2010/11年度はさとうきび、砂糖生産量とも増加の見込み
主産地である中南部地域の生産は、例年より約1カ月早く開始された。同地域の4月から6月1日までのさとうきび生産量は1億2800万トン(前年同期比16%増)、砂糖生産量は630万トン(同25%増)となり、2010/11ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)は順調にスタートした。
2009/10年度の生産期間は季節外れの大雨に見舞われ、約50万トンのさとうきびが刈り残された。これらは2010/11年度に収穫されるが、品質が悪く、さとうきび1トン当たりの回収糖分(ATR)は138.3キログラムと、前年度の同131.0キログラムから増加するものの、過去5年間の平均を下回るとみられる。
しかしながら、さとうきび収穫面積が前年度比8.0%増の810万ヘクタールと見込まれること、また、前述の通り前年度に刈り残されたさとうきびが収穫されるため、圧搾可能なさとうきびは6億3910万トン(前年度比6.6%増)に増加すると見込まれ、さとうきびの仕向け割合は前年度並み(砂糖54.3%、エタノール45.7%)と予測されることから、2010/11年度の砂糖生産量は4090万トン(粗糖換算、同13.3%増)、エタノール生産量は287億リットル(同13.0%増)といずれも増加が見込まれる。ただし、今年度は開始されたばかりであり、圧搾がピークを迎える7〜9月の天候次第でこれらの予測は修正される可能性もある。
製糖工場の資金繰り悪化が2011/12年度の生産に影響も
ブラジルの製糖工場の約7割はエタノールの生産ラインを併設しており、これらの工場は砂糖とエタノールの価格動向に基づき、さとうきびの仕向け割合を調節している。直近の動きをみると、エタノール価格は新年度の開始により供給が潤沢となったことから続落し、5月の含水エタノール平均価格は1リットル当たり0.72レアル(前月比11.1%安)となった。エタノールの生産コストは同0.75〜0.80レアルとされ、現在の価格水準は生産コストを割り込んでいる。
一方、砂糖価格の指標となるニューヨーク粗糖相場(期近)は、6月中旬に1ポンド当たり16セント前後で推移し、粗糖の生産コストは同14セントとされるため、砂糖の収益性はエタノールに比べやや高く、製糖工場は当面、砂糖生産を優先させるとみられる。
2010/11年度においては、国際砂糖価格の急落により、価格高騰時に販売価格を先決めした一部の工場を除き、製糖工場の収益は前年度に比べ低下すると予測される。収益低下による製糖工場の資金繰り悪化は、同年度におけるさとうきびの新植ペースを停滞させるとみられ、このことは2011/12年度のさとうきび生産量に影響を及ぼす可能性がある。