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中国食肉関連業界、加工施設や包装材、食品添加物業界の現状と今後を語る(中国)

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 中国の食肉関係業界団体である中国肉類協会は2025年9月13日と14日、福建(ふっけん)省厦門(あもい)市において「肉類産業刷新発展大会2025」と題する政府関係者および業界関係者による講演会を開催した(注1)
 同大会では、同協会分科会のうち食肉関連産業である食肉加工施設、包装材および食品添加物の各分科会の会長から、それぞれの業界の現状と発展の方向性が示された。その主な内容を紹介する(各分科会の会長は、いずれもその業界の有力企業の社長が務めている)(注2)

 (注1)昨年の肉類産業刷新発展大会については海外情報『中国肉類協会、食肉に関する政府関係者などによる講演会を開催(中国)』(令和6年9月27日発)をご参照ください。
 (注2)食肉業界全体についての総括、牛肉および家きん肉の分科会会長の主な発言については海外情報『中国食肉業界が牛肉、家きん肉産業の現状と今後を語る(中国)』(令和7年9月25日発)をご参照ください。

食肉加工機械・設備産業の現状と発展方向(機械設備分科会会長)

 中国の食肉加工は、各社それぞれで機械化を図る段階から、食肉加工業界全体で効果的・効率的に機械化を進めるべき段階にある。そもそも機械化の目的は各社の利益拡大であるが、残念ながら現状はそうではない。
 最近カナダの学者から、中国食肉加工業界の過剰投資を指摘された。半信半疑で自らも調べた結果、指摘されたこと、つまり中国の食肉加工業界は過剰な投資、無駄な投資が行われている状態にあるということを強く認識した。中国食肉加工業界で行われた機械化が、同質化競争と同義になってしまっていた。各社が同じような機械を導入することで製造される商品の同質化が進み、食肉製品市場の価格競争が激しくなり、産業全体に悪影響を及ぼしていた。
 現在、中国の食肉加工業界は過当競争であり、利益率はかなり低くなっている。我々加工機械業界には、食肉加工業界が利益率を上げられるような加工機械の提供が求められている。利益率は国内向けに比べて輸出向けの方が高い。国外に目を向けると、例えばドイツの加工機械企業は中国の企業よりも専門性が高い。中国企業の課題は、機械が同質的で似通っているということだけでなく、材料の性能や基礎的な加工技術が低いこと、開発能力が低いことである。食肉加工産業は市場規模が小さいため開発のための優秀な人材を獲得することができない。優秀な人材は、例えば医療機械などの分野に従事してしまう。このため、業界を挙げて開発のための優秀な人材の獲得に取り組む必要がある。
 現在、食肉加工機械には、さらなる自動化、ビッグデータの活用、ネットワーク化、より一層の精緻化、効率化などが求められている。これらの基調となる開発方向は、「減能、減排、降耗」(省エネ、二酸化炭素排出量の削減、ロスの縮減)である。これまでのような開発、早く大量に製造する、といったような開発方向とは全く異なる。多様な商品が製造できるといった、生産ラインの柔軟性も必要と見込まれる。今求められている「降耗」(ロスの縮減)というのは、従来のように可食部を多く残し製造過程で生じるロスを可能な限り減らす、ということではなく、いかに原材料の栄養分を最終製品に残すか、という意味である。消費者の健康志向は高まっており、食肉加工商品にもそれが求められている中で、そのような商品が製造できる機械を開発し提供していかなければならない。
 今、我々の業界に求められていることは、「製造」から「智造」への転換(中国語で「製」と「智」は同じ発音)、商品をただ作るだけの機械から市場ニーズに沿った商品が作れる機械への転換である。相互に協力し、役割分担することで、中国の食肉加工機械・設備の専門性の深掘りと、必要な機械・設備はすべて提供できる状態との両立を目指さなければならない。

食肉加工商品包装材産業の現状と発展方向(包装分科会会長)

 ある調査結果によれば、世界の食肉加工品の包装産業規模は2022年時点で約133億米ドル(約1兆9673億円、1ドル=147.92円(注3))に上り、29年までに毎年4.1%伸びるとされている。中国は世界平均を上回る9.6%の伸びが予想され、その結果、世界に占める中国の割合も22年の12.1%から29年には17.1%への増加が見込まれている。
 このような食肉包装産業の成長は、単に食肉の消費量が増えたということだけでなく、食肉産業のレベルが全体的に上がったこと、例えば1)畜産の企業化・大規模化が進んだ結果、生産現場から加工工場までの輸送距離が伸びたこと、2)家畜の生体移動がと畜後・加工後の輸送に切り代わってきたこと−などにも起因している。消費者の好みや食習慣も変化している。中国人は、と畜したばかりの肉、切り分けた直後の食肉を好んで食してきたため、中国で販売される食肉のうち包装されて販売されている物は1%にとどまると言われている。それが今では、個包装された肉がマイナス18度で保存・輸送され、それが店頭に並び、消費者から受け入れられるようになっている。低温で酵素発酵させた食肉も流通するようになっており、安全性を確保した上で食感や味わい、栄養価値をなるべく損なわない包装、輸送が求められている。販売方法も変化しており、オンラインで売買された食肉のうち冷蔵輸送される食肉の割合は20年の15%から25年には28%に増える見込みである。
 ある調査結果によれば、中国の消費者が食品包装に求める機能は、1)保存期間が長いこと、2)開封しやすい設計であること、3)生産・製造情報が追跡できること、4)環境にやさしいこと、5)便利であること−である。また、60%以上の消費者は、環境保護や利便性のためであれば、包装材の価格が10〜20%引き上がることは許容できると回答している。過剰包装や商品情報がわかりにくい包装は求められていない。
 また、スーパーマーケットなどの食肉売り場で求められる個包装への要求は、1)気体を含ませることで食肉の色味を保ち、ドリップを抑えて消費者受けを良くしつつ、棚に置ける期間が5日から2週間程度である「気体包装」から、2)最も優れた視覚効果が得られる立体的な形で、真空状態で生じる味の劣化は抑え、かつ最長で20日は棚に置ける「密着包装」へと変わりつつある。
 食肉加工品の包装については、団体基準が7つ、業界基準が2つある。高性能な材料を用いた包装材は生産コストが高いなど、乗り越えなければならない課題はあるが、包装材産業でも規範化は必要である。
今後も業界として市場のニーズに応える努力を続けたい。

 (注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2025年8月末日TTS相場を使用した。

食品添加物産業の現状と発展方向(食品添加物分科会会長)

 中国の食品添加物のうち主なものについて、2024年の総生産量は1635万トンとなり、前年比約3.5%の伸びとなった。販売価格では約1515億元(約3兆1708億円、1中国元=20.93円(注3))となる。このうち、例えば、消費が伸びている調理済み商品によく用いられる複合香辛料の生産量の推移を見ると、20年までは順調に成長していたものがコロナ禍によって一度減少したものの、23年にはおおむね20年の水準まで回復し、24年には過去最高となっている。
 現在、中国の消費者は「三減」(塩分、油分、糖分の減少)を求めている。これは中国政府が推奨している健康な食生活、食品バランス(注4)の影響を受けたものであり、消費者から寄せられる1)健康になりたい、2)体に良いものを取りたい、3)人工物ではなく天然素材が良い、4)素材はシンプルなものがいい−といったニーズに我々添加物業界も応えていく必要がある。消費者の間で高まっている高たんぱく質食品需要も取り入れていく必要がある。たんぱく質の摂取を確保することは、既に課題となっている高齢者の筋肉の衰え、骨粗しょう症や免疫力の低下といった健康問題への解決策となるだけでなく、中長期的に見れば、世界人口が増大の一途をたどる中、必要なたんぱく質を確保するという、消費者の好みに留まらない重要な意義を持つものである。
 また、教育レベルの向上に伴って「清潔表示」(原材料の種類が少なく、食品表示がシンプルな商品)を求める消費者も増えており、清潔表示はいまや最終商品製造企業にとってブランド価値を生み出す重要な要素の一つとなっている。これは消費者の健康志向とは異なるニーズである。個性化を求める消費傾向(商品の多様性や新しさを求める傾向)への対応も必要である。
 今後は、食品添加物を用いた後でも素材本来の味を損なわず、それでいて商品としては目新しさがあり、今の消費者が求めるライフスタイルにも合っている、といったような商品を生み出せる添加物が求められるだろう。

 (注4)中国政府が推奨している健康な食生活、食品バランスについては『畜産の情報』2024年7月号「中国の畜産物を中心とした食料消費の現状と今後の展望」をご参照ください。
【調査情報部 令和7年9月25日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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