ジャガイモシストセンチュウ(学名
Globodera rostochiensis、以下「センチュウ」という)は、生活史の中にシストという段階を持つ線虫の一種で、国際的に重要なばれいしょ害虫である。シストとはメス成虫が変化したもので、センチュウの場合、直径0.2〜0.6ミリメートルの球形で(
写真1)、数百もの卵が入っている(
写真2)。このシスト内の卵は低温・乾燥に強く、年に約30%の自然減はあるものの土壌中で10年以上生存する。
ばれいしょなどの寄主作物が植え付けられると、根から出るふ化促進物質に反応し、幼虫がふ化、シストから出て根に侵入し、根内で成長する(
図)。メスは、成熟してくると頭部を根に残したまま胴体を外に出し肥大、根から出たオスと交尾する。メスは初め白いが間もなく黄化し(
写真3)、やがて外皮が硬化した褐色のシストとなる。センチュウは北海道では年に一世代であり、このシストが翌年以降の発生源となる。
症状として、地上部では早期の葉の萎凋(いちょう)が見られる。甚だしい場合は、下葉が枯れ、上位葉のみ残る“毛ばたき症状”を呈する。地下部には、初期(7月上旬)には白色、中期(7月中旬〜8月上旬)には黄色のメス成虫、後期(8月上・中旬以降)には褐色のシスト着生が認められる。
センチュウの被害は減収である。密度が高いと、50%以上の減収となる場合もある。またセンチュウは、植物防疫法で定められた有害動物であるため、発生地域では種ばれいしょの生産・流通が制限され、防除対策のための労力・金銭的コストも大きく、さらにさまざまな不利益が生じる。