鹿児島県における平成22年産でん粉原料用さつまいもの生産状況等について
最終更新日:2011年5月6日
鹿児島県における平成22年産でん粉原料用さつまいもの生産状況等について
2011年5月
1 はじめに
鹿児島県のさつまいもの平成21年の農業産出額は約206億円、耕種部門では米に次ぐ第2位で13%のシェアを占めている。また、台風などの気象災害に強く、夏場の土地利用型作物として輪作体系上も重要な作物として位置付けられ、でん粉原料用、焼酎用、加工食品用、青果用などとして作付けされている。近年ではマルチ栽培の普及など安定的に生産できる栽培体系が確立されており、機械化一貫体系による省力化技術も確立されつつある。
本稿では、平成22年産でん粉原料用さつまいもの生産状況等について報告する。
2 平成22年産さつまいもの生産状況
(1)作付面積
さつまいもの作付面積は、昭和60年頃には2万ヘクタール(生産量60万トン)を超えていたが、コーンスターチ用輸入とうもろこしの増加等に伴うさつまいもでん粉の需要や販売単価の低迷、農家の高齢化、機械化の遅れなどにより栽培面積が減少し、平成15年には1万2000ヘクタール以下(生産量34万1000トン)にまで低下した。
近年の全国的な焼酎ブームを背景に、焼酎用さつまいもの需要が増えたことから、作付面積は平成16年産以降増加に転じた。焼酎用の需要はピークを過ぎたものの、平成22年産は、前年より若干増加し、1万4300ヘクタールとなっている。これは、本県の普通畑の約2割に相当している。
(2)生産量
平成22年産の生産量は34万8000トンで、全国(84万4000トン)の4割を占めている。
10アール当たりの収量は2430キログラムと、平年単収2920キログラムを約2割下回った。この理由としては、4〜5月の低温による初期生育の遅れ、6〜7月の長雨・豪雨による無マルチ栽培での畦の崩壊や下葉の枯れ上がりなどに加え、7〜8月の高夜温によるいもの肥大遅れなど種々の要因による生育不良が複合的に発生したことがあげられる。
(3)用途別仕向け
平成22年産の用途別の仕向け量は、でん粉原料用が全体の42%に相当する14万6300トンで、焼酎用は全体の45%に相当する15万7000トンの見込みとなっており、でん粉原料用と焼酎用でさつまいも全体の8割以上を占めている。
なお、焼酎用への仕向け量は、本格焼酎の需要がピークを過ぎてきたことから、減少傾向にある。
(4)でん粉原料用さつまいも
平成22年産のでん粉原料用さつまいもの作付面積は5650ヘクタールで、焼酎用からの転換などにより、前年より120ヘクタール増加した。
しかし、10アール当たりの収量が前年より減少したため、生産量は前年より約2万トン減少した。
3 でん粉工場の操業状況
でん粉工場は、大隅、南薩、種子島地区などでん粉原料用さつまいもの主産地を中心に農協系と商社系の工場が点在し、平成22でん粉年度は20工場(農協系4工場、商社系16工場)が操業を行った。
でん粉工場では、植え付け時にでん粉工場と農家の間で締結された売渡契約に基づき生産されたさつまいもを利用しているが、平成21年産においては、豊作に加え、焼酎用の需要が前年産を下回った結果、「焼酎用として生産されたさつまいもをでん粉工場で集荷できないか。」との相談が多くあったことから、農家に対し、でん粉原料用さつまいもの制度や売渡契約の必要性などについて啓発を行った。
さらに、平成22年産さつまいもについては、県農業開発総合センター大隅支場の生育概況データなどから、8月頃の段階で、平年に比べ2〜3割減収することが想定されたことから、でん粉工場や焼酎企業に対して、不作に対応した柔軟な工場操業を要請し円滑な需給調整を図った。
4 おわりに
平成20年産をピークに焼酎用へのさつまいもの仕向け量が減少に転じてきており、平成23年産の需要についても、不作であった平成22年産の仕向け量を下回る約15万トン程度に落ち込むと見込まれている。
でん粉原料用さつまいもの作付けについては、焼酎用からの転換が進むものと予想されるが、一方、さつまいもでん粉の適正な生産数量は6万トンと見込まれており、これまで以上に需要に応じた生産を推進していくことが重要である。
このため、当協議会では、各地域ごとに用途別の希望需要量を提示したところであり、地域段階のさつまいも等の対策協議会、関係機関・団体と連携しながら、需要に応じた生産を推進している。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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