豪州CSIROが農業由来GHG削減技術を評価、削減の鍵は技術の併用と提言(豪州)
豪州連邦科学産業研究機構(CSIRO)は2026年10月14日、農業由来の温室効果ガス(GHG)排出削減に向けた技術と投資の優先事項を取りまとめた報告書を公表した。同報告書は肉用牛・羊、酪農、耕種、園芸、養豚、養鶏の6分野、84の技術を評価しており、商業的に成立する低排出技術の開発・普及を促進することを目的としている。評価対象は、家畜の消化管内発酵や排せつ物、土壌など、農場から直接発生するGHG排出の削減技術であり、土壌や植生への炭素貯留を主目的とした取り組みは除外されている。また、技術ごとの排出削減効果や開発段階に加え、生産現場への適合性、経済性、導入上の課題、さらには複数技術の組み合わせによる効果についても検討が行われた。
豪州の2023/24年度の農業由来GHG排出量は、二酸化炭素(CO2)換算で7567万トンとなっており、GHGの種類別ではメタンが約8割を占めている。メタン排出の大部分は家畜の消化管内発酵に由来しており、畜種別では肉用牛・羊部門が全体の約7割を占める最大の排出源となっている(図1)。
その肉用牛・羊部門では、18の技術について評価が行われている。22年から25年までにこれらの技術に対して実施された投資プロジェクトの総額は約9300万豪ドル(108億4845万円:1豪ドル=116.65円(注1))と推計されており、内訳を見ると、低メタン産生家畜の選抜育種が3846万5762豪ドル(44億8703万円)と最も多く、次いで植物由来生理活性物質の利用(タンニンを多く含むマメ科牧草の利用など)が2155万豪ドル(25億1381万円)となっている(表)。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2026年9月末TTS相場
また、これらの技術を技術成熟度と商業化準備度で評価すると、硝酸塩や油脂の飼料添加など技術的に確立した手法は存在するものの、削減効果や適用条件に課題が残る。一方、適用範囲が広く、かつ高い削減効果が期待されるメタン生成菌を対象としたワクチンなどは依然として開発段階にあり、現時点では幅広い生産現場で利用拡大が可能な技術は存在しないと結論付けている(図2)。
最終的に報告書は、技術が利用可能であっても、生産者の収益向上につながらなければ普及は進みにくいと指摘している。このため、農場における排出削減量の測定・報告・検証手法の低コスト化に加え、削減成果を評価する調達契約や費用・便益の分担、助言・普及体制の整備を推進する必要があるとしている。また、単一の技術だけではなく、地域や経営形態に応じて複数の技術や管理手法を組み合わせることが重要であるとしている。これらの提言は、今後の豪州における畜産分野の脱炭素政策の方向性を示すものとして注目される。
【調査情報部 令和8年10月23日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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