(1)新品種「こなみずき」の生産および「こなみずきでん粉」の製造
食品用途への活用が期待される、低温糊化性、耐老化性および優れた成形性を特徴に持つ「こなみずきでん粉」については、これまで本誌において複数回紹介してきたところである。
その原料となる「こなみずき」は鹿児島県下の複数のでん粉製造事業者に出荷されているが、本稿では、前村氏が出荷しているJA南薩拠点霜出澱粉工場(年間原料処理能力2万トン)を擁するJAグループの取り組みを紹介する。
JAグループにおける「こなみずき」の原料の生産および製品の製造の状況については、平成24年産からJA南薩拠点霜出澱粉工場の受け入れが始まり、4年間で原料の生産量は約2.4倍、製品の製造量は約3.2倍と伸びていることに加え、単収および歩留まりも上昇傾向にある(
表5)。
「こなみずきでん粉」は低温糊化性などの特性からかんしょでん粉の新たな市場開拓のツールとして、そのブランドイメージを関係者一体となって育てていくことが求められる。そのためには、原料の生産と製品の製造と販売の歩調を合わせる必要があり、原料の生産においては、各地域においてJAの選定した技術のある生産者にJA育苗センターで生産された苗の配布を行い、生産者は契約に基づく計画生産の実施に取り組んできた。
こうした状況の中で、平成27年産の原料生産量が997トンと前年から飛躍的に伸びた理由は、「こなみずき」の需要の拡大に伴い、生産に限界があったJA育苗センターからの苗の配布から一部を生産者の要望も踏まえて種芋の配布に切り替えたことにより生産者自らが種芋から契約に基づく生産に見合った苗数を育苗することで、需要に応じた生産体制の拡大が可能となったためである。
また、「こなみずき」の製造においては、そのでん粉の特性上、他のでん粉原料用かんしょとは厳格に区分する必要があることから、JA南薩拠点霜出澱粉工場では、他のでん粉原料用かんしょからでん粉を製造した後、一度機械を洗浄してから「こなみずき」だけを受け入れ、工場稼動に係る経費を踏まえ、短期間で製造を行っている。平成27年産の製造が前年産より倍増した結果、歩留まりも2.8ポイントも上昇したことから、今後は、工場の規模に見合った製造量となるよう「こなみずきでん粉」の市場の拡大が期待される。