鹿児島県における一般的な育苗は1月ごろから開始され、ハウスや簡易トンネルを利用する形態が多いが、近年は1戸当たりの栽培面積拡大により、大量増殖が可能なハウス育苗にその主流が移行しつつある。本ぽ作業の機械化が進む中で、育苗と採苗に係る機械化はほとんど進んでいないのが実態で、その労働時間は本ぽ10アール相当分の苗を確保するのに16.5時間を要する。これは現在のかんしょ栽培に係る全労働時間の約5割を占める(
表1)。
今後の機械化を進める上で避けて通れない課題としては、いかにして均一な苗を大量生産し、機械で本ぽに効率的に移植できるかが鍵となる。かつて、水稲は成苗移植を前提とした折衷苗代などが主流だったが、現在は田植機利用を前提とした箱育苗による稚苗移植が主流で、これにより機械化が大きく前進した。かんしょにおいても水稲と同様に、育苗の工程から本ぽ植え付け工程まで機械化を前提とした総合的な技術体系の確立が必要な時代に来ている。これらの問題に対処すべく、鹿児島県農業開発総合センターでは新たな育苗法について検討しているのでその一端を
図2に示す。この方法の大きな特徴は、苗床を造成する苗床造成機を用いて種いもを伏せ込むベッドを成形しながら両側に畦波シートで簡易な防壁を設けることにある。これにより、苗が倒伏しにくくなり曲がりがなく真っ直ぐで揃いが良い苗が確保しやすくなり、生育制御も容易になる。また、一般的に種いもは横伏せ込みが行われるが、頂芽を上にして垂直方向に伏せ込む縦伏せ込みを行うことで密植が可能になり発芽も一定程度揃う。