家きん肉輸入先を拡大(中国)
中国海関総署(日本でいう税関)は、2019年11月8日付でタイの家きん肉輸出施設を8施設追加して15施設まで拡大し、同月22日付で米国の家きん肉輸出施設を172施設認定した。タイや米国の現地報道によると、中国向け輸出増が期待されている。
中国では、鶏肉は主に国内生産でまかなわれており、不足分を輸入で補ってきた。
2014年までは、ブラジルおよび米国の2カ国が輸入量の9割以上を占めていたが、米国からの鶏肉輸入は、鳥インフルエンザの発生を理由に2015年から停止されていた。その後は、ブラジルおよびアルゼンチンが輸入量の9割以上を占めていたが、2019年は大きく情勢が変わっている。
2019年は、ASF(アフリカ豚コレラ)などの影響により豚肉生産量が減少し、豚肉の国内価格が上昇している。このため、鶏肉などの豚肉以外の食肉へ消費がシフトしており、国内価格が上昇し、輸入量が増加している。2019年1~10月の冷凍鶏肉輸入量は、前年同期比48.8%増の61万2220トンであった。ブラジルおよびアルゼンチンに加え、タイやロシアからの輸入が増加している(図1)。
一方で、中国国内の2019年第1~3四半期(1~9月)の家きん肉生産量は、前年同期比10.2%増の1539万トンであった。すでに、2018年の鶏肉輸入量(50万トン)を超える140万トン程度増産されていることになり、今後急激に輸入量を増加させる可能性は低いと思われる。
なお、2019年の月別輸入量を見てみると、タイからの鶏肉輸入は2018年3月の解禁以降増加傾向で、2019年前半の輸入量はアルゼンチンを上回っていたが、同年後半は輸入量が減少している(図2)。2019年4月に、地理的に優位なロシアからの輸入が解禁されたため、輸入先をタイからシフトしたと考えられる。ロシアからの輸入量は、解禁以降増加を続け、同年10月の輸入量はブラジルに次ぐ2位となった(図2)。
中国国内での鶏肉増産の余力やロシアの輸出余力は不明であるものの、タイや米国の思惑に反し、新しく認定された施設からの輸入の余地は大きくないのではないかと考えられる。
【寺西 梨衣 12月2日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9534