高まる豪州の牛肉加工コスト、競合国との差は縮まるも規制面に課題(豪州)
豪州食肉加工協会(AMPC)は2026年8月10日、牛・羊用の食肉処理施設における2024/25年度(7月〜翌6月)の加工処理コスト(注1)を調査し、輸出市場における主要な競合国であるニュージーランド(NZ)、米国、ブラジルの同コストと比較・分析したレポートを公表した。同調査は15/16年度にも実施されており、この約10年間における各国の加工処理に係るコストの変化や、政府による規制の影響を受けるコスト割合などを分析している。結果を見ると、牛1頭当たりの加工処理コストは豪州が531豪ドル(6万1059円:1豪ドル=114.99円(注2))と最も高く、15/16年度と比較して47%の増加が見られた。一方、NZ、米国、ブラジルのコストは豪州を下回ったものの、増減率がそれぞれ70%、81%、120%と大幅に上昇しており、コスト差は縮まっている状況にある(表1)。なお、枝肉重量1キログラム当たりのコストで比較すると、NZが2.28豪ドル(262円)と最も高くなっている。NZでは牧草飼育主体で枝肉重量が比較的小さいことから、キログラム当たりのコストが高くなりやすい傾向にある。
(注1)と畜処理から食肉製品として箱詰め・出荷されるまでにかかるコスト。ソーセージなどの二次加工品の製造は対象外。また、家畜の購入費用も含まれていない。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2026年7月末TTS相場。
豪州のコスト内訳を見ると、すべての項目で増加している一方で、主要なコストである人件費関連項目の総費用が占める割合は低下している。この変化は、他のコスト項目、特に光熱費、登録・認証費、輸送費、修理・メンテナンス代、消耗品費などの上昇幅が人件費に比べ大きかったためとみられる(表2)。この傾向はNZにも見られ、特に光熱費、輸送費の上昇がオセアニア地域のコストを押し上げている状況にある。対照的に、米国は人件費関連項目の上昇がコスト増の主要因となっており、移民規制の強化や労働力不足の影響が顕著に表れた結果とされている。ブラジルは最大のコスト増となっているが、主に人件費関連項目と輸送費の上昇が要因となっている。これらを踏まえれば、豪州がコスト差を縮められた要因の一つには、業界が進めてきた労働力確保策の成果があったと見られる
(注3)。
(注3)詳細は『畜産の情報』2025年12月号「持続可能な労働力確保に取り組む豪州 〜食肉加工業界の現状と展望〜」をご参照ください。
その一方で、新たな課題も示された。加工処理コストのうち、最低賃金や労災補償、食肉検査料などの政府規制の影響を受けるコストについて、定量化が可能な範囲で推定したところ、豪州ではコスト全体に占める割合が51%と、競合国の中で最も高いことが明らかとなった(図)。
AMPCのCEOは、本レポートの発表に当たり、「この調査は業界にとって貴重なベンチマークになる。高コスト下でも豪州産牛肉・羊肉が競争力を維持していくためには、我々の競争的立場を理解することが極めて重要だ」と述べた。本レポートは最後に、業界への提言として、国際競争力を高めていくためには、さらなるイノベーションと生産性向上を通じて規制負担を乗り越えていく必要があると指摘しており、今回の結果は、今後の取り組みの進捗を測る指標の一つになると見られる。
【調査情報部 令和8年8月14日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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