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欧州委員会の中期需給見通し、生乳は横ばい、牛肉・豚肉は減産と予測(EU)

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 欧州委員会は2025年12月16日、35年までのEUの農畜産物中期的需給見通し(注)を公表した。このうち、生乳生産は横ばいで推移する一方、牛肉および豚肉の生産はアニマルウェルフェアや環境規制の影響により減産すると予測されている。品目別の主な内容は以下の通りである。
 
(注)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年2回、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。今回公表された中期見通しは、25年10月末時点で批准された貿易協定を前提に算出されたものである。ただし、8月に締結された米国との関税合意の影響は含まれていない。

生乳・乳製品 〜生乳の増産余地は限られ、高付加価値乳製品の生産に注力〜

 2035年までの生乳生産量は、飼養管理技術や遺伝的改良による1頭当たり乳量の増加が乳牛飼養頭数減少を補うものの、年平均0.1%の増加にとどまると予測される。
 乳製品の生産は、生乳の増産余地が限られることから高付加価値製品への注力が進む。乳脂肪分および高タンパク質製品への需要の高まりを踏まえ、35年までの生産量は、チーズで年平均0.4%増、ホエイで同0.8%増の増産が予測される。バターは域内需要が堅調なことから、同0.3%増加する一方、市場縮小が見込まれる全粉乳(同0.8%減)や飲用乳などの生鮮乳製品(同0.5%減)はそれぞれ減産傾向で推移すると予測されている(図1)。
図1
 35年までの乳製品輸出について、チーズとホエイは堅調な需要に支えられ、年平均0.7%、0.5%とそれぞれ増加する一方、バターは価格面での競合などにより、同0.6%の減少と予測される(図2)。
図2

牛肉・豚肉 〜域内消費は鶏肉へのシフトなどで減少、生産は環境規制などにより減産〜

 EU域内の食肉消費は、持続可能性への懸念などから減少傾向で推移し、畜種別では、価格差などを背景に牛肉および豚肉から家きん肉へのシフトが継続すると予測される(図3)。
図3
 2035年の牛肉生産量は、環境規制や農家の高齢化の問題などを背景とした飼養頭数の減少により、23〜25年の平均比で9.2%減の610万トンとかなりの程度の減少が予測される(図4)。一方、牛肉輸出量は、アニマルウェルフェアに配慮した生体輸出の減少分が食肉輸出に代替されるため、横ばいでの推移が予測される。
図4
 豚肉生産量は、短期的には2024、25年と増産が見込まれるものの、中期的には、アニマルウェルフェアや環境規制の強化や中国向けなどの輸出機会減少により減産傾向で推移し、35年まで年平均0.75%の減少が予測される(図5)。ただし、加盟国ごとにばらつきがあり、オランダ、ベルギー、ドイツ、フランスでは減少幅が大きくなると見込まれる。輸出量は、アジア市場における米国、カナダ、ブラジルとの競合などにより、同1.0%の減少と予測される。
図5
【調査情報部 令和7年12月25日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532