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英国とインド、FTAを締結、食肉・乳製品の一部は関税を維持(英国)

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 英国政府は2025年7月24日、インドとの自由貿易協定(FTA)として包括的経済貿易協定(CETA:Comprehensive Economic and Trade Agreement)の締結を発表し、合意内容の詳細を公表した。両国政府は5月6日、同協定締結で合意したと発表していた。今後、両国での承認手続きを経て発効される。本協定により、二国間貿易の額は長期的に年間255億ポンド(5兆1492億円、1ポンド=201.93円(注1))増加すると見込まれている。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年7月末TTS相場。
 
 関税の取り扱いについて、英国は99%の品目の関税を撤廃し、インドは90%の品目の関税を削減または撤廃する。ただし、英国、インドともに畜産物に関して関税削減・撤廃の対象外とする品目を設けている。
 それぞれの国の食肉・乳製品に関する関税の取り扱いを見ると、英国は、豚肉、鶏肉および鶏卵については現行関税を維持し、それ以外の食肉や乳製品は関税を即時撤廃する。インドは、羊および山羊の肉については即時関税撤廃するものの、それ以外の食肉、乳製品、鶏卵を含むすべての鳥卵についてはすべて現行関税を維持する(表)(注2)
 
(注2)内容の詳細は、英国関税についてはFTA協定付録2A−b「SCHEDULE OF TARIFF COMMITMENTS OF THE UNITED KINGDOM」、インド関税については同付録2A−a「SCHEDULE OF TARIFF COMMITMENTS OF INDIA」をご参照ください。
表
 また、食品安全基準や衛生植物検疫措置(SPS)については、英国とインドはそれぞれの基準を維持する。輸入品はこれまで通り、輸入先国の基準を準拠する必要がある。英国政府は、本合意によって英国の基準が引き下げられることは一切ないとしている。
 
 英国の農業・園芸開発委員会(AHDB)は、本CETAについて、輸出・輸入の両面で影響は大きくはないが、長期的には輸出機会の増加が見込まれると評価している。英国からの輸出に関しては、羊肉についてインドの中流階級向け需要の増加を期待するとした。一方、インドからの畜産物の輸入に関しては、2024年時点で同国からの輸入がなく、またインド産の乳製品は国内市場に注力していることから、影響は限定的としている。
 
 欧州では米国の関税強化を念頭に、貿易多角化を進める動きが活発になっており、この英国とインドの事例のほか、2024年12月以降では、EUがメルコスール、インドネシアとの間でのそれぞれ貿易協定を政治合意している。
【調査情報部 令和7年8月8日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527