でん粉 でん粉分野の各種業務の情報、情報誌「でん粉情報」の記事、統計資料など

ホーム > でん粉 > 調査報告 > 平成27年度でん粉の需要実態調査の概要〜コーンスターチ、小麦でん粉〜

平成27年度でん粉の需要実態調査の概要〜コーンスターチ、小麦でん粉〜

印刷ページ

最終更新日:2016年8月10日

◎PDFはこちら

平成27年度でん粉の需要実態調査の概要〜コーンスターチ、小麦でん粉〜

2016年8月

調査情報部
 

【要約】

 コーンスターチ、小麦でん粉ともに、使用理由として「食感を出すため」「とろみ付けのため」を挙げる企業が多く、製品の特性を引き出すでん粉を選択していることがうかがえた。また、今後の仕入れについては、両でん粉において増加もしくは減少すると見込む企業はわずかであり、需要が安定しているものとみられる。
 

はじめに

 当機構では、でん粉の需要実態を把握するため、でん粉使用企業51社(菓子類、飲料、パン、調味料、水産練製品などの食品製造企業および糖化製品製造企業)に対して、平成27年(1〜12月)におけるでん粉(国内産ばれいしょでん粉、国内産かんしょでん粉、コーンスターチ、小麦でん粉、化工でん粉)の使用状況について、選択回答式によるアンケート調査を実施した。

 調査項目は、使用しているでん粉ごとに、「使用製品」「使用理由」「仕入れ量」「仕入れ量の動向」「今後の仕入れ見込み」「仕入れ価格の動向」「品質面および調達面に関する評価」などとした。

 本稿では前月号の国内産ばれいしょでん粉および国内産かんしょでん粉に続き、コーンスターチおよび小麦でん粉の調査結果を報告し、次号で化工でん粉の調査結果を報告する。
 
 

1. コーンスターチの需要実態

 農林水産省によると、コーンスターチは、平成26でん粉年度(10月〜翌9月)の供給量が219万トンと、でん粉供給量の85%を占めており、わが国で最も多く供給されているでん粉である。
 
(1)使用状況
 コーンスターチを使用していたのは51社のうち30社で調査対象企業の59%を占めた。製品分類別の使用企業数(延べ数)は菓子類13社、調味料5社、パン3社、水産練製品2社、飲料2社、乳製品1社、その他食品7社であった。主な使用製品を見ると、菓子類は洋菓子、豆菓子、スナック菓子など、調味料は餅とり粉、から揚げ粉など、パンは菓子パンなど、水産練製品は魚肉ソーセージ、さつま揚げなど、飲料はコーヒー飲料およびビール系飲料、乳製品は発酵乳、その他食品は高齢者用食品、総菜、カレールー、スープ、フラワーペーストなどであった。

 使用理由(延べ数)は、「食感を出すため」が12社(菓子類7社、水産練製品1社、調味料1社、乳製品1社、その他食品(スープ、総菜)2社)と最も多く、次いで「とろみ付けのため」10社(菓子類3社、調味料3社、その他食品(高齢者用食品、スープ、カレールーなど4社)、「保水材として」6社(菓子類2社、乳製品1社、水産練製品1社、パン1社、その他食品(総菜)1社)、「結着材として」4社(菓子類3社、その他食品(フラワーペースト)1社)であった(図2)。

 この他、「製品特性に合っているため(飲料、パン)」「小麦粉との相性が良いため(菓子類)」「コスト削減のため(菓子類)」などが挙げられた。
 
 
 
(2)調達状況
ア.仕入れ量

 平成27年(1〜12月)における仕入れ量は、「10トン未満」および「50〜499トン」が8社と最も多く、次いで「10〜49トン」5社、「500〜1499トン」4社、「1500〜2499トン」2社、「2500トン以上」1社であった(図3)。仕入れ量の多かった企業の製品分類は、「2500トン以上」は飲料、「1500〜2499トン」は水産練製品1社、その他食品(カレールー)1社であった。
 
イ.仕入れ量の動向
 平成27年における仕入れ量の前年からの動向は、「横ばい」が26社と最も多く、次いで「やや減少」2社、「大幅に増加」1社、「やや増加」1社であった(図4)。「やや減少」と回答した企業の製品分類は乳製品1社および調味料1社で、そのうち1社の理由は、「使用製品の製造量の減少」であった。

 「大幅に増加」と回答した企業の製品分類はパンで、理由は、「新製品へ使用したため」であった。また、「やや増加」と回答した企業の製品分類はその他食品(高齢者用食品)で、理由は、「使用製品の製造量の増加」であった。
 
 
ウ.今後の仕入れ見込み
 今後の仕入れ見込みは、「横ばい」が25社と最も多く、次いで「やや増加」3社、「やや減少」1社であった(図5)。「やや増加」と回答した企業の製品分類は菓子類1社、パン1社、その他食品(高齢者用食品)1社で、そのうちパンは仕入れ量の動向で「大幅に増加」と回答した企業、その他食品は「やや増加」と回答した企業であった。理由は3社とも「使用製品の製造量の増加」であった。「やや減少」と回答した企業の製品分類は調味料であった。
 
 
エ.仕入れ価格の動向
 平成27年の仕入れ価格の動向は、「横ばい」が23社、「やや上昇」1社、「やや下落」1社であった(図6)。「やや上昇」と回答した企業の製品分類はその他食品(高齢者用食品)で、仕入れ量の動向で「やや増加」と回答した企業であり、理由は「為替の変動による」であった。「やや下落」と回答した企業の製品分類は水産練製品で、理由は「相場の変動による」であった。

 財務省「貿易統計」によると、同年のコーンスターチ用トウモロコシの輸入価格は、主要輸入先国である米国においてトウモロコシの生産がわずかに増加したことなどから、前年に比べ4%安とやや下落しているものの、調査対象企業の多くが「横ばい」と回答しており、調査対象企業における仕入れ価格への影響は限定的であったとみられる。
 
 
(3)品質面および調達面に関する評価
 品質面および調達面について「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階で評価した。品質面について24社から回答が得られ、「満足」8社、「普通」15社、「やや不満」1社であった。また、調達面について22社から回答が得られ、「満足」6社、「普通」15社、「やや不満」1社であり、品質面および調達面いずれも9割以上が「普通」以上の評価であった。

(4)国内産いもでん粉への切り替えの可能性
 コーンスターチから国内産いもでん粉に切り替える意向を持っている企業はなかった。切り替えの条件として、「国内産いもでん粉の価格の低下」2社、「国内産いもでん粉の品質の改善」1社の回答があった。また、「製品の特性に合わないので切り替えは困難」との回答も7社あり、各企業では製品の特性を引き出すのに最適なでん粉を選択していることから、切り替えが難しいことがうかがえる。
 

2. 小麦でん粉の需要実態

(1)使用状況
 小麦でん粉を使用していたのは51社のうち9社で調査対象企業の18%であった。製品分類別の使用企業数は菓子類5社、パン2社、調味料1社、その他食品1社であった。主な使用製品を見ると、菓子類は洋菓子、豆菓子、スナック菓子など、パンは菓子パンなど、調味料はドレッシングなど、その他食品は食品用でん粉であった。

 使用理由は、「食感を出すため」が6社(菓子類4社、パン1社、その他食品1社)と最も多く、次いで「とろみ付けのため」2社(菓子類1社、調味料1社)、「製品特性に合っているため」1社(パン)であった(図7)。
 
 
(2)調達状況
ア.仕入れ量

 平成27年(1〜12月)における仕入れ量は、「10トン未満」および「10〜99トン」が3社と最も多く、次いで「500トン以上」2社であった(図8)。仕入れ量の多い(「500トン以上」)企業の製品分類を見ると、菓子類1社、その他食品1社であった。
 
 
イ.仕入れ量の動向
 平成27年における仕入れ量の前年からの動向は、「横ばい」が8社、次いで「やや減少」1社であった(図9)。「やや減少」と回答した企業の製品分類は調味料であった。
 
 
ウ.今後の仕入れ見込み
 今後の仕入れ見込みは、「横ばい」が7社、次いで「やや減少」1社であった(図10)。「やや減少」と回答した企業の製品分類は調味料で、仕入れ量の動向で「やや減少」と回答した企業であった。
 
 
エ.仕入れ価格の動向
 平成27年の仕入れ価格の動向は、「横ばい」が7社、「やや下落」1社であった(図11)。「やや下落」と回答した企業の製品分類はその他食品で、理由は「相場および為替の変動、需給状況による」であった。
 
 
(3)品質面および調達面に関する評価
 品質面および調達面について「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階で評価した。品質面について7社から回答が得られ、「満足」2社、「普通」5社であった。また、調達面について5社から回答が得られ、「満足」1社、「普通」4社であった。

(4)国内産いもでん粉への切り替えの可能性
 小麦でん粉から国内産いもでん粉に切り替える意向を持っている企業はなかった。切り替えの条件として、「国内産いもでん粉の品質の改善」1社の回答があった。また、「製品の特性に合わないので切り替えは困難」との回答も1社あった。
 

おわりに

 コーンスターチ、小麦でん粉ともに、使用理由として「食感を出すため」「とろみ付けのため」を挙げる企業が多かった。これは、でん粉は原料作物や化工方法により性質が異なることから、各企業は、生産する製品の特性に最も適したでん粉を選択していることが考えられる。そのため、他のでん粉に切り替える意向を持っておらず、品質面や調達面で問題がない限り、他のでん粉への切り替えは行われないとみられる。

 また、今後の仕入れについては、両でん粉において、増加もしくは減少すると見込む企業はわずかであり、8割以上が横ばいと見込んでいることから、需要が安定しているものとみられる。
 

 最後にお忙しい中、本調査にご協力いただいた企業の皆さまに、改めて厚く御礼申し上げます。
 
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713