さとうきびはパキスタンの農業における主要作物であり、約100万ヘクタールのさとうきびのほ場から、国内84カ所の製糖工場へ供給されている。さとうきびは砂糖生産のほか、医療用アルコール、燃料用エタノール、パーティクルボード(木材や植物繊維質の小片を板状に成形したもの)の製造にも利用される。
過去10年間をみると、砂糖生産量は増減を繰り返しており、2007/08パキスタン砂糖年度(10月〜翌9月)には過去最高の520万トン注に達したが、翌年度には前年度比32.7%減の350万トンに落ち込んだ。この原因として、競合作物(コメや小麦など)の最低価格引き上げによるさとうきび作付面積の減少、水資源の不足、肥料価格の上昇に伴う使用量の減少が挙げられる。
また、さとうきび生産者と製糖工場間の争議も、同国の生産が不安定な一因とされる。さとうきび生産者は、製糖工場による圧搾開始の先延ばし、最低価格以下でのさとうきび買い付け、代金の支払い遅延が農家の経営を圧迫すると非難している。これに対して、製糖工場は、糖度が低く工場が認めていない品種のさとうきびを生産者が栽培するため、砂糖生産の歩留まりが低迷しているとする。さとうきびの生産量と品質が不安定なため、製糖工場の稼働率は50%にとどまり、2008/09年度はさとうきびの減産による原料不足から、大半の製糖工場が通常よりも1〜2カ月間早く圧搾を終了する事態となった。
一方、消費量は、人口増加と経済発展を背景に増加基調で推移し、2003/04年度以降は400万トンを上回っている。砂糖需要の6割は製パン、製菓、飲料メーカーといった食品加工分野によるものである。特に、イスラム教徒が断食を行うラマダン月は日没後に盛大な宴が行われ、砂糖を含む食料品の需要がほかの月に比べて増えるため、パキスタンは他のイスラム諸国と同様、ラマダン前に砂糖を輸入する傾向がある。