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お砂糖と乳幼児のスキンケア

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最終更新日:2010年8月4日

お砂糖と乳幼児のスキンケア

2010年8月

広島国際大学看護学部 教授 山口 求

 「赤ちゃんのお肌はきれい?」と尋ねると、ほとんどの人は「きれい」と答えます。では実際の赤ちゃんのお肌について説明します。まず、生後1カ月頃までは、お母さんの性ホルモンの影響で、十分な皮脂量(バリア機能効果)で保護されています。
 
 しかし、清潔であるということではありません。頭部には脂漏性湿疹(赤ちゃんにきび)や顔、身体にも湿疹ができやすいのです。ベビー石鹸やベビーシャンプーできれいにする必要性があります。しかし沐浴(お風呂)時にベビー石鹸を使用しただけでは、徐々に水分や皮脂が失われて乾燥肌になります。最近、小児皮膚科の医師は、新生児の時期から保湿と清潔のスキンケアの必要性を提唱し、ベビー用乳液などの使用を推奨しています。
 
 生後2カ月を過ぎますと、分泌される皮脂量が極めて少ないために、2歳までの乳幼児は、角質層が薄く簡単に皮膚が傷つきます。そして、掻き傷からはダニや雑菌などが侵入し感染しやすい状態になります。つまり、図1に示すように、容易に肌のトラブルを起こしアレルギーの肌状態がつくられるのです。
 
 
 
 そこで、私たちは、乳幼児のスキンケアのための安全で、かつ手間がかからない材料を探していたところ、呉市で開催された産官学フォーラムで「シュガースクラブ」という砂糖を原料にした基礎化粧品を知りました。商品は砂糖を原料にしたものであり、てん菜糖(北海道原産の砂糖大根)から抽出した砂糖粒80%に、精油、食用油20%でオイルコーティングしたものです。砂糖の持つ浸透圧の高さにより皮膚から水分が浸透し、さらにオイルコーティングにより皮脂量が増加することで、バリア機能の役割を果たすことができる、ということです。
 
 また、砂糖は、褥創(床ずれ)のスキンケアに使用され、傷を治す作用があることも知られています。シュガースクラブの製造元企業から委託研究を受けて商品の効果を検証してきました。
 
 2007年度は、肌水分値で保湿効果を調べました。砂糖を主原料としたシュガースクラブを使用した3カ月〜4歳の乳幼児(使用群)14名と、使用しない乳幼児(未使用群)14名を比較しました。結果は図2に示しますように、使用群の3カ月〜4歳の乳幼児の使用30分後(沐浴で使用)の水分値は有意(p<.01)に上昇し保湿効果があることを検証しました。
 
 
 
 2008年度には、皮膚にトラブルのある乳幼児39名を対象にして、肌の皮脂量を測定しました。方法は2007年度と同様に沐浴時にシュガースクラブ使用し、そのケア前と30分後に皮脂量を測定しました。結果は、図3〜6に示しますように、4カ所すべてにおいてケア後に皮脂量が有意(p<.01〜p<.001)に上昇しています。夏の1カ月間入浴時に毎日使用してもらいました。
 
 乳幼児の最初の肌の状態は、「カサカサした肌」「掻き傷」「アトピー性皮膚炎と思われる関節や頸部の湿疹」「臀部のただれ」がありましたが、1カ月後にはしっとりした肌になっていました。また、使用したお母さんの感想から、「汗疹がでなかった」「虫さされによる傷がすぐに治った」「お尻を掻くことがなくなった」「下痢をしてもお尻がただれなかった」など、シュガースクラブによるスキンケアは、乳幼児に有効であることが明らかになりました。つまり、角質層が薄く、皮脂量の分泌されない乳幼児の乾燥肌を防ぎ、バリア機能によりダニや雑菌の侵入を防ぐことになります。
 
 
 
 
 
 
 
 
 最後に、乳幼児は大人に比べ不感蒸泄(汗など)が多く、皮膚が汚れやすいことはあまり知られていません。夏の夜の寝苦しさは、乳幼児も同様であり、塩分を含む汗は汗疹の痒みや痛みを増強させます。乳幼児は「泣く」ことで身体の不具合を訴えます。
 
 この時こそ、砂糖を主原料にした「シュガースクラブ」を使って、マッサージをするようにスキンケアを行うと、粒状(微粒子)砂糖により痒みや痛みを減少させる効果があります。さらに、マッサージは、赤ちゃんにとっては、心地良いスキンシップとなり安心感を与えることができます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713