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北京で「チーズおよびバター産業の刷新・発展フォーラム」が開催、 業界関係者が講演(中国)

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 中国の乳製品関係の団体「DAIRY ONLINE」(乳業在線)は2025年12月12日、北京市で「チーズおよびバター産業の刷新・発展フォーラム」を開催した。
 同フォーラムでは中国農業農村部などによる講演が行われ、中国国内外から乳業のサプライチェーンを構成する業界関係者が参加した(写真1)。また、会場内において、協賛企業の製品(乳製品や乳業工場の加工機械など)をアピールするブースの出展も行われた(写真2)。
 同フォーラムで行われた主な講演の内容を以下に紹介する。
写真1 講演会場の様子
写真1 講演会場の様子
写真2 中国の乳業メーカーによる試食用乳製品の提供
写真2 中国の乳業メーカーによる試食用乳製品の提供

1 中国乳製品業界の課題と挑戦について(中国乳製品工業協会事務総長 劉氏)

 フォーラムのテーマである「チーズ・バター」(中国では「深度加工製品」という)の課題と挑戦について次の4点を紹介する。

(1)不適切な商品構成の改善
 わが国の原料乳の仕向け先は飲用向けが全体の約8割を占める一方、チーズやクリームなどの深度加工向けは約1割にとどまっている。その背景には技術力に加え法令や基準などの制度整備も遅れているということがあり、またそれによって、サプライチェーン全体の連携が弱く、上流の酪農、中流の加工、下流の販売の間で利益配分が不十分となり協調効果も発揮されず、海外との競争力の弱さがもたらされている。飲用仕向けに偏った商品構成が改善されれば、原料乳の供給が安定し、価格変動が緩和され、サプライチェーンの健全かつ持続的な発展が促され、企業の技術革新にもつながる。とにかく「量より質」なのである。

(2)輸入量に表れる需要の取り込み
 世界的に見て、たんぱく質を含む乳製品市場は健康意識の高まりとともに拡大傾向にある。わが国のチーズとバターの輸入量はいずれも増加傾向にあるが、加工技術を向上させ、この市場を自国産業で取り込むことが重要である。海外の伝統的なチーズ製造方式に従う必要はなく、わが国独自の加工技術と基準体系を構築し、付加価値を生み出す産業として発展させる必要がある。

(3)サプライチェーン間の一層の連携
 乳業全体のサプライチェーンを連携させ、協調的に発展させることが重要である。上流の酪農では生産性を高め、中流の加工では経済効果を高め、下流の販売ではベーカリー、茶、コーヒーなどドリンクショップの分野と協力し、サプライチェーン全体での協調的なシステム構築が必要である。

 (4)わが国に適した基準の策定とそれへの対応
 国家衛生健康委員会と市場監督管理総局が、わが国の実情に合った乳製品の加工に関する法規や基準の改訂を行う業務計画を立てている。中国乳製品工業協会もこの策定に積極的に関与していく予定である。

2 今後消費の伸びが期待できる分野や商品について

(1)フロスト&サリバン社(注1)グレーターチャイナパートナー兼マネージングディレクター 張氏

 中国国内だけでなく、世界的に見ても今の消費者が抱える大きなニーズとして第一に挙げられるのが「健康」である。中でも、高たんぱく、低脂肪、低糖など健康面に訴求した製品がトレンドとなっている。
 世界のチーズ市場の規模は約1600億米ドル(約25兆2096億円、1米ドル=157.56円(注2))、これを人民元に換算すると1兆元規模の巨大な市場であり、19年の約1300億米ドル(約20兆4828億円)から年平均5.1%ずつ増加している。中国では、消費習慣のグローバル化、健康・栄養意識の高まり、小売やECチャネルの拡大、そして革新的な製品による多様化の促進などの要素が、この業界の発展を大きく後押しすることになるだろう。
 世界の1人当たりのチーズ消費量を見ると、欧州は20.5キログラム、北米は18.0キログラムである一方、中国の消費量はわずか0.1キログラムに留まる。中国の1人当たり牛乳・乳製品消費量のうち、チーズやバターの占める割合は2〜3%程度にすぎないが、チーズ製品における国産品のシェアは着実に拡大している。近年はチーズなどの乳製品を多く使う欧米式ファストフード、ベーカリー、ドリンクショップが非常に好調で、今後も市場は大きな成長が期待できる。これらの業界で消費を伸ばしていくためには、「加工技術の向上」「サプライチェーンの連携強化」「ブランド構築」という三つのキーワードがポイントになるだろう。

(注1)米国の本部を含む世界45カ所に拠点を持ち、市場調査、企業の経営コンサルティングなどを行っている会社。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年12月末TTS相場。

(2)中国農業農村部農産物市場分析早期警戒チーム牛乳担当チーフアナリスト兼副研究員 楊氏

 近年、中国の生乳生産は拡大傾向にあるが、供給過剰な状態で、生乳買取価格が下落し、酪農現場は苦境に立たされている。
 一方、生クリームやチーズなど乳製品を多く使うベーカリー、茶やコーヒーなど(中国語では「茶珈」という)のドリンクショップが新しい販売チャネルとして拡大し、乳製品消費は順調に増加している。このような消費市場の伸びに対し、乳製品企業も加工能力を加速的に拡大し、需要増加に積極的に対応している。
 現下の市況に対応する上で重要なことは、販売チャネルに応じた消費の促進である。販売チャネルごとに相応しい販売方法を追求するため、政府では乳製品に関する基準の策定、乳製品の消費促進や広報・啓発活動を引き続き行っていく方針である。企業においては、自社ブランドの育成と適切な広報、多様な商品開発や販売モデルの簡素化・高効率化によって、より多くの消費者に商品を訴求していくことが必要である。
 特に、新しいタイプの販売チャネルに対応していくことが重要である。政府は今後、これら販売チャネルの変化やチャネルごとの動態について、消費者の需要がどうなっているのかを継続的に追跡していく予定である。また、産業構造や製造拠点の配置なども動的にモニタリングし、乳製品企業が合理的に工場建設などの製造能力を強化し、適切に配置できるように誘導していく。各企業においては、消費者の好み、ニーズにあった良質な製品の開発・製造をさらに強化し、最適化することが重要である。その際、国産生乳を優先的に使用することによって、原材料の供給ルートが安定的に確保できるだろう。政府が主要原材料の国産化の動きを支援することも重要である。
 政府としては、安価過ぎる商品が市場を混乱させないよう、品質に応じて製品を分類する基準や加工に関する基準の整備を進めていく。関連の制度を整えることで、乳製品企業が適切な価格を設定できる枠組みが形成され、乳製品企業が事業展開をさらに拡大できるよう支援していく。
【今野 恵太 令和8年1月14日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532