米国内務省土地管理局および農務省森林局は放牧地活用のための覚書を締結(米国)
米国内務省土地管理局(DOI/BLM)および米国農務省森林局(USDA/FS)は2026年3月31日、放牧地活用のための覚書(MOU)を締結し、米国国内の牛肉生産量拡大のための新たな活動の方向性について取りまとめた。このMOU締結を含む対応は、25年10月に発表された「牛肉産業強化計画」
(注)の一環であり、22年の大規模な干ばつ以降減少傾向にある米国の牛肉生産を回復させるためのものとなっている。
(注)牛肉産業強化計画の概要については、海外情報「アルゼンチン産牛肉の輸入拡大の意向と牛肉産業強化計画を発表(米国)」をご参照ください。
1.放牧の推進に関する取り組みの概要
今般締結されたMOUの目的は、肉用牛の放牧による生産活動を活性化するため、USDA/FSとDOI/BLMの間で効果的な連携体制を確立・継続することであり、連邦政府が所有する土地を活用して放牧を行う農家の要望を満たすものとしている。米国では、特に子牛生産時に放牧を行う農家が多い。全当局の発表によれば、米国28州で2万戸以上の農家や牧場主が、連邦政府の所有する土地で放牧している。一方、連邦政府が所有する牧草地の約1割を占める2400万エーカー(約9万7000キロ平方メートル)は未使用であるとし、このような土地を牛肉生産に活用し、放牧地が収容できる牛の頭数を増加させることを目的としている。現在、米国においては牛の飼養頭数の減少が継続しており、この背景には乳用牛を含む子牛生産頭数(calf crop)の減少や、そして、メキシコにおけるラセンウジバエの発生地域拡大に伴う生体牛の輸入停止により、主に肥育もと牛(feeder cattle)の輸入が減少していることがある(図)。
MOUに掲載される両部局の主な活動内容は下記の通り。
(1)規制緩和と効率改善
両部局が保有する放牧地の使用に関して、承認・許可手続きを合理化し、両部局の既存の権限をより効果的に活用。これにより、放牧の承認・許可、インフラの整備、緊急時対応の遅延防止を図る。
(2)農家との連携強化
両部局は、農家等の関係者との意見交換や相談窓口の拡充など、放牧地を利用する農家との連携体制を強化する。
(3)連邦職員向け牧場体験プログラム
新たな取り組みとして、両部局の職員を稼働中の放牧場や農場に派遣し、現場における運営上の課題や実情を直接理解する機会を設ける。
(4)透明性とデータアクセスの向上
データベースおよび運営システムの改善によって放牧地の割当情報へのアクセス性を高め、農家による放牧地の活用計画や投資についてより確実な予測を可能とする。
(5)実用的な土地管理ツールの拡充
山火事の発生によるリスクを低減するため、より適切な放牧地を集中して活用するための標的型放牧を推進する。連邦政府が保有する空いた放牧地の利用開始・再開を進めるとともに、バーチャルフェンスなどの最新技術の導入を奨励する。
(6)山火事への連携と対応
「山火事連絡担当者」を各放牧地に設置することにより、山火事への対応および復旧活動についての連絡窓口を明確化する。
(7)放牧能力の維持
MOUにおいて、両部局は関連法令に準拠しつつ、放牧地が収容できる家畜が減少することを回避し、可能な限り放牧能力を維持することを目標とする。
2.業界の反応
全米牛畜産者協会(NCBA)は「連邦所有地で牛を飼育する場合、政府の煩雑な手続きを処理するのに多大な労力を要する。この計画は、許可プロセスの合理化、放牧アクセスの拡大、そして山火事のリスクが最も高い地域における標的型放牧の最適化を通じて、官僚主義を削減するものである。この覚書によって、牧場主にとって待望の規制緩和をもたらし、生産地を維持するために不可欠な保全活動を、より容易に実施することができる。」と称賛の声明を発表した。また、全米農業局連盟(AFBF)も、「このMOUは、手続きの遅延を減らし、透明性を高め、放牧の許可・承認プロセスを効率化することで、農家が家畜を飼育し、米国内の家庭におけるたんぱく質需要を満たすことができるようになるだろう」とのコメントを発表した。
米国においては、2022年の大規模な干ばつによる影響に加え、メキシコにおけるラセンウジバエの発生地域拡大に伴う生体牛の輸入禁止措置などにより米国国内での牛肉生産量は数十年ぶりの低水準となっている。メキシコからの生体牛の輸入再開に向けてUSDAはメキシコ当局との協議を継続している一方で、米国国内における牛肉生産力の底上げが求められている。連邦政府による対策が講じられる中で米国の牛群再構築の兆しは一部でみられているが、牛肉生産量の回復には数年以上を要すると見込まれている。
【調査情報部 令和8年4月13日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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