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〜コーンスターチなどの天然でん粉、化工でん粉編〜

平成25年度でん粉の需要実態調査の概要
〜コーンスターチなどの天然でん粉、化工でん粉編〜

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最終更新日:2014年8月11日

平成25年度でん粉の需要実態調査の概要
〜コーンスターチなどの天然でん粉、化工でん粉編〜

2014年8月

調査情報部

【要約】

 食品や工業品などさまざまな製品の原料として利用されるでん粉について、食品製造企業および糖化製品製造企業の計39社を対象に、需要実態を調査した。

 平成25年におけるコーンスターチ、タピオカでん粉、小麦でん粉の調査対象企業の合計仕入れ量はいずれも前年を上回った一方、化工でん粉は前年をわずかに下回った。また、仕入れ価格はいずれも年間を通しておおむね安定していた。なお、今後の使用については、製品の販売状況によるとする企業があるものの、ほとんどの企業で増減を見込んでおらず、需要は安定しているものとみられる。

はじめに

 でん粉は、製品の主原料になることは少ないものの、その用途は、食品や工業品など多岐にわたっている。でん粉は、ばれいしょでん粉、かんしょでん粉、コーンスターチ、タピオカでん粉などの天然でん粉と、化工でん粉に大別される。各種でん粉は原料作物の違いにより特性が異なることから、実需者はそれぞれの用途に応じたでん粉を使用し、製品を製造している。

 農林水産省によると、平成24でん粉年度(平成24年10月〜平成25年9月)におけるでん粉の需要量は、前年度を2.2%下回る262万3000トンとなり、2年連続で減少した。このような中、当機構では、でん粉の需要動向を把握するため、各種天然でん粉および化工でん粉の使用企業を対象に、需要実態調査を実施した。

 本稿では、前号の「平成25年度でん粉の需要実態調査の概要〜国内産いもでん粉、輸入ばれいしょでん粉編〜」に続き、天然でん粉(コーンスターチ、タピオカでん粉、小麦でん粉など)および化工でん粉の調査結果を報告する。

1. 調査内容

 でん粉使用企業39社(菓子、飲料、乳製品、パン、水産練製品、即席麺、春雨、片栗粉、スープ、冷凍食品、調味料、ハム・ソーセージなどを製造する食品製造企業35社、糖化製品製造企業4社)を対象に、平成24および25年(1〜12月)における各種天然でん粉および化工でん粉の使用状況などについて聞き取り調査を実施した。

 調査項目は、使用しているでん粉ごとに、「使用製品」「使用理由」「仕入れ価格の動向」「仕入れ量の動向および今後の見込み」「品質面および調達面に関する評価」「他の種類のでん粉などへの切り替えの可能性」などとした。

 本稿で報告する品目の平成24でん粉年度の需給は、次のとおりである(図1)。

 まず、供給量を見ると、コーンスターチは225万8000トンとなり、総供給量の86%を占める。また、輸入でん粉(タピオカでん粉、サゴでん粉など)は14万2000トン(シェア5%)、小麦でん粉は1万8000トン(同1%)となった。

 需要量を見ると、化工でん粉向けは29万6000トンと、でん粉の総需要量の11%を占めた。化工でん粉とは、天然でん粉に酵素的、物理的、化学的な処理を施すことで、でん粉本来の特性を改良したり、新しい性質を加えたりしたものである。化工でん粉の供給量は統計上明らかでないが、天然でん粉を原料に国内で製造されるものと、輸入品がある。
 

2. コーンスターチの需要実態

 
(1)使用状況
 コーンスターチを使用していたのは、39社のうち23社となり、調査対象企業の約6割が使用していた(表1)。製品分類別使用企業数は図2、使用製品の種類は表2のとおりであった。製品分類別の使用企業数(延べ数)は、菓子類8社、飲料2社、練製品2社、食材5社などとなった。

 使用理由としては、代表的な「製品にとろみをつけるため」「食感を出すため」「風味を出すため」など製品特性を引き出すために使用しているというものの他、水産練製品では「保水材や結着剤として使用するため」、菓子では「他のでん粉に比べ、価格が安いため」などが挙げられた。
 
(2)調達状況
ア. 仕入れ価格の動向
 平成25年(1〜12月)の仕入れ価格の動向について回答があった21社の動向を見ると、「価格の変動があった」は9社、「横ばい」は12社であった。「価格の変動があった」とした企業のうち、「上昇」としたのは2社、「変動が少なかった」は2社、「為替変動を受け、変動があった」は3社、「市況並みの変動があった」は1社、「いったん上昇後、下落した」は1社であった。横ばいとした企業からは、「トウモロコシ相場は下がっているが、円安で相殺された」というコメントも寄せられた。

イ. 仕入れ量の動向および今後の見込み
(ア)仕入れ量の動向(平成24年、25年)
 仕入れ量について回答があった16社の仕入れ量の合計は、平成24年が3万9994トン、平成25年が4万94トン(前年比0.3%増)であった(表1)。

 23社の動向について、平成25年の仕入れ量を前年と比較したところ、「増加」4社、「横ばい」16社、「減少」1社であった。なお、2社は「増減が少なかった」とした(図3)。減少の理由は、水産練製品で「一部を化工でん粉に切り替えた」というものであった。

(イ)今後の仕入れ見込み
 今後の仕入れ見込みについては、「増加」3社、「横ばい」13社、「減少」2社であった。なお、4社は「増減は少ない」、1社は「今後の製品の生産数量次第」とした(図3)。減少を見込む理由は、「製品の需要が落ち込んでいるため」「コーンスターチを使用していた製品事業から撤退するため」というものであった。
 
(3)品質面および調達面に関する評価
 品質面については、いずれの企業も「問題がない」とのことであった。

 調達面については、ほとんどの企業が「問題ない」としたが、「売り手市場である。もっと買い手の意向をくんでほしい」との要望も挙げられた。この他、「非遺伝子組み換えトウモロコシを原料としたコーンスターチの調達が難しくなってきているので、今後、調達先の拡大を視野に入れている」とする企業もあった。

(4)他の種類のでん粉への切り替えの可能性
 平成25年にコーンスターチを他の種類のでん粉に切り替えた企業は1社で、水産練製品で「製品の品質向上のため、一部をタピオカでん粉を原料とする化工でん粉に切り替えた」というものであった。なお、今後の可能性として、他の種類のでん粉への切り替えを行うとする企業はみられなかった。

 切り替えを行わない理由としては、「製品特性を引き出すために使用しており、切り替える必要がない」「物性と味覚面で、コーンスターチが製品に合っている」などが挙げられた。

3. タピオカでん粉の需要実態

 
(1)使用状況
 タピオカでん粉を使用していたのは、14社であった(表3)。製品分類別使用企業数は図4、使用製品の種類は表4のとおりであった。製品分類別の使用企業数(延べ数)は、菓子類3社、乳製品1社、パン1社、練製品1社、麺類1社、食材1社、食肉加工1社、化工でん粉向け3社と、さまざまな製品で使用されていた。

 使用理由としては、代表的な「製品にとろみをつけるため」「食感を出すため」など製品特性を引き出すために使用しているというものの他、即席麺では「他のでん粉に比べて価格が安いため」などが挙げられた。
 
(2)調達状況
ア. 仕入れ価格の動向

 平成25年(1〜12月)の仕入れ価格の動向については、「価格の変動があった」6社、「横ばい」8社であった。「価格の変動があった」とした企業のうち1社は「変動が少なかった」とし、「上昇」は5社であった。上昇とした企業からは、「為替の影響を受け上昇傾向にあった」というコメントも寄せられた。横ばいとした企業からは、「原料相場は下がっているが、円安で相殺された」とのコメントも寄せられた。

イ. 仕入れ量の動向および今後の見込み
(ア)仕入れ量の動向(平成24年、25年)

 仕入れ量について回答があった11社の仕入れ量の合計は、平成24年が7367トン、平成25年が7620トン(前年比3.4%増)であった(表3)。

 14社の動向について、平成25年の仕入れ量を前年と比較したところ、「増加」4社、「横ばい」7社、「減少」1社であった。なお、2社は「増減は少なかった」とした(図5)。

 増加の理由は「生産品目の構成の変更」が挙げられ、仕入れ量は、製品の売り上げ状況に左右されると推察される。

(イ)今後の仕入れ見込み
 今後の仕入れ見込みについては、「横ばい」7社、「減少」2社であった。なお、4社は「増減は少ない」、1社は「今後の価格動向次第」とした(図5)。

(3)品質面および調達面に関する評価
 品質面については、多くの企業が「問題がない」としたが、2社から「品質にムラがあった」とのコメントが寄せられた。また、「しっかりした品質保持を希望する」との要望も寄せられた。

 調達面については、いずれの企業も「問題がない」としたが、「売り手市場の感があるので、買い手の意向もくんでほしい」との要望も寄せられた。なお、今後について「原産国の拡大を検討している」とする企業が複数あった。

(4)他の種類のでん粉への切り替えの可能性
 平成25年に、タピオカでん粉を他の種類のでん粉に切り替えた企業はなかった。

 今後の切り替えの可能性としては、「手間を考えると、切り替えを行わない」というコメントが寄せられた。製品開発には長い時間がかかり、製品設計の再検討を行う必要が生じるため、原料費の高騰や供給不足などが生じない限り、見直しは行われないものと推察される。
 

4. 小麦でん粉の需要実態

 
(1)使用状況
 小麦でん粉を使用していたのは、11社であった(表5)。製品分類別使用企業数は図6、使用製品の種類は表6のとおりであった。製品分類別の使用企業数は、菓子類4社、練製品1社、化工でん粉向け1社、食肉加工1社となった。

 使用理由としては、製品特性を引き出すために使用しているというものなどが挙げられた。
 
(2)調達状況
ア. 仕入れ価格の動向

 平成25年(1〜12月)の仕入れ価格の動向について回答があった10社の動向を見ると、「価格の変動があった」とする企業は2社、「横ばい」は8社であった。価格の変動がみられたとした企業のうち「変動が少なかった」が1社、「上昇」が1社であった。10社のうち9社が「横ばい」または「変動が少なかった」であったことから、年間を通して仕入れ価格が安定していたことがうかがえる。

イ. 仕入れ量の動向および今後の見込み
(ア)仕入れ量の動向(平成24年、25年)

 仕入れ量について回答があった10社の仕入れ量の合計は、平成24年が2772トン、平成25年が2790トン(前年比0.6%増)であった(表5)。

 11社の動向について、平成25年の仕入れ量を前年と比較したところ、「増加」1社、「横ばい」9社、「減少」1社であった(図7)。減少の理由は「生産品目の構成の変更」が挙げられ、仕入れ量は、製品の売り上げ状況に左右されると推察される。

(イ)今後の仕入れ見込み
 今後の仕入れ見込みについては、「増加」1社、「横ばい」8社であった。なお、1社は「増減は少ない見込み」、1社は「今後の製品の生産数量次第」とした(図7)。
 
(3)品質面および調達面に関する評価
 品質面・調達面については、いずれの企業も「問題がない」との評価であった。

(4)他の種類のでん粉への切り替えの可能性
 平成25年に小麦でん粉を他の種類のでん粉に切り替えた企業はなかった。

 切り替えを行わない理由としては、「物性と味覚面で、小麦でん粉が製品に合っている」などが挙げられた。

5. その他の天然でん粉の需要実態

 本調査では、サゴでん粉および豆でん粉についても調査を行った。

 サゴでん粉を使用していたのは1社のみで、粉末製品に使用していた。平成24年、25年ともに、使用数量は10トン未満であり、今後の使用見込みとしては、「横ばい」とのことであった。なお、品質面・調達面については「問題はない」とのことであった。

 豆でん粉を使用していた企業はなかったが、豆でん粉を原料とした加工品を輸入している企業は1社あった。

6. 化工でん粉の需要実態

 
(1)使用状況
 化工でん粉を使用していたのは、21社であった(表7)。製品分類別使用企業数は図8、使用製品の種類は表8のとおりであった。製品分類別の使用企業数(延べ数)は、菓子類8社、飲料2社、麺類2社、食材5社などとなった。

 使用理由としては、代表的な「とろみづけ」「食感を良くするため」など製品特性を引き出すために使用しているというものの他、デザートなどでは「香りを保持できるため」「風味を調整するため」、酒類では「飲みごたえ感を出すため」、冷凍食品では「保水材や結着剤として使用するため」、たれでは「味を安定させるため」などが挙げられた。

 この様にさまざまな使用理由が挙げられたのは、化工でん粉の原料となる天然でん粉がさまざまであることと、化工でん粉ごとに製造に際し異なる処理(酵素的、物理的、化学的な処理)が行われていることによるものである。
 
(2)調達状況
ア. 仕入れ価格の動向

 平成25年(1〜12月)の仕入れ価格の動向について、国産品と輸入品では違いが大きいことから、それぞれ個別に見ることとする。

 国産品を使用している11社のうち、回答があった8社の動向を見ると、「価格の変動があった」とする企業は4社、「横ばい」は4社であった。価格の変動がみられたとした企業のうち、「変動が少なかった」としたのは2社、「上昇」は1社で、「値動きはあるが、年間を通しては安定していた」とした企業も1社あった。

 輸入品を使用している15社のうち、回答があった14社の動向を見ると、「価格の変動があった」とする企業は6社、「横ばい」は7社であった。価格の変動がみられたとした企業のうち1社は「変動が少なかった」、3社は「上昇」、1社は「下落」とし、「為替変動により変動があった」とした企業も1社あった。この他、「化工でん粉の種類によって価格動向が異なる」とした企業が1社あり、でん粉誘導体については「上昇」、デキストリンなどについては「横ばい」というものであった。

 上昇の理由は、「為替変動による」「原料となる天然でん粉の価格の上昇による」というものであった。

イ. 仕入れ量の動向および今後の見込み
(ア)仕入れ量の動向(平成24年、25年)

 仕入れ量について回答があった16社の仕入れ量の合計は、平成24年が2万5188トン、平成25年が2万5136トン(前年比0.2%減)であった(表7)。

 21社の動向について、平成25年の仕入れ量を前年と比較したところ、「増加」2社、「横ばい」15社、「減少」3社、「無回答」1社であった(図9)。増加の理由は、「品質改善のため製品設計を見直したため」、減少の理由は、「生産品目の構成の変更」「製品の販売数量の減少」というものであった。

(イ)今後の仕入れ見込み
 今後の仕入れ見込みについては、「増加」1社、「横ばい」15社、「減少」2社であった。なお、「増減は大きくない見込み」「今後の製品の生産数量次第」「不明」とする企業が各1社ずつあった(図9)。減少の理由は、「化工でん粉を使用していた製品事業から撤退するため」というものであった。

 
(3)品質面および調達面に関する評価
 品質面・調達面については、いずれの企業も「問題がない」との評価であった。なお、「国産品は、品質面も調達面も安定している」との評価もあった。

(4)他の種類のでん粉への切り替えの可能性
 平成25年に現在使用している種類の化工でん粉を、天然でん粉や他の種類の化工でん粉に切り替えた企業はなかった。

 切り替えを行わない理由としては、「物性と味覚面で、使用している化工でん粉が製品に合っている」「変更するには、再度商品設計する必要があるため」などが挙げられた。

おわりに

 調査対象企業の平成25年の仕入れ量の合計は、コーンスターチ、タピオカでん粉、小麦でん粉は前年を上回り、化工でん粉は前年を下回った。仕入れ価格はいずれも年間を通しておおむね安定していた。また、使用しているでん粉の種類を切り替えることは、ほとんどの企業で行われておらず、その最大の理由は、それぞれの製品特性に合うでん粉を選択し、製造しているからであった。

 なお、今後の使用については、製品の販売状況によるとする企業があるものの、増減を見込む企業はわずかであり、需要が安定しているものとみられる。

 最後に、ご多忙の中、本調査にご協力いただいた企業の皆さまに、改めて厚くお礼申し上げます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713