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オランダ政府、酪農家の乳用牛飼養頭数削減を支援(EU)

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 欧州委員会は2026年4月14日、オランダ政府による酪農家に対する乳用牛飼養頭数削減支援制度(Sem:Subsidy Scheme for Extensification of Dairy Farming)を承認した。Semは、温室効果ガス(GHG)およびアンモニア排出量の削減により持続可能な生乳生産を目指し、酪農経営における乳用牛飼養頭数の削減を支援するものであり、制度全体の予算は6億2700万ユーロ(1184億2149万円:1ユーロ=188.87円(注1))とされる。同委員会は、Semについて、生物多様性保全や気候変動対策を含む環境保護を強化し、EUの環境および気候関連目標の達成に寄与するために「必要かつ適切な制度」であると判断した。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2026年4月末TTS相場。
 

Semの概要

 欧州委員会は、Semの対象期間を2031年5月までとして承認し、酪農家からオランダ政府への申請期間は、26年6月1日から7月29日までとされる。支援の対象となる酪農家には、今後3年間で乳用牛飼養頭数を25年比で10〜20%削減することが求められる。これに対し、生乳の減産による所得の減少への補償として、乳用牛1頭当たり年間1606ユーロ(約30万円)が支給される。加えて、飼養頭数の削減により取り消されるリン酸塩の排出権(注2)(以下、「リン酸権」という。)に対して、リン酸塩排出量1キログラム当たり110ユーロ(約2万円)が補償され、補償対象となったリン酸権はリン酸権市場から消滅する。また、支援対象の酪農家には、(1)農場の牧草地面積を3年間減少させてはならないこと、(2)農場の牛や羊などの家畜を3年間増頭させてはならないこと−が求められる。なお、補償の対象となる3年が経過した後には、支援対象の酪農家は新たなリン酸権を購入またはリースすることで、当初の飼養頭数へ戻すことが認められる。
 オランダ農業・漁業・食料安全保障・自然省(LVVN)のエッセン大臣は、「Semにより、酪農家が持続可能な経営環境を整備するための新たな機会が創出されることを嬉しく思う。Semは窒素排出量の構造的な削減に寄与し、自然環境の回復やGHGの削減にもつながる。飼養頭数の削減による所得損失は、補償により緩和されるだろう」と述べている。
 今回承認された制度は、畜産農家に対する廃業支援策のLbvおよびLbv−plus(7億ユーロ(約1322億円)の補償制度(注3))を補完するものである。酪農家は、Semを含めたこれら3つの制度のうち1制度にのみ参加が可能となっている。
 
(注2)酪農家は、飼養頭数に応じたリン酸権を保有する必要があり、当該権利は農家間で売買やリースにより取引できる。例えば、年間9500キログラムの生乳を生産する経産牛1頭の場合、44.9キログラム相当のリン酸権を保有する必要がある。リン酸権の概要については、「畜産の情報」26年4月号「変化に向き合うオランダ酪農の現在〜窒素再利用技術と乳業界の動向〜」の3の(4)もご参照ください。
(注3)海外情報「オランダ、政府による畜産農家への廃業支援などで豚飼養頭数が減少(EU)」をご参照ください。

生産者団体の反応

 オランダ最大の生産者団体であるオランダ農業園芸組織連合会 (LTO)は、欧州委員会によるSemの承認を歓迎するとともに、環境規制等により経営難に直面している酪農家に対し、本制度が具体的な選択肢を提示するとの見方を示している。
【渡辺 淳一 令和8年5月18日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
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