ぶどう糖の摂取と注意力の関係について、ゲームセンターでよく見る運転ゲームを利用した興味深い実験があります。空腹状態とぶどう糖を摂取した状態とで、車のスピードの上昇と事故発生率との関係を調べた報告です。高速運転時にはちょっとした不注意が事故につながるので(事故発生率の増加)、そのような環境を注意力の変化を探る材料として利用したのです。
その結果、予め運転者にぶどう糖を与えておくと、必ずしもスピードの増加に伴って事故発生頻度が増加するわけではないことがわかりました。このことから、ぶどう糖が脳のエネルギー源として利用され、脳機能の面でも注意力や集中力の維持に何らかの効果があったと思われます。
子供のおやつの効果についても興味深い報告があります。アメリカの公立学校で、朝登校してからお昼まで、何も食べないクラスと、授業の合間に飴を与えたクラスとで、1学期間での勉強の達成度を比較したところ、飴を与えたクラスの方が、成績が良かったそうです。この結果については、子供達は飴(砂糖菓子)をもらったので喜んで勉強したのかもしれません。ですが、子供の脳は、多くのエネルギーを消費しているので、授業により消費されたエネルギーを、その都度、飴によって補給していた結果だとも考えられます。
糖分を摂取すると脳内の神経伝達物質の一つであるセロトニンが増加します。ラットにぶどう糖を経口投与すると、速やかに血糖は上昇し、それに伴い血中インスリン濃度も増加します。また、脳内のセロトニン、及び、その代謝物の量は徐々にではありますが、大きく増加します。セロトニンは、記憶学習にも関与すると言われていますが、脳をリラックスさせる働きもあります。集中力は、緊張しているときには出ません。スポーツや勉強においても、極度に緊張していたのでは本来の能力は発揮できません。今回の場合においても、リラックスしているときにこそ、集中力が出ていたと思われます。