浴光催芽は、主に生食用や加工用で用いられる生育促進技術である。貯蔵していた種いもを出庫した後、外気温にさらすことによって、休眠を覚まして芽の伸長を促進する。その一方で、光を当てることによって、芽の伸び過ぎを抑え茎葉への分化を促し、植え付け時に脱落しにくい丈夫な芽をつくる。浴光催芽を十分に行った種いもは、初期生育が促進され、株当たり茎数が多くなる。一方、「コナユキ」はもともと「コナフブキ」より初期生育が良い上に、茎数が多い。このため「コナユキ」はむしろ催芽期間を短くした方が、 1)茎数を抑制し、 2)着生する上いも数を少なくでき、その結果くずいも数を減らせる可能性がある。
そこで催芽期間の有効積算温度(以下「積算温度」という、気温4.0℃を基準とした積算値)と収量構成要素(株当たり茎数)およびくずいも数との関係を検討した。
その結果、積算温度が120℃未満では、株当たり茎数は少ない値でほぼ安定した(
図4)。一方、平成24、26年では、積算温度160℃以上で株当たり茎数が多い傾向が認められた(平成26年の株当たり茎数がやや多いのは、全粒種いもを用いたため)。
次に、積算温度とくずいも数との関係を見ると、積算温度が170℃を超えると、くずいも数は多くなる傾向があった(
図5)。これは、茎数の増加で上いも数が多くなったためと考えられる。一方、積算温度50℃未満でもくずいも数は多くなった。これは、催芽期間が短いことで初期生育ひいては塊茎肥大の開始が遅れ、小粒ないも数が多くなったためと考えられる。
これらの結果を整理すると、積算温度が50℃未満ではくずいも数が、また160〜170℃以上ではくずいも数および茎数が顕著に多い傾向を示すことから、望ましい催芽期間の積算温度を50〜160℃と設定した。
この積算温度の範囲で催芽した種いもの芽は、植え付け時には紫色に着色しており、芽の長さが2〜3ミリメートル程度である(
写真2、
3)。なお、積算温度が50℃未満の種いもは芽が淡い紫色で短く(
写真1)、積算温度が160℃以上の種いもは芽が5ミリメートル以上伸びているものが多い(
写真4)。
積算温度50〜160℃に相当する催芽期間はオホーツク沿岸地域の小清水町を例にとると、7〜23日程度が目安となる(
表1)。ただし実際には、植え付け作業が降雨などの影響で遅延し、結果として催芽期間が長くなる場合がある。このため、催芽期間の長期化などで生じるくずいも数の増加リスク回避には、前述の催芽期間の範囲の中で、できるだけ短い日数とすることが望ましい。