2025年8月6日付けのベトナム国営メディアの報道によると、ベトナムでは今年初めにアフリカ豚熱(ASF)の感染が確認されて以降、感染拡大が深刻化しており、34の省と市のすべてでASFが発生し、すでに約7万頭の豚が処分されている。
同メディアによると、特に小規模農家でのバイオセキュリティの確保が不十分であることが指摘されており、1)ワクチン未接種豚の飼育、2)不衛生な飼育環境−が感染拡大の要因として挙げられている。ベトナムでは、2023年にASFに対する世界初の商用ワクチンが承認されたが、コスト面の課題からワクチン接種率が低いとされていた。
ファム・ミン・チン首相は7月28日、ASF感染拡大の予防および対策の徹底のため、緊急指令に署名した。その内容は、1)感染源の早期摘発と殺処分、感染拡大の防止、2)防疫対策の指導、監督、検査の強化、3)豚の密輸、違法輸送の取り締まりの厳格化、4)家畜伝染病の予防・対策のための財源確保−が主とされている。
年末の消費需要に向けて、国内の豚肉供給の安定が急務とされており、ブラジルなどの主要豚肉輸出国を中心に輸入量は増加傾向にあるとされている。
ベトナムの豚肉消費量は、388万トン(2024年)と世界第5位の豚肉消費国である。また、同国の人口は14年の9120万人から24年には1億134万人へと11%増加し、一貫して増加基調にあることから、今後も豚肉消費量の増加が見込まれている。同国の豚飼養頭数を見ると、19年に発生したASFにより同年は2021万頭まで減少したが(図1)
(注1)、それ以降は回復傾向で推移していた。一方、ベトナムの輸入量
(注2)は、ASF発生後の21年には25万2000トンと19年輸入量の約3倍にまで増加し、その後、国内の豚飼養頭数の回復に伴う豚肉生産量の増加により、24年には12万トンまで減少していた(図2)。
注1:2019年に発生したASFについての詳細は、『畜産の情報』2023年7月号「アフリカ豚熱を経験したベトナムの養豚業の動向 〜中小規模の生産者の現状を中心に〜」をご参照ください。
注2:ベトナムの豚肉輸入量は未公表のため、各国の輸出量を用いて算出。