NZとインド、FTAで合意(NZ)
ニュージーランド(NZ)政府のマクレイ貿易相は2025年12月22日、インドとの自由貿易協定(FTA)の交渉が妥結したと発表した。同協定は25年3月に交渉が開始され、5回に及ぶ協議を経て合意に至った。
NZ外務貿易省によると、インドはNZにとって12番目の輸出相手国であり、インドへの輸出総額は、25年6月末までの1年間で、17億9千万NZドル(1662億円:1NZドル=92.85円(注1))である。同協定により、NZからインドに輸出される9割以上の製品に対する関税が撤廃または引き下げられる。特に、NZの主要輸出品目の一つである羊肉の輸出には、現行、33%の関税が課されているが、同協定発効後は無税で輸出可能となることから、22年に豪州がインドとFTAを締結したことで失った羊肉市場でのNZのシェアを取り戻すことが期待されている。また、乳製品のうち大容量育児用調製粉乳および高付加価値の乳調製品(High-value dairy preparations)については、7年間で段階的に関税が撤廃される。
NZ外務貿易省は、同協定はNZとインドの輸出業者が双方向貿易を拡大する貴重な機会となり、NZ政府の10年で輸出額を倍増させるという野心的な目標達成の後押しになるとしている。
一方で、NZの輸出品目の中で、最も重要な乳製品である牛乳、脱脂粉乳、ホエイ、チーズや羊肉を除く牛肉などの動物性製品、植物性製品(たまねぎやトウモロコシなど)、砂糖などの品目は、同協定の対象外となった。インド政府のゴヤル商工相は「農家と酪農生産者の利益保護に配慮してきた」と述べており、世界最大の生乳生産国であるインドにとって重要な乳製品については、関税が維持される形となった(注2)。ただし、NZ側は、1)将来的にインドが他国に対して乳製品市場へのアクセスを認めた場合、NZに対しても同様の待遇とすることについて協議すること、2)FTAの発効から1年後に見直しを行うこと−を取り付けている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年12月末TTS相場。
(注2)最恵国待遇として牛乳に30%、脱脂粉乳60%、ホエイに40%、チーズに33%の輸入関税が課されている。
NZのインド向け乳製品輸出量
ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2025年1月から11月のインド向け乳製品の輸出量は全体でも787トンとわずかである(図)。米国農務省海外農務局(USDA/FAS)の報告によると、インドの乳製品の国内需要は、国内生産でほぼ賄われており、輸入は、育児用粉乳などの高品質乳原料に限られるとしている。
NZ政府の反応
NZ政府のマクレイ農相は、「同協定は、数千の雇用と数十億ドル規模の追加輸出をもたらす」とし、「NZの輸出業者は、乳製品やその他の食品原料の輸出で無税アクセスを享受でき、より大きな可能性が開かれる」と述べている。また、協定発効から1年後に内容を見直す機会を取り付けたことから、「乳製品分野の障壁をどのように引き下げられるかについて、今後も協議していく」とした。
NZ酪農業界の反応
NZ乳業協会(DCANZ)は、同協定に失望の意を示し、インドとの交渉が乳製品貿易の自由化に向けた大きな一歩を踏み出せていないと評価した。また、「インド市場でNZ産の高品質乳製品に対する需要は高まっており、乳製品の貿易課題が克服できれば、相互利益が得られる」とし、NZにとって最大である乳製品輸出産業が直面する貿易課題に対処するための新たな戦略を求めている。
一方、NZ乳業最大手のフォンテラ社は、「NZがインドの乳製品市場に新たな主要乳製品のアクセス機会を確保できなかったことは残念」としつつも、「NZ政府は同協定の締結に尽力した」と一定の評価をし、「フォンテラ社は今後もNZ政府と連携し、同協定の乳製品関連条項を最大限に活用する方策の検討に取り組む」とする声明を発表した。
【田中 美宇 令和8年1月16日発】
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