輸入先国の原料不足などによりココピートなどの園芸培土調達に危機感 (韓国)
最終更新日:2025年9月11日
1 世界的に環境に配慮してココピートへシフト
施設園芸のうち溶液栽培の固形培地(培土)は、導入および使用後の処理コストが高いロックウール(注1)から、安価で処理コストがほとんどかからないピートモス(注2)やココピート(注3)が利用されるようになってきた。
保水性が高く、溶液中の養分が付着しやすく保肥力の高いピートモスだが、採取地である泥炭地は多くの炭素を貯蔵しているといわれており、泥炭を採取のために掘り起こした際の二酸化炭素放出リスクが高く、また、泥炭地の減少により生態系の破壊が懸念される(注4)。また、ピートモスは使用時に二酸化炭素を放出するリスクが高いことから、イギリスでは2028年までに商業農産物生産向け販売禁止を目指すとしている。また、ドイツでは、30年までに商業農産物生産向けピートモス使用量の削減を目指している。
イギリスなど欧州を中心に、二酸化炭素排出削減や環境保護を意識した「ピートモスフリー」の流れを受け、園芸培土はピートモスからピートモス同等の保水性等が確保できるココピートへのシフトが行われてきている。ココピートは日本や韓国でも利用されており、溶液栽培の固形培地のほか、土耕栽培や育苗培土としても利用されている(写真)。
(注1)玄武岩などの鉱物を高温で溶かして繊維を固めたもの。
(注2)コケなどが堆積した泥炭を使用した強酸性用土。
(注3)ヤシ殻を細かく粉砕した有機培土。
(注4)世界的に泥炭地の生態系破壊が懸念される中、カナダでは、ピートモス採取地(泥炭地)やその周辺の環境復元が採取企業に義務化されている。

写真 韓国のパプリカ溶液栽培固形培地で利用されるココピート
2 需要増加とヤシの不作から高騰
韓国では、固形培地でココピートの利用が進んでおり、パプリカやトマト生産にはなくてはならない生産資材となっているが、最近のコスト高はココピート価格にも及んできている。
現地報道によると、2024年9月に1トン当たり290米ドル(4万2897円:1米ドル=147.92円(注5))だったココピート輸入価格は、25年7月には同580米ドル(8万5794円)と2倍に高騰した。輸入価格高騰の要因として同報道は、1)多雨の影響でインドやインドネシアなどのヤシ生産国で、実の着果数半減と小玉傾向になったことによる原料不足、2)中国、米国などでの需要拡大、特に中国ではブルーベリー作付面積が急増し、園芸培土の需要が爆発的に増加したこと−などを挙げている。土壌改良資材業界団体である韓国土壌協会によると、「ヤシが不作になった中での世界的な需要増加により、ココピート価格は同700米ドル(10万3544円)まで高騰する可能性がある」としている。
(注5)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年8月末TTS相場。
3 短期的に韓国のココピート輸入先の多様化は困難
韓国は現在、ココピートを主にインドから輸入している。ヤシ主産国としてはインド以外にインドネシアやタイなどもあるが、短期的に園芸培土や固形培地向けの輸入は難しいとしている。代替輸入先の開拓のため、インドネシアおよびタイの現地調査を行った同協会会員企業によると、「原料確保は可能だがココピート製造施設(破砕、選別、乾燥、洗浄、圧縮および品質試験の各工程)が未整備のため、これらの国からの輸入は困難」としている。
4 輸入先の生産減のためピートモスへの回帰も困難
韓国では、これまで利用していたピートモスに回帰しようとする動きもみられるが、調達はココピート以上に困難な状況となっている。
韓国は、ピートモスを主にラトビア、リトアニアおよびエストニアのバルト三国から輸入しているが、これら三国はEUの政策によりピートモス採取量を減少させている。このため、2024年に1トン当たり168ユーロ(2万5600円:1ユーロ=172.97円(注6))だったピートモス輸入価格は、25年7月には同200ユーロ(3万4594円)を超えたと推測される。世界的に採取が制限されているピートモスについて韓国土壌協会は、「採取量が限られていることから、高い輸入価格を提示してもピートモスの輸入は困難」としている。
(注6)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年8月末TTS相場。
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