米国トランプ政権成立後、中国と米国の2国間で貿易経済協力の動きが高まる中、中国商務部は5月25日付けで「中米経済貿易関係調査報告書」(Research Report on China-US Economic and Trade Relations)※を公表した。
同報告書では、「中国と米国という世界最大の途上国と世界最大の先進国がウィンウィンの関係で共存する唯一の選択肢は、対立ではなく協力である」とし、今後の貿易・投資のさらなる促進と経済協力が重要であるとしている。
エネルギー、農産品、工業製品については、さらなる貿易の促進を図る必要があり、特に農産品に関しては、現在両国間の取引量がすでに巨大となっている大豆と綿花を取り上げ、「さらなる貿易量の増大を期待している」と表現している。また、併せて「600万人の米国の農業者が裨益する米国産牛肉の輸入について、トレーサビリティ、検査と検疫の確保を条件に米国との協議を加速する」と記述した。
同報告書がこのタイミングで公表されたのは、5月11日に公表された両国間の包括的経済対話の行動計画に関連する中国側の意思表明ともとれるが、その内容は、現状の分析や今後の期待感を示す曖昧な表現にとどまっている。
中国は2016年に8323万トンの大豆を輸入し、うち米国産は40%の3366万トンだった。同国では従来、トウモロコシが重点的に作付けされるとともに、政府により振興されてきたことにより、比較的大豆の国内生産基盤が弱く、搾油用途などの大豆輸入が年々増加しており、搾油後の大豆かすは主に飼料用に使われている。そのため、今後、同報告書の内容が2国間の貿易取り決めなどに反映され、国境措置の緩和などが進んだ場合、畜産分野にも影響が及ぶものと予想される。
なお、現在の大豆関税は、播種用が無税である以外は3%となっており、これに輸入増値税13%が加算されるが、税制改正に伴い2017年7月1日以降、増値税は11%に減税されることが既に決定されている。