2025/26年度の農業総産出額、過去最高の見通し(豪州)
豪州農業資源経済科学局(ABARES)は9月2日、2025/26年度(7月〜翌6月)の農業総産出額などの見通しを公表した。
これによると、同年度の農業総産出額は前年度から0.7%増の947億2284万豪ドル(9兆2809億円:1豪ドル=97.98円(注1))と見込まれており、過去最高を更新する見通しとなった(図1)。前回6月時点の見通しから41億豪ドル(4017億円)上方修正されており、これは牛(生体)の市場価格および牛肉価格の上昇や豪州南部における作物収量見通しの改善を反映した結果とされている。なお、林業、水産業の産出額を加えると、農林水産業全体で初の1000億豪ドル(9兆7980億円)を突破する見通しとなっている。
一方、農畜産物輸出額は、前年度から2.5%減の746億2900万豪ドル(7兆3121億円)と見込まれている(図2)。減少の要因は、干ばつの改善が見込まれる豪州南部での牛群再構築による出荷率の低下予測を反映した結果、牛のと畜頭数が減少し牛肉輸出量が減少するものであるとされている。また、作物類についても、主要穀物・油糧種子生産国の生産増が予測されることから、輸出額が減少すると見込まれている。
豪州連邦政府のコリンズ農林水産大臣は、同日付に発表したプレスリリースの中で、農業総生産額の記録的成長の要因は家畜および畜産物の価格高騰にあるとしつつ、「我々は国際市場アクセスの改善を含む貿易多様化などにより、生産者に持続的な成長を遂げるための最良の基盤を提供してきた。今後も労働党政権は生産者の事業拡大と成功を支援していく」と述べている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年8月末TTS相場。
米国の通商政策による豪州の農畜産物貿易への影響
本報告書では、米国トランプ政権の通商政策による豪州の農畜産物貿易への影響も分析している。米国が関税措置と引き換えに各国と結んだ協定には、豪州の主要輸出先での米国産農畜産物の貿易障壁を撤廃または削減する条件が含まれており、これは豪州の輸出業者にとってリスクであるとした。一方、主要輸出市場への近接性やコスト競争力、輸出パートナーとしての信頼度などから、豪州の市場シェア(占有率)を脅かすまでには至らず、米国産品輸出量の小幅な増加に留まる可能性が高いと分析している。主要輸出先ごとの分析によると、合意内容が不透明な韓国を除き、各国とも影響は限定的とされている(表)。
【調査情報部 令和7年9月9日発】
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