地域イメージからもたらされる価値である、地域ブランドを適切に保護するため、平成18年4月より地域団体商標制度が導入された。
平成20年3月末現在、出願件数は全国で807件、北海道は36件で全国第4位であり、うち登録件数は全国371件、北海道は第7位の11件となっていた。
この北海道11件のうち、「帯広大正農業協同組合」を登録団体とする地域ブランドは、「大正メークイン」「大正長いも」「大正だいこん」の3つなのである。11件の登録には4件の水産物を含んでいるから、3件の登録を誇るJA帯広大正は北海道トップの取り組みを進めているといえよう。
地域団体商標登録には、「商品の信頼性の獲得」「商品の付加価値の向上」「地域経済の活性化」などが期待されているが、JA帯広大正では「安心・安全に関する具体的な取り組み」の一環として進められており、安心・安全の取り組みがあったから、制度導入まもなくで3つもの登録が行われたのである。
JA帯広大正の安全・安心の取り組みは、クリーン農産物生産の推進(安全)とトレーサビリティの確立(安心)を2本柱としている。
具体的には、(1)自主的な農薬検査(2)茎葉処理剤の非使用(3)生産履歴の記帳(4)土壌診断と適正施肥(5)特別栽培メークインの取り組み−などである。そして、この推進のため平成16年4月に、生産販売部に「食の安全安心対策室」を設置している。
取り組みの具体例として、ばれいしょの茎葉処理を取り上げよう。食用ばれいしょなどの生産では、地中にあるイモの成熟を調整し品質を向上させるため、地上部の茎葉を枯らす作業が行われる。これが茎葉処理であり、従来は枯凋剤という薬剤が使用されていたが、茎葉を枯らすというイメージの悪さから使用に疑問が呈されたのである。
そこでリーフチョッパーという草刈り裁断機とでもいうべきもので茎葉を刈り取る作業に置き換わった。しかし、リーフチョッパーが茎葉を引き上げ、地中のイモが地表に顔を出し日光を浴びることによって「青イモ」となり、商品価値を低下させる問題を生じさせた。
逆にいえば、こうした問題を回避するために枯凋剤が使用されていたわけである。機械の改良と培土作業をあわせることにより、「青イモ」問題に対処しているが、JA帯広大正は平成15年産から、この茎葉処理剤の全面禁止を進めていたのである。
また、病害虫の発生予察の徹底や忌避資材の活用、根菜類の線虫対策として緑肥活用が行われ、肥料使用も土壌分析に基づいて行われており、肥料や農薬の使用を最低限にする取り組みが行われている。さらに、残留農薬検査も抜き打ち調査で行われている。生産農家には厳しく、煩わしいことであるが。これら取り組みの結果として、地域団体商標登録が行われたのである。