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中国の畜産メディア、一号文件に着目してこの5カ年を振り返る(中国)

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 中国は五カ年計画制度を採用しており、2026年は今期第15期5カ年の最初の年に当たる。2月3日、農業に関する一号文件(注1)公表されたことを受け、中国の畜産メディアが22年から26年までの5カ年にわたる一号文件の記載内容を基に畜産政策の変化を振り返った。その主な内容を紹介する。
 
 (注1)中国政府が毎年公表する文書のことであり、その年に最も重視する政治課題が取り上げられるとされ、2004年から毎年「三農」(農業、農村、農民)が主題とされてきた。2026年の一号文件については、海外情報「中国、26年の中央一号文件を公表(中国)」(令和8年2月27日)をご参照ください。

養豚について、「供給の安定」から「精緻な総量調整」へ

 養豚産業は農民の収益だけでなく、庶民の食卓にも深く関わっている。この5年間、養豚政策は常に「供給の安定」を中心にしてきたものの、具体的な調整手段は実情に合わせたより精緻なものになっている。2022年の一号文件は「養豚の基礎的な生産能力を安定化する」とし、最低生産能力の維持と生産量の乱高下を防ぐことを目的としたものであったが、24年の一号文件は「豚生産能力の調整の仕組みを優良化する」とし、市場ニーズの変化に応じた調整が始められ、25年の一号文件では「生産能力の監視と調整を適切に行う」とし、母豚の飼育頭数目標が従前の4100万頭から3900万頭に引き下げられた。
 26年の一号文件は「生産能力の調整を強化する」としており、既に母豚飼育頭数の目標を100万頭削減、出荷時の体重管理などの政策方向が示されている。これに対して牧原、温氏などの養豚大企業は積極的に反応しており、例えば、牧原は25年末には既に母豚飼養頭数の削減を実施している。
 このような「総生産量の維持」から「生産構造の管理、調整」への転換は、生産能力の過剰によって業界が被る損害を避けるとともに、供給不足によって引き起こされる価格変動をも避けようとするものと評価できる。

肉牛および乳牛について、「生産の拡大」から「困難の解消と消費促進」へ

 もし養豚政策を「動的なバランスを取ろうとするもの」とするなら、肉牛・乳牛政策は「課題主導型」であることが明確である。2022年の一号文件は「牛羊肉および乳業の生産拡大を加速する」とし、供給不足を補うことに政策の重点が置かれたが、24年にはこれを転じて「牛羊肉の基礎的な生産能力を安定化する」として生産能力の安定化が進められるようになり、25年には初めて「困難を緩和する政策を着実に実施」することが明記された。その背景には、酪農場の60%が赤字経営に陥り、牛肉価格も5年間下落傾向かつ低位で推移し続けたことがあった。
 26年の一号文件はさらに政策を強化し、「困難からの回復の成果を確実にし、需給バランスと健全な発展を促進する」「乳製品消費を押し上げる」として、川上の赤字経営、川下の弱い消費、その双方から問題を解決することを明確にした。特に川上については、一律に「生産拡大」を求めるのではなく実情に応じた「問題の解決」を進める、「規模の追求」から「効率の追求」へと転換するとし、既に25年には具体的な支援策、すなわち、政府の関連部門が協力し、家畜・家きんを担保とした動産融資を進めることで飼養農家が抱える資金難・融資難の解決を図るなどの支援が行われている。このような産業構造に着目した政策は中小企業や飼養農家の経営を継続しようとの意欲を支えるものでもあり、評価できる。

畜産政策に共通する政策の精緻化と科学技術の重視

 この5カ年における最も鮮明な畜産政策の変化は、「普遍的な支援」から「精緻な施策」に転換したことである。かつては「支援がより広く行きわたること」に重点が置かれたが、今は「点で突破すること」が重視されている。これは、養豚業については母豚の飼養頭数を管理し、乳業については「困難の緩和」を当面の火急な課題としつつ長期的視野から消費促進も進め、また、肉牛についてはその焦点を生産コストの削減、優良品種への転換、飼料配合の優良化といった技術面に当てていることから伺える。このような精緻な政策は、現場の実情に対する深い理解なくして不可能である。つまり、養豚業の課題は過剰生産にあり、乳業の課題は消費の弱さにあると把握した上で、それぞれの課題に即した施策が講じられているのである。政府が整備を進める生産状況の計測監視システムがさらに完全なものとなるにつれて施策手段はより多様となり、かつ、地域や主体の違いに応じて適切な支援を行うことが可能となるだろう。
 同様に、科学技術施策もこの5年間、常にその重要性を増してきた。2022年には「畜牧業の産業転換モデルプロジェクト」による技術の普及が、24年には「滅菌乳」を例とする品質管理基準への着目が、25年には「生物育種、デジタル飼養など農業の質的生産力を発展する」ことがそれぞれ一号文件に明記され、26年にはさらに進んで「高度なデジタル技術や丘陵・山間地域でも適用可能な農機設備の研究開発を加速する」「AI技術と農業の融合を促進する」など、畜産業の隅々に科学技術を浸透させていくとされた。科学技術の利用が進むにつれ、畜産業は「労働集約型」産業から「技術集約型」産業に転換することが期待できる。
【調査情報部 令和8年2月27日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
Tel:03-3583-9532