欧州委員会は、Semの対象期間を2031年5月までとして承認し、酪農家からオランダ政府への申請期間は、26年6月1日から7月29日までとされる。支援の対象となる酪農家には、今後3年間で乳用牛飼養頭数を25年比で10〜20%削減することが求められる。これに対し、生乳の減産による所得の減少への補償として、乳用牛1頭当たり年間1606ユーロ(約30万円)が支給される。加えて、飼養頭数の削減により取り消されるリン酸塩の排出権
(注2)(以下、「リン酸権」という。)に対して、リン酸塩排出量1キログラム当たり110ユーロ(約2万円)が補償され、補償対象となったリン酸権はリン酸権市場から消滅する。また、支援対象の酪農家には、(1)農場の牧草地面積を3年間減少させてはならないこと、(2)農場の牛や羊などの家畜を3年間増頭させてはならないこと−が求められる。なお、補償の対象となる3年が経過した後には、支援対象の酪農家は新たなリン酸権を購入またはリースすることで、当初の飼養頭数へ戻すことが認められる。
オランダ農業・漁業・食料安全保障・自然省(LVVN)のエッセン大臣は、「Semにより、酪農家が持続可能な経営環境を整備するための新たな機会が創出されることを嬉しく思う。Semは窒素排出量の構造的な削減に寄与し、自然環境の回復やGHGの削減にもつながる。飼養頭数の削減による所得損失は、補償により緩和されるだろう」と述べている。
今回承認された制度は、畜産農家に対する廃業支援策のLbvおよびLbv−plus(7億ユーロ(約1322億円)の補償制度
(注3))を補完するものである。酪農家は、Semを含めたこれら3つの制度のうち1制度にのみ参加が可能となっている。
(注2)酪農家は、飼養頭数に応じたリン酸権を保有する必要があり、当該権利は農家間で売買やリースにより取引できる。例えば、年間9500キログラムの生乳を生産する経産牛1頭の場合、44.9キログラム相当のリン酸権を保有する必要がある。リン酸権の概要については、「畜産の情報」26年4月号「変化に向き合うオランダ酪農の現在〜窒素再利用技術と乳業界の動向〜」の3の(4)もご参照ください。
(注3)海外情報「オランダ、政府による畜産農家への廃業支援などで豚飼養頭数が減少(EU)」をご参照ください。