製品輸入量の推移(2014−24年)
 乳製品の輸入先の構成は比較的安定して推移しており、最大の輸入先であるニュージーランド(NZ)を筆頭に、オランダなどのEU諸国や豪州が上位を占めている(図2)。
図2 乳製品の輸入先別割合(2024年)
 2024年の品目別輸入量を見ると、最大の輸入品は乳幼児用調製粉乳や全粉乳などの粉乳製品である(図3)。昨年に比べて乳製品輸入量は減少し、唯一増加したのはそのうちバター(前年比4.3%増)だけであり、減少率が最も高かったのは全粉乳(同17.5%減)となった。
図3 輸入乳製品の品目別割合(2024年)

中国政府機関代表による基調講演

 中国政府からは2機関が参加し、それぞれの発言の要旨は以下の通りである。

(1)中国海関総署(税関)輸出入食品安全局

 食品の輸入は国内消費者の多様なニーズに応えるために行うものであり、海外の機関と連携しながら引き続き食品の安全性確保に努めていく。
 2024年も食品安全に関する国家基準(GB:国家标准(GuojiaBiaozhun))について、新設と改正が多数行われた。乳製品に関係するものとしては、通則的な基準として「包装済み食品ラベル通則」(GB7718)、「包装済み食品栄養表示通則」(GB28050)、「食品中汚染物質制限量」(GB2762)などが、商品関係の基準として「生乳」(GB19301)、「滅菌乳」(GB25190)、「発酵乳」(GB19302)などがあった。
 食品の中でも乳製品に関する基準は網羅的であるが、6月1日時点で60カ国(昨年は56)の合計2199の企業(昨年は2683の企業)がこれらの基準を満たし、中国向け輸出認定施設として登録されている。
 当総署では食品安全を確保するための監督業務として、監督を行う企業の抽出率の引き上げ、報告の逐次要求、実態が不適切な場合の暫定輸入差し止めなどを行っている。乳製品の輸入において輸入商(企業)が負う社会的責任は非常に重い。関係企業はこのことをよく肝に銘じて輸入を行ってほしい。

(2)中国市場監督管理総局特殊食品安全監督管理局

 乳幼児用調整粉乳について紹介する。乳幼児用調整粉乳は2009年に施行された食品安全法にも特殊医学用食品と並んで特殊食品の例として明記され、わが国の食品安全行政では常に重視されてきた(注3)
 乳幼児用調整粉乳に関する登録制度は18年から開始されており、現在では157企業が合計1226の調整方法について登録し、うち中国企業は120企業で1004の方法、外国企業は37企業で262の方法となっている。外国とは、NZ、オランダ、フランス、韓国、デンマークなどの12カ国である。
 乳製品については24年下半期以降に関係の通知を発出しており、粉乳原料における微生物基準や粉乳原料の保管・輸送などについての基準を明確化するほか、国家基準を改正し、生乳の使用を原則とすること、などの見直しを行った(注4)。規制を厳しくしているだけではなく、手続きを簡素化している部分もあるので関係企業はよく確認してほしい。
 当局ではより適切な監督業務を行うため、海外施設に対する現場調査の「常態化」を進めている。問題があってから現地を確認するのではなく、必要なときにいつでも現場を確認する、ということである。具体的には、食品安全についての技術的な協力文書を23年にフランス、デンマークと締結し、24年に豪州、NZ、フィンランドと締結した。コロナが終息したため昨年から現地確認も再開しており、24年には11のチームが9カ国・地域の13業と46の商品(調整方法)を確認した。25年もすでに2チームが現地確認を行い、今後も5チームが現地確認を予定している。

 (注3)中国では2008年に牛乳へのメラミン混入事案が発生し、1万人を超える乳幼児が入院する事態となった。これが直接の契機となって09年に食品安全法が制定された。
 (注4)国家衛生健康委員会と国家市場監督管理総局が2025年3月27日に共同で発出した食品安全に関する国家基準「全国食品安全基準のうち牛乳(滅菌乳)」の改正により、滅菌乳の原料として生乳のみを認め、全粉乳などの使用は認められなくなる。25年9月16日に施行される。
【調査情報部 令和7年7月3日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530