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鹿児島県における平成24年産でん粉原料用さつまいもの生産状況などについて

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最終更新日:2013年5月10日

鹿児島県における平成24年産でん粉原料用さつまいもの生産状況などについて

2013年5月

鹿児島県さつまいも・でん粉対策協議会 

1 はじめに

 鹿児島県においてさつまいもは、普通畑の約2割に作付けされており、台風などの気象災害に強い夏場の土地利用型作物として、輪作体系や防災営農上、重要な作物である。

 平成23年産さつまいもの農業産出額は約172億円で、耕種部門では米に続く第2位であり、その用途はでん粉用、焼酎用、加工食品用、青果用と多岐にわたる。また、近年では新品種の普及などによる安定生産や、機械化一貫体系による省力化も図られつつある。

 本稿では、平成24年産さつまいもの生産状況やでん粉工場の操業状況などについて報告する。 
図1

2 平成24年産さつまいもの生産状況

(1)作付面積

 さつまいもの作付面積は、昭和60年頃には2万ヘクタール(生産量60万トン)を超えていたが、コーンスターチ用とうもろこしなどの輸入増加に伴うさつまいもでん粉の需要の低迷、農家の高齢化、機械化の遅れなどにより、平成15年産には1万2000ヘクタール以下にまで減少した。

 平成16年産以降、全国的な焼酎ブームにより焼酎原料用の需要が急増し、平成19年以降は、1万4000ヘクタール前後で推移している。平成24年産は、前年産より200ヘクタール減少し、1万3800ヘクタールとなっている。 
図2

(2)生産量

 平成24年産の生産量は約32万トンで、全国生産量(約87万6000トン)の37%を占め、全国1位であるものの、3年連続の不作となっている。

 その要因としては、植え付け後の低温や梅雨時期の長雨により地上部(茎葉)の生育が十分でなかった上に、梅雨明け後も日照不足で、芋も十分に肥大できなかったことが考えられている。10アール当たりの収量は2320キログラムと、近年最も低かった平成22年産の2430キログラムをさらに下回った。

 県さつまいも・でん粉対策協議会では、さつまいもの生産量を確保するため、平成24年9月14日付けで、でん粉工場や焼酎工場に対してさつまいもの生育状況に応じた柔軟な操業について、文書で依頼を行った。 
図3

(3)用途別仕向け量

 平成24年産は、でん粉原料用と焼酎原料用でさつまいも全体の8割以上を占めている。でん粉原料用は全体の40%に相当する12万7900トンで、焼酎用は全体の47%に相当する15万1100トンの見込みとなっている。

 なお、焼酎原料用は、全国的な焼酎ブームが落ち着いたことから、平成21年産以降、減少傾向にあったが、平成24年産は、焼酎需要がやや持ち直したことなどから、4年ぶりに増加した。 
図4

(4)でん粉原料用さつまいもの生産状況

 でん粉原料用の作付面積は、平成16年以降、5500ヘクタール前後とほぼ横ばいで推移していたが、平成24年産は、5200ヘクタールにやや減少した。

 生産量は10アールあたり収量が、2の(2)で述べた天候不良の影響により2460キログラムと前年より減少したことに加え、作付面積が減少したことも重なり、前年より約2万1000トン減の12万7900トン(前年対比86%)となった。 

3 でん粉工場の操業状況

 鹿児島県内のさつまいもでん粉工場は南薩、大隅、種子島地域など主産地を中心に、農協系3工場、でん粉連系等16工場、合計19工場が操業を行った。

 県内のでん粉工場では近代的な施設整備も進んでおり、農協系のでん粉工場などでは、食品向けの高品質なでん粉製造が可能となっている。 

4 でん粉原料用新品種「こなみずき」

 一部のでん粉工場では、低温糊化性、耐老化性などの優れた特性をもつ食品加工用の新品種「こなみずき」の栽培(平成24年産は県内で約35ヘクタール)やでん粉製造、商品開発などが積極的に行われている。県においても、育成した九州・沖縄農業研究センターを中心に鹿児島大学、日本澱粉工業(株)などと一体となった共同研究(平成23〜25年度)に取り組んでいる。「こなみずき」の今後の普及拡大によりさつまいもでん粉の需要拡大が期待されるところである。 
写真

5 おわりに

 平成24年産のでん粉原料用さつまいもは不作であった過去2年間をさらに下回る約12万8000トンとなり、でん粉用、焼酎用ともに需要量を下回る状況となった。

 県さつまいも・でん粉対策協議会では、平成25年産の生産回復に向けた取り組みとして、でん粉、焼酎の各原料の需要量を提示するとともに、用途別需要に応じた計画生産を基本に、(1)県・地域段階における需給・生産情報の共有化および作柄に応じた工場操業、(2)実需者(でん粉工場、焼酎工場)と、生産者の実効性のある事前契約の実践による原料の安定確保、(3)基本的栽培技術の励行、大規模経営体の育成など生産性の向上等を推進していくこととしている。

 平成25年2月には、関係機関・団体による企画調整部会を開催し、平成25年産に向けた生産計画等について合意形成を行い、用途別・地域別の生産計画を策定して各地域に提示するとともに、3月には生産農家向けの原料用さつまいもの基本技術の励行を中心とした生産対策用ポスターや品目別経営安定対策における売渡契約の必要性などについて周知するためのチラシを作成し、配布したところである。

 今後とも、原料用さつまいもの需要動向の把握に努めつつ、関係機関・団体と一体となって、生産回復に向けた取り組みを進めていく予定である。 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-4398