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4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

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最終更新日:2010年6月3日

4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

2010年6月

調査情報部

◆ブラジル◆ 〜2010/11年度の砂糖生産量は過去最高の4070万トンの見通し〜

(1)2010年5月における見通し

さとうきびの生産動向
 
 2010/11ブラジル砂糖年度(5月〜翌4月)のさとうきび生産量は、6億6000万トン(前年度比9%増)、このうち、主産地の中南部では、同10%増加の5億9600万トンとみられる。増加の主な要因として、前年度に降雨により大量のさとうきびが刈り残されたこと、天候が良好であること、製糖工場の新設により作付面積が増加したことが挙げられる。複数の製糖工場では、砂糖・エタノール価格が高値で推移し、天候も回復したことから、通常よりも早い2月下旬に前倒しで圧搾を開始した。
 
 2010/11年度のさとうきび作付面積は、製糖工場の新設により、前年度比3%増の895万ヘクタールとみられる。2008年10月の世界金融危機、また2007、2008年に砂糖・エタノール価格が低迷した影響から金融機関の製糖工場に対する貸付要件は厳しくなり、その結果、さとうきび畑への投資や新植のペースは平年を下回った。世界金融危機は製糖工場の新設にも影響し、2009年の新設工場数が19であったのに対し、2010年は10とみられる。
 
 さとうきびの単収は、前年度並みの1ヘクタール当たり82.31トンとみられるが、前述の通り、さとうきび畑の新植ペースが平年を下回り、株出しの反復により生産性が低下するため、さとうきび1トン当たりの回収糖分(ATR)は138.25キログラムと、過去5年で最低であった前年度より7.25キログラム増えるものの、平年ベースには至らないとみられる。
 
 
 
砂糖およびエタノールの需給動向
 
 2010/11年度の砂糖生産量(粗糖換算)は、さとうきびの増産とATRの増加を受け、前年度から430万トン増加の4070万トン(中南部3550万トン、北部・北東部520万トン)となり、過去最高に達するとみられる。消費量は、国内人口の増加と食品加工産業の拡大により、1200万トンに増加すると見込まれる。
 
 2010/11年度のエタノール生産量は294億リットル(無水エタノール80億リットル、含水エタノール214億リットル)と、前年度の257億リットル(無水エタノール70億リットル、含水エタノール187億リットル)から増加が見込まれる。増産を牽引しているのが国内のエタノール需要である。フレックス車の販売が順調であること、エタノール価格がガソリン価格の70%を下回ると予測されることから、国内のエタノール需要は273億リットル(前年度比18.7%増)と大幅な増加が予測されている。
 
 さとうきびの仕向け割合は、国際市場における砂糖需要が引き続き堅調であるとの予測から、砂糖44.65%、エタノール55.35%と、前年度(砂糖43.5%、エタノール56.5%)に比べ砂糖の割合が高まるとみられる。
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 2009/10年度の輸出量(粗糖換算)は2430万トン(前年度比12.8%増)とみられる。同年度における最大の輸出先はインドとなり、2010年2月までの輸出量は385万トンと、前年同期の6倍に達した。インドは2008/09年度以降、2年度連続で消費量が生産量を上回る状況となり、輸入量を大幅に増やしているが、2009/10年度にはいって生産は回復しており、輸入量は減少するとみられることから、今後、輸出先に占めるインドの比率は低下が見込まれる。
 
 2010/11年度の輸出量は、2840万トン(同16.9%増)とみられ、生産量と同様、過去最高に達する見込みである。世界最大輸出国のブラジルによる供給が豊富であるとの見通しは、最近の国際価格下落の一因となっている。
 
資料:USDA GAIN Report “Brazil Sugar Annual” 2010/4/10
 
 
 

◆インド◆ 〜生産回復により、2010/11年度の輸入量は大幅減少の見込み〜

(1)2010年5月における見通し

砂糖の需給動向
 
 2009/10インド砂糖年度(10月〜翌9月)の砂糖生産量は、前回予測(2009年10月)の1730万トンから1950万トンに上方修正された。これは、主産地において冬季の気温が低かったこと、12月から1月にかけ降雨に恵まれ、モンスーン期の少雨の影響が軽減されたことから、さとうきび生産量が前回予測を上回るとみられるためである。
 
 主産地のマハーラーシュトラ州、ウッタル・プラデーシュ州の製糖工場は、5月初旬まで圧搾を継続したとみられ、圧搾期間は前年度を30日上回る150日間となった。また、砂糖価格の高騰とさとうきび生産量の低迷予測を受け、製糖工場が前年に比べさとうきび価格を高く設定し、その結果、グル,カンサリ(注)に仕向けられるさとうきびが減少したことも、砂糖生産量が増加した要因である。
 
 2010/11年度のさとうきび作付面積は、現行の2009/10年度において、さとうきび価格が前年度に比べ高く、また競合作物(コメ、小麦、豆類)に対しても1ヘクタールあたりの収益性が高いことから、前年度比13%増加の480万ヘクタールとみられる。また、モンスーン期の降雨は平年並みと予測され、乾燥により生産が伸び悩んだ前年度に比べ、単収も増加するとみられる。従って、2010/11年度のさとうきび生産量は3億2500万トン(前年度比15.2%増)と、かなり大きく増加するとみられる。さとうきびの増産を受け、砂糖生産量は2430万トンと、前年度を24.6%上回る大幅な増加が見込まれる。一方、グルの生産量は、価格が低迷するとの予測から560万トン(同15.2%減)に減少するとみられる。
 
 砂糖消費量について、2009/10年度は2350万トンと前年度を下回るとみられるが、2010/11年度は、国内における供給量の増加と人口増加、また経済成長を背景とした需要の高まりにより、2450万トンに増加すると予測される。
 
注:グルは、遠心分離機を使わず、オープンパン(釜炊き)でさとうきびの搾汁を煮詰め、固形状もしくは板状にした砂糖。カンサリは、搾汁液を清浄化した後、オープンパンで煮詰め、分みつした砂糖。
 
 
 
 
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 2009/10年度の輸入量は、増産予測を受け前回予測の600万トンから450万トンに下方修正された。業界筋によれば、2009年10月から2010年2月までの輸入量は290万トンと見込まれ、このうち、粗糖230万トンはブラジルから、白糖60万トンはタイ、ブラジルおよびアラブ首長国連邦からそれぞれ輸入したとみられる。
 
 2010年6月から7月にかけては、白糖50万トンの輸入契約を締結したとされること、また、2010/11年度開始前の8月から9月にかけ、粗糖の追加輸入を行うと見込まれることから、輸入量は450万トンと記録的な水準に達するとみられる。2010/11年度の輸入量は、生産量の大幅な増加により、120万トン(前年度比73.3%減)に減少するとみられる。
 
 政府はこれまで、国内供給の深刻な不足と、それに伴う価格高騰を受け、輸入規制の緩和を実施してきた(注)。2009年4月、政府は製糖工場に対し、国内供給向け白糖の原料となる粗糖の輸入関税を免除し、また、国家貿易企業(STEs)に対しても、白糖の輸入関税を免除し、同年7月には、11月末までに貿易業者・食品加工業者が輸入する白糖について関税を免除した。
 
 さらに、政府はこれらの粗糖・白糖輸入にかかる免税期間を2010年12月末まで延長した。しかしながら、国内価格が生産コストを下回る水準となり、国内業者が粗糖・白糖輸入への再課税を強く求めていることから、免税措置は近々撤廃されるとの観測もあり、今後の動向が注目される。
 
注:砂糖(HSコード1701)の輸入には、60%の基本関税に加え、1トン当たり950ルピー(2176円:1ルピー=2.29円)の相殺関税が課せられる。さらに、これらの輸入関税の合計に対し、3%の教育目的税が課せられる。
 
資料:USDA GAIN Report “India Sugar Annual” 2010/4/20
 
 
 

◆中国◆ 〜干ばつにより生産減少の見通し〜

(1)2010年5月における見通し

砂糖の生産動向 
 
 広西壮族自治区に次ぐ産地である雲南省は、3月下旬に降雨があったものの干ばつ高温傾向が継続しているもようである。雲南糖業協会によれば、雲南省さとうきび作付面積457万ム(30.5万ヘクタール、15ム=1ヘクタール)の内、82%に当たる373万ム(24.9万ヘクタール)が干ばつおよび霜害(2009年12月)の影響を受けた。このため、2009/10年度(10月〜翌9月)は、4月20日現在で、さとうきび圧搾量が前年度比80%の1263.9万トン、砂糖生産量が同81%の162.8万トンにとどまっており、生産が終了する5月末でも前年度を下回る、170〜172万トンと予測されている。
 
 また、広東糖業協会によれば、2009/10年度における広東省のさとうきび作付面積は同85%の190万ム(12.7万ヘクタール)、砂糖生産量が干ばつの影響により同81%の85.8万トンと見込まれている。
 
 なお、広西糖業協会によれば、広西壮族自治区の2009/10年度砂糖生産量は、さとうきび圧搾量が前年度比91%の5545万トン、砂糖生産量が同93%の710.2万トンとなった。
 
2010/11年度における作付面積の動向
 
 最大の産地である広西壮族自治区では、4月28日に干ばつ警報が解除され新植も開始されているが、広西糖業協会によれば、作付面積については、計画の1600万ム(106.7万ヘクタール)達成は難しく、1500万ム(100万ヘクタール)を下回る見込みである。
 
 雲南糖業協会によれば、雲南省の株出しおよび新植の面積は前年度比98%の450万ム(30万ヘクタール)と見込まれているが、このうち株出し面積333.6万ム(22.2万ヘクタール)は冬春の干ばつの影響を受けており、減産が見込まれている。
 
 広東糖業協会によれば、広東省の作付面積は、同110.5%の210万ム(14万ヘクタール)、砂糖生産量は2008/09年度並みの105万トンと見込まれている。
 
 一方、北方地域のてん菜収穫面積は、85万ム(5.7万ヘクタール)と若干の増加が見込まれるものの、農村労働力不足から今後の増加は難しいもようである。また、新疆糖業協会によれば、新疆自治区のてん菜作付面積は、国内の砂糖価格高騰を受け、2009/10年度の92万ム(6.1万ヘクタール)から63%増の150万ム(10万ヘクタール)、砂糖生産量は同38.44万トンから69%増の65万トンと見込まれる。
 
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 中央政府は4月28日に、2009/10年度において第5回目となる白糖国家備蓄の放出10万トン(2009/10年度計122万トン)を行ったが、主要市場における2010年5月中旬の卸売価格は1トン当たり5000元(7万円:1元=14円)前後と、前月を下回っているものの、国内における砂糖価格は堅調に推移している。
 
 雲南省の干ばつは継続しているもようであることから、白糖の国家備蓄の放出を行いながらも輸入量は増加すると予測される。
 
 
 
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