クイーンズランド(QLD)州議会の第一次産業・資源委員会は2026年3月31日、同州におけるサトウキビ由来のバイオエネルギー産業の可能性に関する調査結果を公表した。豪州は、同由来の粗糖の主要輸出国であり、QLD州は国内砂糖生産量の95%を占める一大生産地となっている。同委員会は、業界が直面する競合国の台頭や国際相場の不安定化などの課題を受け、バイオエネルギー利用による収入源多角化の可能性について調査を行っていた
(注)。本調査結果によると、同委員会はQLD州政府に対する12の提言を示した上で、適切な政策決定と協調的な投資があれば、サトウキビ由来のバイオエネルギー産業は、地域経済の発展に寄与するとともに、豪州の長期的なエネルギー安全保障に貢献できると結論付けた(表)。
(注)詳細は海外情報「豪政府、バイオ燃料産業への大型投資を発表、製糖業界は熱視線(豪州)」をご参照ください。
一方、本調査の実施に当たり、さまざまな業界関係者から意見聴取が行われているが、その内容は賛否が分かれている。製糖業者等は概ねバイオエネルギー利用の推進を支持しているが、生産者の間では意見が分かれており、約半数は今までどおり砂糖生産の継続を望んでいることが明らかとなっている。多くの生産者は、この手の話は何十年も前から議論されているが、何も成果が生まれなかったのは政府の関与が不十分であったためと考えており、手厚い政策支援が求められていることが読み取れる。
なお、QLD州のサトウキビ生産者団体であるCANEGROWERSは、本調査結果の公表を歓迎する旨のコメントを発出しており、その中で中東情勢の不安定化に伴う燃料価格高騰に触れ、今こそエネルギー安全保障の実現に向けて、バイオエネルギーの本格的な利用に政府が動き出す時だと主張している。
調査の中では、バイオエネルギー需要の増加に伴う砂糖生産の減少、トレードオフの関係についても議論が行われている。この議論に対し、多くの業界関係者は「収入源の多角化」が意味するところは、サトウキビの副産物(バガス、糖蜜、茎葉など)を活用したバイオエネルギー生産であり、既存の粗糖輸出に影響を与えることなく新たな収益源を追求するべき、という意見で一致している。実例として、QLD州に拠点を置く豪州企業SKY Renewables社は、 サトウキビの茎葉などを利用して再生可能天然ガス(バイオメタン)を生産し、アジア市場へ輸出するプロジェクトを推進しており、同プロジェクトへの参加は、砂糖の生産量に影響を与えるものではないと説明している。また、食料生産への意図しない影響を避けるため、バイオエネルギーの利用拡大は慎重に行うべきという意見も出ており、あくまで補完的な位置付けであることが強調されていた。
中東情勢の不安定化に伴うエネルギー安全保障議論の活発化は、同国のサトウキビ産業の動向にも影響を与える可能性がある。生産者が指摘するように、業界の大きな転換には政府の強い関与と民間投資の喚起が必要であり、その実現性は今後の政治情勢にも左右されることから、引き続き動向を注視する必要がある。
【調査情報部 令和8年4月8日発】