米国は英国向けの低関税の牛肉輸入数量の運用を開始(米国)
米国政府は2025年12月31日、英国との合意
(注1)に基づき、低関税の牛肉輸入数量枠(TRQ)について、「その他」の国・地域カテゴリーの6万5005トンのうち英国向けに別途1万3000トンを配分することを連邦官報において正式に公表した。
(注1)詳細は海外情報「英国が米国と貿易協定合意、EUは追加対米報復措置を発表(英国、EU)|農畜産業振興機構」をご参照ください。
1.米国の牛肉輸入に対するこれまでのTRQの概要について
米国の牛肉輸入には低関税枠の数量が設けられており、ニュージーランド、アルゼンチンおよびウルグアイについては、単独でTRQが定められている。また、カナダ、メキシコおよび豪州については無制限で無税となっている。これらの国以外は、「その他」の国・地域カテゴリーとして、日本やブラジルなどがTRQを共有している。2025年12月29日時点の各国・地域に対するTRQの数量と消化状況については表1のとおり。
2.今般の英国へのTRQの配分について
2025年5月8日、米国と英国との合意に基づき、今般「その他」のカテゴリーの6万5005トンのうち1万3000トンを英国向けのTRQとして新たに配分することが発表された。この運用は26年1月1日より開始されており、英国向けへの配分に伴い「その他」のTRQの数量は5万2005トンに減少した(表2)。なお、25年10月に輸入を拡大する意向が発表されたアルゼンチン産牛肉のTRQは、2万トンのまま維持された
(注2)。
(注2)詳細は海外情報「アルゼンチン産牛肉の輸入拡大の意向と牛肉産業強化計画を発表(米国)|農畜産業振興機構」をご参照ください。
「その他」のTRQについては、22年以降毎年1月から5月の間に全量が消化されているが、近年では消化のタイミングがさらに早まっており、22年は3月28日、23年は5月2日、24年は2月27日、25年は1月17日に全量が消化された。そして、本年26年においては1月6日に5万2005トンの全量が消化されたところである。なお、枠の消化分の大半を冷凍のブラジル産牛肉が占めている。
AHDB(英国農業園芸開発委員会)は25年5月15日、貿易が英国に与える影響の分析を公表している。同分析によると、25年までは英国はブラジルや日本とともに「その他」のTRQの枠を利用していたものの、地理的要因などからブラジルが枠の大半を使用しており、英国産牛肉輸出業者は、大西洋を越えて牛肉を輸出したにも関わらず、到着時にはTRQ枠が消化され、TRQ枠外関税が適用されるリスクを懸念しなければならなかった。しかし今回、英国が独自のTRQを獲得することでこのリスクは削減されるとしている。
3.米国産牛肉の英国向け輸出
英国政府は米国との貿易協定に基づき、2025年6月30日より米国から輸出される牛肉に対して、1万3000トンのTRQの割当を行っている。同年は割当が年の途中から開始されたため、初年の無関税枠は8477トンとなった。また、冷蔵牛肉(HSコード0201)および冷凍牛肉(同0202)については、と畜前に米国内で少なくとも3カ月間肥育された場合に原産地とみなされる規則となっている。
NFU(全英農業者組合)のトム・ブラッドショー氏は25年12月31日、米国によるTRQ配分の開始は朗報であるとしつつも、米国が自国農産物の英国市場へのさらなるアクセス拡大を要求する中、貿易交渉は続いていると述べた。また、これまで英国政府は高い動物福祉、環境、食品安全基準を維持しており、25年12月22日に策定された「動物の健康と福祉戦略」においてもさらなる国内基準の強化を目指す中で、将来的な譲歩の余地は考えられないと付け加えた。
なお、同枠の対象には特定の肥育ホルモン類が投与された牛由来の米国産牛肉は除外されており、米国通商代表部(USTR)やUSDAは、こうした規制は科学的根拠を伴わないものとして撤廃を求めているものの、英国側に動きはみられない。 USDA NAHMS(動植物衛生検査局(APHIS)による全米家畜衛生モニタリングシステム)によると、20年時点で米国におけるホルモン不使用表示が可能な牛は全体の1割程度と推計されていることから、業界は今回の関税割当措置によるメリットを受ける関係者は一部に限られるとみている。
【調査情報部 令和8年1月20日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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