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2020年7月1日、USMCA発効(米国)

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最終更新日:2021年3月1日

2020年7月1日、米国―メキシコ―カナダ協定(USMCA)が発効し、1994年に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)は終了した。

 USMCAの発効について、米国農務省(USDA)のパーデュー長官はノースカロライナ州の日刊紙に寄稿(オプエド)を寄せている 。この中で長官は、新しく改善されたUSMCAの成果としてカナダのクラス7乳価制度の廃止、米国の家きん肉や卵のカナダ市場へのアクセス拡大、SPS措置に関する改善などを挙げている。

 7月1日付け米国農務省のプレスリリース及び協定条文によると、USMCAにより、米国農業界にもたらされる主要な改善点は以下の通りである。

・乳製品市場へのアクセス向上
 カナダ市場で様々な乳製品の販売機会が拡大する。カナダは、米国よりも価格競争力を持つことを可能にしていた不公正なクラス6およびクラス7の乳価設定プログラムを、USMCAの発効から6カ月後に廃止することに合意した。

 また、カナダは米国の液状乳製品、クリーム、バター、脱脂粉乳、チーズなどに対して与えた関税割当数量を協定発効6年目まで拡大し、その後、13年間は品目にかかわらずさらに1%ずつ数量を増加させる。

例)チーズ:協定発効1年目の関税割当数量は2084トン。6年目の関税割当数量は1万2500トンとなり、その後13年間は1%ずつ数量を増加させ、最終的に協定発効19年目には1万4226トンとなる。USMCAの条文では関税割当数量のうち、小売以外向け数量と用途限定しない数量で50%ずつ配分されている。更にカナダグローバル連携省のリリースによれば、カナダ国内での流通先の配分により、用途限定しない数量のうち15%が卸売業者に配分され、85%は加工用に配分されることになっている。

 また、カナダは脱脂粉乳、乳タンパク濃縮物(MPC)、育児用調製粉乳を輸出する際、一定量(上限枠)を超えた分に輸出課徴金を賦課することに合意した。

例)脱脂粉乳、乳タンパク濃縮物(MPC)の上限枠:協定発効後1年目5万5000トン、2年目3万5000トン。その後は毎年1.2%の割合で上限枠が増加する。これを超える輸出には、1キログラム当たり0.54カナダドル(44円:1カナダドル=81円)の輸出課徴金が課される。

(注)カナダのクラス6およびクラス7の乳価設定の詳細については、「畜産の情報」2018年3月号「転換期を迎えるカナダ酪農乳業〜原料乳製品国家戦略導入の背景と影響〜」(https://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2018/mar/wrepo01.htm)を参照されたい。

・バイオテクノロジー
 ゲノム編集などの新しい技術を含む農業バイオテクノロジーに初めて対応し、技術革新の支援や貿易歪曲(わいきょく)的な政策の削減に取り組む。

・地理的表示(GI)
 認証のための厳密な手順を設定するとともに、名称が一般的に用いられる名詞であるかどうかを判断する際に考慮すべき要件を規定する。

 メキシコはカマンベールやチェダーなどの特定の名称が表示された米国産チーズについて、メキシコ国内の市場アクセスを制限しないことに合意した。

・SPS(衛生植物検疫)措置
 各国がヒト、動物、植物の生命又は健康を保護する権利を確保しつつ、SPS措置の規律を科学に基づき強化することに合意した。条項には、SPS措置の設定と実施に関する透明性の向上、科学的根拠に基づく決定の推進、認証、地域主義および同等性評価のための手続きの改善、体系化された監査の実施、輸入検査の透明性の改善、措置の互換性を強化するための協力などが含まれている。

・家きん肉および卵
 カナダは米国の鶏肉、七面鳥肉、卵などの家きん製品に対して、関税割当数量を毎年増加させる。

例)鶏肉:関税割当数量は協定発効1年目は4万7000トン(中抜きベース)。6年目は5万7000トンとなり、その後10年間は1%ずつ数量を増加させ、最終的に協定発効16年目には6万2963トンとなる。

 カナダとメキシコは、米国の食品および農産物にとって第1位と第2位の輸出市場であり、2018年の食品および農産物の輸出総額は397億米ドル(4兆3273億円、1米ドル=109円)超に達している。両国との貿易拡大だけでなく現在、米国は英国やEUなどとの貿易交渉を行っていることから、USMCAの発効が今後の貿易交渉にどのように影響するのかが注目される。
 
【調査情報部 令和2年7月17日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 農畜産業振興機構 調査情報部  (担当:(担当:国際調査グループ))
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