春に入り米国における野生豚や捕食動物の活動が活発化(米国)
米国では、春から夏にかけて野生鳥獣による農業および畜産業への被害が増加する。トウモロコシなどの農作物の生産に対しては特に野生豚(Feral Hog)が米国南部において大きな被害をもたらしており、各地で対策が講じられている。畜産業においては、コヨーテ、オオカミ、ハゲワシなどによる食害被害が生じており、これらは農作物被害とは異なる枠組みの下で対策が講じられている。
1.米国における野生豚について
動植物衛生検査局(USDA/APHIS)によれば、野生豚はもともと米国原産ではなく、1500年代に探検家や入植者により食料源として持ち込まれた豚が、放し飼いにされたことや脱走によってもたらされたとしている。また、1900年代にはユーラシア大陸のイノシシがスポーツハンティングの目的で米国の一部に導入されたとされており、現在生息する野生豚は、この2種類のどちらかまたは交雑種となっている。
野生豚は特に個体数の多いテキサス州を含む少なくとも38の州で報告されており、現在、米国南部と西部地域まで生息域が拡大している。野生豚は高い繁殖率のため、対策が講じられない場合は4ヶ月で個体数が倍増する可能性があり、現在、米国全土における個体数は少なくとも600万頭以上と推測されている。米国農務省(USDA)のデータによると、農作物の食害、牧草地の荒廃、インフラ設備の損傷、駆除に伴う労働力と費用などを考慮した場合毎年15億米ドル(2413億円:1米ドル=160.88円(注1))の農業損失が発生していると推定されている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2026年3月末TTS相場。
野生豚が繁殖期を迎える春から夏、そして、自然餌が少ない秋において被害が多く、農作物においては、特にトウモロコシ(9220万米ドル(148億円))、落花生(3850万ドル(62億円))、大豆(2320万ドル(37億円))の生産に多大な損失が発生している。畜産業においても例外ではなく、野生豚による捕食、病気の伝播などにより8500万ドル(137億円)の損害を与えており、特に牛、羊および山羊における被害が顕著とされている。
米国議会は2014年、USDA/APHISの下、野生豚による被害対策プログラム(NFSDMP)を設立し、全国的な罠や銃を使用した駆除により野生豚の生息域の拡大を抑制している。米国においては、銃や罠以外の駆除方法として、着色した毒餌(クマリン誘導体)を使用した方法も開発されており、一部の州(テキサス州およびオクラホマ州)においては、実際の現場で活用されている。
2.米国における野生の捕食動物について
野生豚以外で特に畜産業に対して大きな影響を与えているのは捕食動物であり、特に影響が大きいのはコヨーテ、野犬、オオカミなどのイヌ科に属する動物とハゲワシなどである(表)。コヨーテおよび野犬は、全体的な件数は多い一方で、大きな群れを形成するオオカミによる被害は1件あたりの被害が大きいという特徴がある。これらの捕食動物による被害は、繁殖活動に伴い活動が活発化することや家畜の幼獣が多く出生する春に発生しやすい。
肉食性の鳥獣に対する対策として、農場においては、フェンスの設置や孤立した家畜を発生させない群管理(Herding)などの非致死的な対策が実施されている状況である。米国において、ハゲワシやオオカミなどの野生鳥獣は、連邦法に基づく保護および個体数管理の対象となっている。家畜被害に対する致死的な措置については、適用される法制度や地域によって取り扱いが異なり、原則として連邦政府または州政府が定める許可制度や管理枠組みに基づいて実施されている。特に、絶滅危惧種法の適用を受ける地域におけるオオカミについては、アイダホ州、モンタナ州、ワイオミング州などを除き、致死的な措置は厳格に制限されている。
一方で、これらの鳥獣による家畜被害が発生した場合の対応については、被害の深刻化や管理の実効性を背景として、一部の州において州政府の関与や裁量を一定程度認める管理制度の運用が拡大するとともに、連邦政府においても保護対象種と畜産被害対策の両立に関する検討が進められている
(注2)。
(注2)米国が2025年10月に公表した牛肉産業強化計画の中で、捕食動物の管理手法や、関連する種の保護制度との関係について検討を進める方針が示されている。牛肉産業強化計画の詳細は海外情報「アルゼンチン産牛肉の輸入拡大の意向と牛肉産業強化計画を発表(米国)」をご参照ください。
【調査情報部 令和8年4月9日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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