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COVID-19対策下における豪州の青果物需給への影響

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最終更新日:2021年4月8日

 2021年3月2日〜5日の4日間、豪州農業資源経済科学局(ABARES)(注1)による2021年豪州農業需給観測会議がオンラインで開催された。
 この会議においてABARESのエコノミストから発表された、新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」という)蔓延防止対策下における豪州の青果物需給への影響について紹介する(対象期間は、2020年度(豪州の会計年度。2020年7月〜2021年6月)及び2021年度)。
(注1) 農業・水・環境省(Department of Agriculture, Water and the Environmentの組織であり、農畜産物の需給見通しや生産者の経営動向などの情報を収集、分析、公表している。
 1. 労働力不足と生産量に与える影響
 
 豪州の青果物(注2)を始めとする園芸作物の生産は、海外からの有期契約の労働力、特にワーキングホリデービザ(注3)を取得して豪州に滞在する旅行者と、太平洋島しょ部からの季節労働者に作業の多くを依存している。
 2020年3月以降、COVID-19対策により海外との往来が制限されたことから、ワーキングホリデービザを利用した旅行者も大きく減少し、2020年(暦年)のビザ発行数は、前年比64%減となっている。(図1)。
(注2) 豪州は南半球に位置することから、日本にとって季節差を利用したたまねぎ、にんじん、アスパラガス等の輸入先国である
(注3) 二国・地域間の取決め等に基づき,相手国・地域の青少年に対し,休暇目的の入国及び滞在期間中における旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認めるビザ

図1 豪州における類型別ビザの発行数(2019年3月〜2020年1月)
図1
資料:ABARE “Horticulture: March Quarter 2021”

 これによりABARESは、園芸作物生産に係る労働者数は、2020年度でCOVID-19発生前の水準の5割程度に減少し、2021年度においても7割程度までしか回復しないと見込んでいる。
 この結果、2020年度については、天候は良好に推移したものの、収穫作業が滞る等の影響から、野菜生産量は前年度比2%減、果物生産量は同17%減となると予測した。野菜に対する影響が軽微な理由は、果物生産では海外労働者への依存度が大きい一方、野菜生産は小規模農家が小さく、家族労働による労働力のやり繰りが容易であり、果物農家より都市近郊に位置する傾向があることから、国内労働力を確保しやすい状況にあるためとしている。
 季節的にみると、特に2020年度の収穫最盛期である秋季(2021年2月〜4月)において、労働者不足による収穫作業への影響が懸念されている。
 2.COVID-19影響下における需要への影響

 労働力不足による生産への影響が懸念される一方、需要は堅調に推移すると見込まれている。
 これは豪州では、家計消費支出に占める食料品の割合は10%程度を占めるにすぎず、さらに青果物が食料品支出に占める割合は、25%程度にすぎないことから、消費者は価格が上昇しても、青果物の購入量を大きく減らすことはないと考えられているためである。
 このため、ABARESは青果物の価格が多少上昇したとしても、家計消費支出の増加は3.5%程度で増加するにすぎないとして、価格上昇による需要減退の動きは軽微であると見ている。この結果、2020年の青果物価格は高値で推移し、その後も堅調に推移すると予測している(図2)。

図2 生鮮青果物の消費者物価指数の比較(5か年平均を100とした場合)
図2
資料: Charley Xia & Peter Collins, ABARE “Outlook for the horticulture sector”

【調査情報部 令和3年4月8日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4394