かんしょでん粉の高品質化に向けた取組への支援について
最終更新日:2011年10月7日
かんしょでん粉の高品質化に向けた取組への支援について
2011年10月
九州農政局生産部園芸特産課 農政調整官 稲村 勝久
【要 約】
南九州地方の産業・経済を支える重要な役割を担っているかんしょでん粉を今後も安定的に生産し、産地の収益力を向上させるためには、市場評価の高い加工食品用への利用を拡大させていくことが必要です。
加工食品用への転換を加速化するため、本年度から新たに国内産いもでん粉の高品質化に向けた取組に対する支援策を実施していますので、その概要と実施状況を紹介します。
1 国内産かんしょでん粉の現状と課題
でん粉原料用かんしょは、火山灰土壌地域であり、また、台風常襲地域である南九州地方(鹿児島県、宮崎県)において他に代替のない重要作物となっており、国内産いもでん粉製造業と合わせ、地域の産業・経済を支える重要な役割を担っています。
現在のかんしょでん粉の用途別仕向量をみると、約8割が糖化製品用に仕向けられています(図1参照)。しかしながら、糖化製品の多くは輸入とうもろこしを原料とするコーンスターチが用いられており、国内産いもでん粉の需要は、関税割当の運用によって安価な輸入でん粉の数量を管理することにより確保されているのが現状です。このため、今後も安定的に国内産いもでん粉を生産し、さらに産地の収益力を向上させるためには、競争力の高い高品質でん粉を製造し、糖化製品用から市場評価の高い加工食品用への転換を図っていくことが必要と考えています。
加工食品用への転換に向けた課題としては、原料用いもの生産段階では、加工食品用に適したでん粉を含有する品種の安定的な生産の確保、でん粉製造段階では、衛生管理の徹底やでん粉の高品質化等、さまざまな課題があります。これらの課題の解決に向けた産地の取組を支援し、加工食品用への転換を加速化していくため、農林水産省では、平成23年度から新たな支援策を講じております。
2 新たな国の支援策(23年度予算)
本年度(23年度)から、新たに産地活性化総合対策事業(地域作物支援地区)において、国内産いもでん粉の高品質化に向けた取組を支援しております。
具体的には以下の取組に対して支援を行います(補助率:(1)〜(4)については1/2、(5)については1/10)。
(1) でん粉原料用いもの適正生産技術の確立
でん粉原料用いもの生産の安定化及び低コスト化のための栽培技術を確立する取組
(2) 国内産いもでん粉の高品質化製造技術等の確立
高品質でん粉の製造・加工技術の確立や高品質でん粉を活用した新商品の開発に関する取組
(3) でん粉工場廃棄物の有価物化技術の確立
でん粉工場から排出される廃棄物を有価物化する技術を確立する取組
(4) 品質管理機器の整備
でん粉の品質の向上や衛生管理の高度化のための品質管理機器の導入
(5) でん粉製造施設の整備
上記(2)、(3)の取組に必要な施設の整備について、一体的に支援
3 九州地方における支援策の活用状況
産地活性化総合対策事業(地域作物支援地区)を活用して、九州農政局管内において、かんしょでん粉の高品質化に取り組まれている3事業実施主体の取組の概要を紹介します。
(1)全国澱粉協同組合連合会
高品質でん粉の安定供給のための検査機器・品質管理機器の整備
現在、全国澱粉協同組合連合会の会員であるかんしょでん粉工場では、でん粉の品質検査を農産物検査法に基づき実施していますが、その検査方法は、標準品との目視等による比較検査が主体となっています。
一方、ユーザーからは高品質でん粉の安定的な供給が求められていることから、このニーズに応えるため、従来の目視検査から測定機器による検査で品質管理を徹底することを目的として、赤外線水分計及び粉体白度計を導入することとしています。
また、食品の安全性への関心の高まりから、原料段階からの異物除去等の安全対策が強く求められているため、マグネットセパレータ及び金属検出機も整備することとしています。
(2)日本澱粉工業株式会社
かんしょでん粉の高品質化製造技術等の確立
日本澱粉工業株式会社では、これまで主に糖化製品用として、かんしょでん粉を製造していました。しかしながら、今後加工食品用への転換を目指す上では、でん粉の白度の向上とその均一化が重要課題となっています。
このため、実験室段階の製造試験においてでん粉原料用の主力品種である「シロユタカ」とは異なる特性を示した「ダイチノユメ」及び低温糊化性・耐老化性でん粉を含有する「クイックスイート」を用いて白度向上に向けた実証製造試験を行うこととしています。
(3)株式会社都食品
精製度向上技術確立に向けた品質管理機器の整備
株式会社都食品では、これまで簡易な白度計を用いてでん粉の白度測定を行っていましたが、白度の検査結果にバラツキがあり、正確かつ安定的な白度の把握が困難となっており、かんしょでん粉の精製度向上の支障となっていました。
このため、より高性能の白度計の導入により正確な白度を把握し、検査結果を活用した精製度向上の技術の確立を図ることとしています。
4 おわりに
現在、各事業実施主体において、国の支援策を活用してかんしょでん粉の高品質化に向けた取組が展開されています。
このような取組により、かんしょでん粉の高品質化が図られ、加工食品用への転換が円滑に進み、ひいては産地の活性化につながることを期待しています。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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