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需給レポート

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最終更新日:2010年5月13日

EUがWTO譲許表の制限を超えた砂糖輸出を計画

2010年3月

調査情報部

EUの追加輸出計画発表

 欧州委員会は1月27日付のプレスリリースで、生産割当数量を超えて生産された砂糖の輸出を、2010年7月30日までの時限的な措置として行う計画であることを明らかにした。

 予定されている追加の輸出数量は白糖ベースで50万トンである。この背景としては、特にフランスやドイツといった生産効率の高い国々において、2008年度末の穀物価格が下落し、2009年度も低迷するとの予測から、2009年度にビート生産への回帰が生じたことに加え、生育が順調でビートが豊作となったことが挙げられる。EUの砂糖生産量は生産割当数量を400万トン上回り、砂糖以外の仕向け先であるエタノール向けやその他産業向けだけでは消費しきれず、在庫が増加しているもようである。

欧州委員会、輸出増加はWTO上限に違反しないとの見解

 EUの砂糖輸出は、生産コストを満たさない価格で輸出することは問題があるというWTO上級パネルの裁定を受け、年間137.4万トンに制限されている。しかしながら、欧州委員会は、世界の粗糖価格がポンド当たり30セントに迫り、EUの生産コストを賄うのに十分な水準であることから、WTO上限を上回る輸出も補助金付き輸出には当たらないとの見解を示した。EUはWTO上限を50万トン上回る187.4万トンの輸出を計画している。追加分の砂糖は3カ月以内に輸出されなければならないため、物流に問題が生じるのではないかとの懸念もあるが、EUが伝統的に年間700万トンの砂糖を輸出していたことを考えると、今回の追加輸出において物流が障害となることはないと思われる。

関係者の反応

 EUの砂糖産業団体である欧州砂糖製造者協会は、欧州委員会の発表を歓迎している。一方、ブラジルの砂糖産業は懸念を表しており、ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)のプレスリリースによると、このEUの発表について「現在の価格高騰が続くかどうかは不確実であり、世界価格がEU価格より下落したときにも、この決定により余剰砂糖の生産が継続される恐れがある」ことを指摘し、WTOによる制限数量を守ることを求めている。

 また、UNICAは、EUの方針がWTOの裁定の趣旨から逸脱していないか検討する必要があり、事前にWTOの場で検討されるべきであると主張している。

輸入量は予測を下回る見通し

 EU委員会によれば、2009年10月の砂糖価格は1トン当たり500ユーロの水準で取引されており、それ以降も上昇しておらず、EUの砂糖価格は世界価格の水準を下回っている。そのため、LDC諸国やACP諸国にとってEUに砂糖を販売するメリットが無くなり、2010年EUに流入する砂糖がどの程度になるかは不透明である。伝統的な供給国、例えばモーリシャスやフィジー、ガイアナは価格に関係なく供給を続けるとみられるが、EUに対する砂糖供給の歴史がそれほど長くないその他の国は、その供給先を価格がより魅力的な国内や近隣の市場に変えるとみられる。さらに、1年間の短期契約で世界市場から輸入されるCXL砂糖(機構注:近年EUに加入した東欧諸国は、従来ブラジル、タイ、キューバ等から粗糖を輸入しており、特例的にこの粗糖輸入を認めている)が25万トンあるが、LDC/ACP諸国と同様に、EUに供給される保証はない。

 このようなLDC/ACP諸国からの輸入減少は、EUの在庫の放出により調整されることから、LDC/ACP諸国からEUに供給されるはずであった30〜50万トンの砂糖は、世界市場に放出されることとなる意味している。従って、EUの50万トンの輸出増加および30〜50万トンの輸入減少は、世界市場に合わせて約100万トンの砂糖を供給することを意味している。

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713