この表7をみると、平均的な工場は107日間稼動して、てん菜糖(白糖)をおよそ4万5,000トン製造したことがわかる。製糖作業を行わない期間、これらの工場では結晶化の処理能力(業界全体で一日当たり平均373トン)を活用して、粗糖の精製を行う。メンテナンスに30日が必要であると想定すると、230日近くを精製作業に割くことが可能で、平均的な工場はてん菜糖のほかに、8万5,000トンの精製糖(甘しゃ糖)を製造できるものと考えられる。
輸入粗糖の精製は通常、委託ベースで行われる。だが、精製能力が大きい半面、粗糖の輸入が減少し、競争が激化していることから、精製による収入は精製費用をわずかに上回るにすぎない。
◆5.砂糖産業の課題
ロシアでは1999/00年度から2008/09年度まで、てん菜糖の生産量が増加して、輸入への依存度が低下する傾向が顕著であったが、ここにきてその勢いが失われつつある。代替作物の価格高騰と金融危機が砂糖産業に深刻な打撃を与え、農家がてん菜から収益性の良い作物への転換を進めたため、てん菜製糖業界の経営状態が悪化した。
このような状況の変化に伴い、小規模で効率の悪い工場は閉鎖され、てん菜平均処理能力は向上した。近年、主な代替作物(麦などの穀物)の価格が急落するとともに、砂糖の価格が急激に高騰した結果、てん菜の作付面積の減少基調が、今後、増加基調に転じるのは確実と見られる。製糖業界が金融危機による影響から回復するには少し時間が必要となるものの、てん菜の供給量の増加により今後、てん菜製糖業界の財務状況は大幅に改善されるとみられる。
砂糖産業の今後の見通しは、明るい状態がしばらくは続くと考えられる。少子高齢化により需要が確実に減退しているとはいえ、今後、数年間で砂糖産業内の競争環境は、過去10年間と比べ確実に好転するといえる。その理由は、大きく2つあり、ひとつは政府の輸入政策が比較的安定し、CIS諸国(主にベラルーシ)からの砂糖の流入にも一定の歯止めがかけられたこと。もうひとつは、ブラジルは2000年代中盤からの通貨レアル高で、米ドル換算での製糖コストが着実に上昇している。
ロシアは可変輸入関税に保護されているが、ブラジルが砂糖の国際価格に及ぼす影響は大きいため、同国の輸出価格の上昇により国際価格に連動しているロシア国内砂糖価格も長期間上昇してきた。これは今後、ロシアの砂糖産業に大きなメリットをもたらすと推測される。