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EU産豚肉に対し中国がアンチダンピング関税を暫定的に措置(EU、中国)

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 EU産の豚肉とその副産物に対して、中国商務省は2025年9月5日、同国の豚肉産業に損害を与えているとし、アンチダンピング条例に基づき最大62.4%のアンチダンピング関税に相当する暫定的な措置を発表した(注1)。本措置は中国時間で同年9月10日に発効し、同日より輸入事業者は対象製品を輸入する際、暫定措置で決定された保証金率に基づき、関税に相当する保証金という形で支払う必要が生じる。なお、同調査は同年6月10日に、12月16日までの調査期間の延長が発表されている。
 
(注1)中国商務省は、アンチダンピング調査を2024年に開始した。詳しくは、海外情報「EU産豚肉に対する中国のアンチダンピング調査が開始(EU)」をご参照ください。
 
 保証金措置の対象製品に課される保証金率は、各輸出事業者によって異なる。中国向け豚肉および副産物の輸出量上位3者で、個別審査が行われたスペインのリテラミート社は15.6%、デンマークのデニッシュクラウン社は31.3%、オランダのヴィオン社は32.7%となっている。このほか、アンチダンピング調査に協力的とされた企業には一律20.0%、非協力的とされた企業には62.4%の税率が適用される(注2)
 
(注2)企業ごとの税率については、同国商務省による公表の別添をご確認ください。

関係者の反応

 現地報道によれば欧州委員会は、アンチダンピング調査が疑わしい主張や不十分な証拠に基づいているため、対応はまだ決定していないとしながら、EUの豚肉生産者と豚肉産業を守るために必要な措置を講じるとしている。
 EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca)は9月5日に声明を公表し、「中国当局がEU産豚肉輸出に暫定的な反ダンピング関税を課す決定に強く抗議する」と表明した。また、「現段階で同措置の詳細な分析は困難だが、欧州の養豚業者、特に中国に輸出の多い加盟国に深刻な損害をもたらし、EU域内の豚肉市場へも間接的に影響を与えるだろう」と強調した。また、同委員会の豚肉作業部会長は「EUの豚肉生産者が政治的な貿易紛争の代償を強いられることは容認できない。これらの措置は生産者を弱体化させ、他国の競合相手に利することとなる」と述べ、さらに、「欧州委員会は貿易政策を早急に再考し、農業部門が国際交渉における交渉材料として扱われないよう保証すべきだ」としている。

中国の豚肉製品の輸入状況

 EUは2024年、豚肉および副産物輸出量の約3割を中国に輸出しているが、前年比3.0%減と近年減少傾向にあり、フィリピン向けなどの増加が中国向けの減少を補っている(表1)。
 中国は、同年の豚肉輸入量の約5割をEU加盟国から輸入している一方、豚肉全体の輸入量は前年比31.8%減と大幅に減少している(表2)。副産物は輸入量の約5割をEU加盟国から輸入しており、副産物全体の輸入量は前年比4.9%増とやや増加している(表3)。
 現地報道によると、今回の暫定的な関税措置は20億ドル超の豚肉貿易に影響を及ぼすという。特に、スペインなど24年の輸出量が増加した副生物は、中国以外に代替可能な輸出先国や地域が少なく、今回の措置の影響の大きさが憂慮されている。
表1
表2
表3
【渡辺 淳一 令和7年9月10日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527