黒竜江省で生乳取引に関する政府指導価格公表される(中国)
中国では2014年ころの急速な酪農成長期を経て、その後国産生乳の食品安全に対する信頼が低下したことなどを背景に乳価が下落し、現在は1キログラム当たり3.5元(56円:1元=16円)前後で推移している(図1)。
同国の乳価は、生産者と中間業者または乳業との相対取引で決定されるのが基本であるが、中間業者による添加物の混入などの不正行為が横行していることが問題となっていた。
生乳生産量が内蒙古自治区に次いで国内第2位である黒竜江省注では、「生鮮乳の仕入れと販売価格の管理改善促進に関する意見通知」(黒政弁発[2010]31号)に基づき、生乳流通における「参考価格」と、行政による「指導価格」を設定できることとされている。
また、「指導価格」では、強制力として違反者(現段階では黒竜江省乳業協会(以下「乳業協会」という。)の会員に限定される)への罰則が強化されるとされている。 この通知に基づき、4月11日に2017年第2四半期の「参考価格」が公表され、中間価格は1キログラム当たり3.3元(53円)、最低価格は同2.9元(46円)とされた。
「参考価格」は、乳業が酪農家や中間業者に支払う精算払い乳価の水準として四半期ごとに示される。当初は最高価格、中間価格、最低価格の3種類が公表されていたが、近年は中間価格と最低価格のみが公表されるようになった。
一方、同通知によると、「参考価格」で生乳流通上の支障が生じた場合、省政府による「指導価格」が乳業協会を通じて公表されることとされている。
今般、乳業協会によって、3月31日に初めての試行的取り組みとして、「指導価格(黒竜江乳業協会会員の生鮮乳交易に関する指導価格)」が1キログラム当たり3.4元(54円)と公表された。今後、乳業協会会員の生乳取引は、この「指導価格」に基づいて行われることが求められる。
なお、この「指導価格」も、四半期に一度改訂の上公表されるとされた。 この「指導価格」の算定にあたっては、乳業協会が2016年5月1日付けで施行した「黒竜江省食品安全団体標準」(表1)の等級区分が参考にされる。
同標準では、生乳を3つの等級(「特級」、「1級」、「2級」)に分類し、格付けすることとされており、「指導価格」はこのうち「特級」の最低基準に達した生乳に適用され、個別の契約条件に応じて、示された価格の15%までの引き上げ、10%までの引き下げの範囲で価格の調整が認められる注2。
また「指導価格」の公表に先立ち、乳業協会は2016年2~3月に、省内の飼養頭数50頭以上の294農場に由来する生乳について事前抽出調査を行った結果、85%以上の農場で米国の品質基準を上回り、60%はEUの基準に近いものであったとしている。
今回、同通知に定められた「流通上の支障」として特定の事例が発生したわけではないが、同省畜牧獣医局は、このような品質に対する強制力を伴うインセンティブの付与により、従来から問題視されていた流通・輸送段階の不正取引や転売などに対する抑止効果と併せ、同省内の生乳の品質向上が見込まれるとし、市場秩序の回復とともに同省の乳業発展がさらに加速されると期待している。
【木田 秀一郎 平成29年4月21日発】
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