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〜ばれいしょでん粉・かんしょでん粉・小麦でん粉〜

平成26年度でん粉の需要実態調査の概要
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最終更新日:2015年5月11日

平成26年度でん粉の需要実態調査の概要
〜ばれいしょでん粉・かんしょでん粉・小麦でん粉〜

2015年5月

調査情報部

【要約】

 食品製造企業などを対象にでん粉の需要実態を調査したところ、平成26年の調査対象企業における仕入れ量の合計は、国内産ばれいしょでん粉がかなり増加し、国内産かんしょでん粉、小麦でん粉はわずかに増加した。一方、輸入ばれいしょでん粉は、輸入価格の上昇などからやや減少した。

はじめに

 当機構は、でん粉の需要実態を把握するため、でん粉使用企業36社(菓子類、飲料、乳製品、パン、調味料、練製品・珍味などの食品製造企業32社、糖化製品製造企業4社)に対して、平成25年および26年(1〜12月)における国内産ばれいしょでん粉、輸入ばれいしょでん粉、国内産かんしょでん粉、小麦でん粉、コーンスターチ、タピオカでん粉、サゴでん粉、緑豆でん粉、化工でん粉の需要状況について聞き取り調査を実施した。

 調査項目は、使用しているでん粉ごとに、「使用製品」「使用理由」「仕入れ量の動向および今後の見込み」「仕入れ価格の動向」「品質面および調達面に関する評価」などとした。

 本稿では、ばれいしょでん粉、かんしょでん粉および小麦でん粉の調査結果を報告し、次号でコーンスターチ、タピオカでん粉などの天然でん粉および化工でん粉の調査結果を報告する。

1. でん粉の需給動向

 平成25でん粉年度(10月〜翌9月)におけるわが国のでん粉の需要量は、263万7000トン(前年度比0.5%増)であった。用途別では、糖化製品(異性化糖、水あめなど)が179万2000トンと最も多く、化工でん粉31万2000トン、繊維・製紙・段ボール17万9000トン、ビール10万トンとなっている(図1)。食品ではビールの他、畜水産練製品、片栗粉、菓子、麺類などが主な用途となっている。
 
 平成25でん粉年度におけるでん粉の供給量は、263万7000トン(前年度比0.5%増)であった(図2)。種類別では、コーンスターチが226万6000トンと最も多く、国内産ばれいしょでん粉が17万5000トン、国内産かんしょでん粉が3万9000トン、小麦でん粉が1万7000トンであった。なお、財務省「貿易統計」によると、同年度におけるばれいしょでん粉の輸入量は8168トンと、輸入でん粉の5.8%を占めている。
 

2. 国内産ばれいしょでん粉の需要実態

(1)使用状況
 国内産ばれいしょでん粉を使用していたのは、36社のうち23社であり、調査対象企業の6割が使用していた。製品分類別では、菓子類4社、飲料1社、調味料5社、練製品2社、糖化製品4社、その他食品7社であった(図3)。使用製品の種類は表1の通りである。

 使用理由は、「とろみ付けのため」「食感の向上のため」「保水のため」「弾力性の付与のため」「物性保護のため」「色がきれい(白色)なため」「安全なため」などが挙げられた。「安全なため」と回答した企業は、安全性を考慮して4年前に輸入ばれいしょでん粉から切り替えを行っていた。また、中には、50年以上前から使用している企業もあり、国内産ばれいしょでん粉が製品設計に欠かせないものであるといえる。


 
(2)他のでん粉に対する優位性
 国内産ばれいしょでん粉の他のでん粉に対する優位性は、「品質が良い、安定している」が8社と最も多く、次いで「国内産であること」6社、「調達がしやすい、供給が安定している」5社であった。品質面では、「色がきれいで、サラサラしている」などのコメントが寄せられた。また、「国内産であること」と回答した理由として、「顧客からの要請」や「消費者の受けが良い」を挙げた企業もあった。

(3)調達状況
ア. 仕入れ価格の動向
 平成26年(1〜12月)の仕入れ価格の動向について回答があった21社の動向をみると、「やや上昇」1社、「横ばい」18社、「やや下落」2社であった。一部の企業で変動が見られたが、仕入れ価格は、年間を通じておおむね安定していたといえる。

イ. 仕入れ量の動向および今後の見込み
(ア)仕入れ量の動向(平成25年、26年)

 仕入れ量について回答があった20社の仕入れ量の合計は、平成25年が4万113トン、26年が4万4139トン(前年比10.0%増)であった。

 23社の動向について、26年の仕入れ量を前年と比較したところ、「増加」4社、「横ばい」15社、「減少」4社であった(図4)。増加の理由は、「使用製品の生産量の増加」3社、「コーンスターチの不足を補うため」1社(糖化製品製造企業)であった。この糖化製品製造企業では、仕入れ量が前年比38.9%増と、大幅に増加していた。

 一方、減少の理由は、「使用製品の生産量の減少」2社、「段階的に国内産かんしょでん粉に切り替えているため」1社、「期中に製品の規格を変更したため」1社であった。なお、国内産かんしょでん粉への切り替えの理由はコストの削減で、水産練製品の一部の製品で国内産ばれいしょでん粉の2〜3割を国内産かんしょでん粉に切り替えた。当該企業では、「今後、国内産ばれいしょでん粉の使用量の半分程度を国内産かんしょでん粉に切り替えたい」との意向を持っていた。
 
(イ)今後の仕入れ見込み
 今後の仕入れ見込みは、「やや増加」2社、「横ばい」18社、「やや減少」2社、「大幅に減少」1社であった(図5)。「やや増加」の理由は、「顧客の要請による」「使用製品の生産量の増加」であった。「やや減少」の理由は、「段階的に国内産かんしょでん粉に切り替えているため」「製品の規格を変更したため」であった。「やや減少」と回答した2社は、いずれも仕入れ量の動向において、「減少」と回答した企業であった。「大幅に減少」の理由は、「コーンスターチへの切り替え」であり、コーンスターチの不足により、平成26年の仕入れ量が大幅に増加していた糖化製品製造企業からの回答であった。

 今後の使用に関する意向は、糖化製品製造企業1社がコーンスターチへの切り替えの意向があるものの、その他の企業は、継続して使用する意向を持っていた。
 
(4)品質面および調達面に関する評価
 品質面は、すべての企業で「問題ない」との回答であった。「品質の分析データが定期的に提出されるので信頼できる」とのコメントが寄せられるなど、国内産ばれいしょでん粉の品質が高く評価されていた。

 調達面も、すべての企業で「問題ない」との回答であったが、1社から「コンテナで輸送されてくるが、荷降ろしがしやすいようにパレット積みにしてほしい」との要望が寄せられた。また、現在は回復傾向にあるものの、平成22、23年において、でん粉原料用ばれいしょの不作により供給量が激減したこともあり、依然として供給不足に対する不安の声も聞かれた。

3. 輸入ばれいしょでん粉の需要実態

(1)使用状況
 輸入ばれいしょでん粉を使用していたのは、36社のうち6社であった。製品分類別では、菓子類2社、調味料2社、その他食品2社であった(図6)。使用製品の種類は表2の通りである。

 使用理由は、「結着剤として使用するため」「食感を出すため」「生地の縮み防止のため」などの他、2社から「コスト削減のため」が挙げられた。


 
(2)調達状況
ア. 仕入れ価格の動向

 平成26年(1〜12月)の仕入れ価格の動向をみると、「大幅に上昇」1社、「やや上昇」1社、「横ばい」4社であった。「上昇」と回答した2社は、「為替の影響」を理由に挙げた。財務省「貿易統計」によると、同年のばれいしょでん粉の平均輸入価格は、1トン当たり10万1295円(前年比12.7%高)と、前年からかなり上昇しているが、本調査では、「上昇」と回答した企業は2社にとどまっており、本調査対象企業における影響は限定的であった。

イ. 仕入れ量の動向および今後の見込み
(ア)仕入れ量の動向(平成25年、26年)

 仕入れ量について回答があった3社の仕入れ量の合計は、平成25年が278トン、26年が268トン(前年比3.6%減)であった。

 6社の動向について、26年の仕入れ量を前年と比較したところ、「横ばい」4社、「減少」2社であった(図7)。減少の理由は、「使用製品の生産量の減少」と「タピオカでん粉への切り替え」であった。タピオカでん粉への切り替えの理由は、輸入ばれいしょでん粉の仕入れ価格の上昇によるもので、当該企業ではコスト削減のために、今後、使用量の半分をタピオカでん粉に切り替える意向を持っていた。
 
(イ)今後の仕入れ見込み
 今後の仕入れ見込みは、「横ばい」5社、「やや減少」1社であった(図8)。減少の理由は、タピオカでん粉への切り替えであった。「やや減少」と回答した企業は、仕入れ量の動向で、タピオカでん粉に切り替えたため、減少したと回答した企業であった。
 
(3)品質面および調達面に関する評価
 品質面および調達面は、いずれの企業も「問題ない」との評価であった。

(4)国内産ばれいしょでん粉への切り替えの可能性
 国内産ばれいしょでん粉への切り替えは、「価格が折り合えば検討する」と2社から回答があり、輸入ばれいしょでん粉が価格メリットで選択されていることがうかがえる。また、1社から「国内産は供給が安定していないイメージがある」と回答があった。

4. 国内産かんしょでん粉の需要実態

(1)使用状況
 国内産かんしょでん粉を使用していたのは、36社のうち8社であった。製品分類別では、菓子類3社、調味料1社、練製品1社、糖化製品1社、その他食品2社であった(図9)。使用製品の種類は表3の通りである。

 使用理由は、「食感を出すため」「ばれいしょでん粉と小麦でん粉の中間的な食感を出すため」「製品の原料として欠かせない」などが挙げられた。中には70年前から使用している企業もあり、国内産かんしょでん粉が製品設計に欠かせないものであることがうかがえる。


 
(2)他のでん粉に対する優位性
 国内産かんしょでん粉の他のでん粉に対する優位性は、「国内産であること」が4社と最も多かった。この他に「供給が安定している」「品質が安定している」との回答があった。

(3)調達状況
ア. 仕入れ価格の動向

 平成26年(1〜12月)の仕入れ価格について回答のあった7社の動向をみると、「やや上昇」1社、「横ばい」6社であり、仕入れ価格は、年間を通しておおむね安定していたといえる。

イ. 仕入れ量の動向および今後の見込み
(ア)仕入れ量の動向(平成25年、26年)

 仕入れ量について回答があった6社の仕入れ量の合計は、平成25年が5688トン、26年が5760トン(前年比1.3%増)であった。

 8社の動向について、26年の仕入れ量を前年と比較したところ、「増加」3社、「横ばい」5社であった(図10)。増加の理由は、「使用製品の生産量の増加」2社、「国内産ばれいしょでん粉からの切り替え」1社であった。切り替えの理由は「コスト削減のため」で、今後、ばれいしょでん粉の使用量の半分程度を国内産かんしょでん粉に切り替える意向を持っていた。
 
(イ)今後の仕入れ見込み
 今後の仕入れ見込みは、「やや増加」2社、「横ばい」5社、「やや減少」1社であった(図11)。増加の理由は、「使用製品の生産量の増加」「国内産ばれいしょでん粉からの切り替え」であった。国内産ばれいしょでん粉からの切り替えを予定している企業は、平成26年の仕入れ量が増加したと回答した企業である。一方、減少の理由は、「安価なタピオカでん粉への切り替え」(糖化製品製造企業)であった。

 今後の使用に関する意向は、すべての企業において、継続して使用する意向を持っていた。
 
(4)品質面および調達面に関する評価
 品質面および調達面は、いずれの企業も「問題ない」との評価であった。

5. 小麦でん粉の需要実態

(1)使用状況
 小麦でん粉を使用していたのは、36社のうち7社であった。製品分類別では、菓子類3社、調味料1社、パン1社、練製品1社、その他食品1社であった(図12)。使用製品の種類は表4の通りである。

 使用理由は、「ソフトな食感を付与するため」「カスタードのとろみ付けのため」「パン生地との適性」「製品設計上欠かすことができない」などが挙げられた。水産練製品では、「西日本向けの製品での使用が多い」とのコメントもあった。


 
(2)調達状況
ア. 仕入れ価格の動向

 平成26年(1〜12月)の仕入れ価格の動向をみると、すべての企業が「横ばい」との回答で、仕入れ価格は安定していたといえる。

イ. 仕入れ量の動向および今後の見込み
(ア)仕入れ量の動向(平成25、26年)

 使用企業7社の仕入れ量の合計は、平成25年が2626トン、26年が2639トン(前年比0.5%増)であった。

 26年の仕入れ量を前年と比較したところ、「増加」2社、「横ばい」5社であった(図13)。増加の理由は、2社ともに「使用製品の生産量の増加」であった。一部の企業から「アレルギー表示の問題もあり、使用量は以前に比べると減少している」とのコメントも寄せられた。



(イ)今後の仕入れ見込み
 今後の仕入れ見込みについては、「やや増加」1社、「横ばい」6社であった。 増加の理由は、「使用製品の生産量の増加」であった(図14)。



(3)品質面および調達面に関する評価
 品質面および調達面は、いずれの企業も「問題ない」との評価であった。

おわりに

 調査対象企業の平成26年の仕入れ量の合計は、国内産ばれいしょでん粉、国内産かんしょでん粉、小麦でん粉では前年から増加していた。増加の理由として最も多かったのは、「使用製品の生産量の増加」であった。一方、輸入ばれいしょでん粉では、輸入価格の上昇に伴い、他のでん粉に切り替える企業がみられたことなどから、前年からやや減少した。輸入ばれいしょでん粉は、コストの削減を目的に使用している企業もあり、仕入れ価格が上昇すれば、より安価な他のでん粉への切り替えが起こりやすいといえる。

 国内産いもでん粉は、ばれいしょでん粉、かんしょでん粉ともに、「国内産であること」を優位性として挙げる企業が多く、顧客や消費者のニーズにより使用する企業も見られた。また、国内産ばれいしょでん粉においては、平成22、23年産のでん粉原料用ばれいしょの不作により供給量が激減したこともあり、依然として供給が不安定なイメージを持っている企業もみられた。引き続き、国内産ばれいしょでん粉は、供給不足に対する不安を払しょくすることが需要回復に向けて必要であるといえる。

 最後に、お忙しい中、本調査にご協力いただいた企業の皆さまに、改めて厚く御礼申し上げます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査報告 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713