(2)有限会社斜里馬鈴しょ原採種ほ農場の概況
JA斜里町においては、種ばれいしょの生産が町内2箇所(その外に提携先として町外1箇所)で行われており、そのうち1箇所は農協の関連会社である有限会社斜里馬鈴しょ原採種ほ農場(以下「農場」という)が直接生産を行っている。JA斜里町としても種ばれいしょの安定的な確保を事業計画の重点課題とし、組織を挙げて取り組んでいる。
農場は、JA斜里町にあった原種増殖の事業部門を平成18年に分離・独立する方法で設立した法人である。農場は一般圃場から離れた山間地にあり、病害虫を防ぎやすい立地となっている。
(3)有限会社斜里馬鈴しょ原採種ほ農場による種ばれいしょ生産の特徴
ア.常勤職員による生産
同農場は、役員3名の他、社員を常時6名雇用し、合計9名で種ばれいしょの生産を直接行うことによって、安定した生産を実現できるような体制となっている。JAの関連会社が直接種ばれいしょの生産を行う利点としては、JA組合員内で人気が出る新品種を、要望通り作りやすいということがあげられる。
イ.大規模な生産
種ばれいしょの生産を主力業務としつつ、9名の常勤の役員・社員以外に10名程度のパートタイマーを雇用することによって、同農場は種ばれいしょ生産としては極めて大規模な70ヘクタールの経営を行うことが可能となっている。これにより、大規模な機械や設備を導入することが可能となっている。
ウ.野菜や緑肥の導入
同農場では、野菜作も導入し、収入の増加による常勤社員やパートタイマーの雇用安定と作付けの多様化による収量の低下や病害虫の発生の防止につなげている。
また、病害虫の侵入の防止を徹底するため、外部からの有機物の持ち込みを抑制し、えん麦を緑肥としてすき込みすることによって地力の維持、増進を図っている。
エ.ソイルコンディショニングの導入
農場では、種ばれいしょ生産に当たり、ソイルコンディショニング
(注)を導入している。同技術により、播種と同時に培土を行うことが可能となり、土塊や石礫を事前に除去できることから、下記のような利点があるとされる(
表6、
図4)。
こういった利点は種ばれいしょ栽培にとって大きな利点であり、JA斜里町は種ばれいしょ生産への同技術の導入効果を高く評価している。
同技術に必要な機械については、一部の機械については補助事業を利用するとともに、大規模な経営が可能な同農場の他、原料用ばれいしょの生産者で構成される利用組合によって所有することによって、導入コストを分散させている。
(注) あらかじめ石・れき・土塊を取り除き、畦立てした上で播種するため、品質の向上と収穫作業の大幅な省力化が期待できる作業体系。
オ.農協が設立したコントラクターの活用
JA斜里町には運送業務を行う関連会社があるが、同社は農作業を受託するコントラクターでもあり、農業の繁忙期に活用することが可能となっている。