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沖縄県内における本則要件に向けた担い手育成組織の事例

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最終更新日:2010年7月1日

沖縄県内における本則要件に向けた担い手育成組織の事例

2010年7月

那覇事務所 所長代理 竹中 憲一

調査情報部調査課 課長代理 中司 憲佳

はじめに

 平成19年産から導入されたさとうきびの品目別経営安定対策においては、甘味資源作物交付金の交付対象生産者は、一定の要件を満たすこととなっている。同要件について受託組織等が存在しない地域においては、特例措置として平成21年度までの3年間に限って担い手育成組織に参加する者についても交付金の交付対象とすることができた(表2 注5参照)。
 
 特例期間が終了する平成22年産以降は、これまでの取組状況や生産地からの要望等を踏まえ、共同利用組織の活用や作業受委託を推進し産地が将来にわたって安定的にさとうきびが生産できるように、要件である基幹作業(「耕起・整地」、「株出管理」、「植付け」、「収穫」)に「防除」および「中耕培土」の追加や共同利用組織等の範囲の拡大などの見直しが行われた。
 
 沖縄県では、平成22年1月から県とJAが中心となって県下の51の「さとうきび生産組合」が今回の対象者要件の見直しに対応できるよう、説明会を各地で開催した。その後、各地域のさとうきび生産組合の総会において、それぞれの組合が設定した担い手育成の方向性が決定され、要件の充足に向けた取り組みが図られることとなった。
 
 本稿では、組合長を中心に地域の関係機関と連携した担い手育成に取り組む体制を構築した沖縄本島北部の「名護市久志地区さとうきび生産組合」の事例を紹介する。
 

沖縄県および本島北部地区の状況

(1)沖縄県の状況

 さとうきびは、沖縄県の基幹作物として県全域で栽培されているが、栽培農家数は近年減少傾向にあり、特に沖縄本島地域での減少傾向が大きい。平成20/21年期の経営規模は、本島地域で9割以上、離島地域で6割以上、県平均でも8割弱が1ヘクタール未満となっている(表1)。また、さとうきびの生産量は、生産者の高齢化や都市化の進展による作付面積の減少や肥培管理の遅れなどにより減少傾向にあったが、生産農家の努力や関係機関の取組が実を結びつつあり、かつ、近年、気象条件に恵まれ、3年連続の増産となっている。
 
 

(2)沖縄本島北部地区の状況

 本島北部地区を見てみると、表2で分かるように本島の中では本則要件であるA−4の割合が高くなっている。その要因は、平成20年度までにハーベスタが34台、株出管理機(株揃機も含む)が19台導入されており、機械化一貫体系の確立が進んでいるためである。
 
 
 
 

名護市久志地区の担い手育成の方向性

(1)名護市久志地区久志区の状況

 名護市の久志区では、品目別経営安定対策が始まる前の平成14年度に「久志区さとうきび生産向上推進組合」を設立し、JAや行政と連携して展示ほ場を設置し、地域にあった品種の選定、種苗の増殖、栽培指導などを行い、病害虫の被害、地力低下、栽培技術の低下などの単収向上を妨げる原因を改善してきた。特に、地力の増進のため、春植え更新時にたい肥の投入を推進し、単収の増加につなげた。
 
 また、土地改良が30年前に終わり生産基盤も整っており、国、機構や県などの補助事業によりハーベスタ、大型トラクター、サブソイラなどの機械も導入されているため、平成19年度からのさとうきびの経営安定対策に制度が変わっても収穫の基幹作業を行うことにより、本則要件への移行は、久志地区のほかの区に比べると進展が早かった。
 
 
 

(2)名護市久志地区さとうきび生産組合の概要

 先に述べた「久志区さとうきび生産向上推進組合」は久志区のみの活動しかしていなく、さとうきびの品目別経営安定対策に対応するため、市町村やJAが中心となり関係機関が連携し、久志区を含めた久志地区全体を網羅する新たな組合を作ることとなった。
 
 今回紹介する名護市久志地区さとうきび生産組合(以下、「生産組合」という。)は、久志地区内において生産組織などの担い手の育成を行い、地域におけるさとうきびの安定的な生産を確保するため、生産者の高齢化対策を含めた農作業受委託作業を担う組合を目指し、平成18年10月18日に設立された。
 
 また、対象者要件の見直しに伴い共同利用組織にも適応するよう組織の規約を改正することにした。生産組合は、6つの支部に分けられ、現在、約130名の農家が参加している。
 
 
 

(3)本則要件への移行に向けて

 生産組合は担い手を育成し、機構(国)からの交付金を受けるために久志地区さとうきび農家全員を本則要件に適合させるため検討を行ってきた。昔は「ゆいまーる」という相互扶助の慣習があったものの、現在は高齢化が進んで、かつての労力交換的な作業の実施は難しくなっている。
 
 担い手育成の方向性を検討する過程で、防除作業についての共同利用組織(A−3)を目指しては、という意見が農家から出されたが、最終的にはこの3年間、取り組んできた機械化を促す基幹作業の受委託組織となり、生産者が委託を行うA−4の本則要件とする方向性が示された。
 
 この生産組合では、過去3年間、特例要件で申請していた者が30人弱いる。この中には、収穫作業を委託すると委託料が高く、小規模農家は自分のさとうきびは自分で収穫したいとの考えを持っている人もいた。しかし、組合長が中心となり行政や地区の関係者が一体となって生産者と話し合い、平成22年産から基幹作業が追加され、収穫作業より安価な中耕培土や株出管理といった収穫以外の基幹作業を委託することについて、生産者の同意を得た結果、平成22年産から組合員全員が本則要件に適合することとなった。
 

(4)受委託について

 農家が基幹作業を委託する場合、基本的にはJAおきなわ久志支店経済課に農作業委託申込書を提出し、JAがオペレータの配置などの調整を行う。また、委託料についても、JAが決済している。
 
 久志地区の受託組織は、JA久志支店、久志区さとうきび生産向上推進組合、天仁屋テクノファームがあるが、機構への充足要件提出資料(受委託作業の実績などの資料)は、JA久志支店が取りまとめている。
 

今後の課題について

 今後は、農作業の適期実施の合理化を促す受委託を推進するため、農業機械の導入や土地改良等の生産基盤整備を推進するとともに、オペレータの育成・確保など受託組織内での人材育成も必要となる。また、適期防除の実施や共同利用組織の育成・発展を通じた産地体制の強化、さとうきび生産をとりまく情勢の変化への対応など、さまざまな課題が存在している。

おわりに

 沖縄県内でも、島によって、また島の中でも地域ごとに事情が異なる。本稿で紹介した久志地区さとうきび生産組合は、基幹作業の受委託により本則要件へ移行しようとしている事例だが、宮古地区の搬出作業の受委託や伊是名島の生産法人への防除作業受委託などによる対象者要件見直しを踏まえた担い手育成の方向性もある。
 
 今後も、農家が安心してさとうきび生産を継続できるよう、機構として円滑な制度の運営に取り組んでいきたいと考えています。ご意見・ご要望などがあれば当機構那覇事務所(TEL:098-866-1033)にご連絡いただきたい。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713