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4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

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最終更新日:2010年9月1日

4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

2010年9月

調査情報部

◆ブラジル◆ 〜主産地の好天により生産拡大の一方、輸出に遅延生じる〜

(1)2010年8月における見通し

 主産地中南部の生産は乾燥した天候により順調となり、4月から7月16日までの同地域におけるさとうきび生産量は前年同期比20.3%増の2億5500万トン、砂糖生産量は同30.8%増の1400万トン、エタノール生産量は同19.8%増の1090万キロリットルに達したとみられる。
 
 前年度の砂糖価格高騰により作付けが増加したことから、2010/11ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)のさとうきび収穫面積は807万ヘクタール(前年度比7.5%増)に増加し、さとうきび生産量は過去最高の6億6410万トン(同10.8%増)に達すると見込まれる。ただし、5、6月の中南部における乾燥気候が今年度後半に収穫される晩熟性のさとうきびの生育に悪影響を及ぼす可能性があり、生産量が予測を下回ることも懸念されている。
 
 ブラジルでは圧搾がピークを迎える8、9月の天候による生産への影響が大きく、引き続き天候状況が注視される。さとうきび生産量が予測通りとなった場合、砂糖生産量は4220万トン(粗糖換算、同16.9%増)、エタノール生産量は3000万キロリットル(同18.1%増)といずれも過去最高に達するとみられる。なお、さとうきびの仕向け割合は前年度並みの砂糖54.3%、エタノール45.7%と予測される。
 
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 砂糖生産量の増加を受け、2010/11年度の輸出量は過去最高の2980万トン(粗糖換算、前年度比15.5%増)に達するとみられる。輸出先については、前年度に最も多かったインドが生産回復により輸入量を大幅に減らすと予測されるため、ロシアや中東、アフリカ諸国が中心になるとみられる。
 
 一方、ブラジルにおける砂糖輸出の遅延は依然解消されず、このことは2010年6月中旬以降の国際砂糖価格上昇の一因として注目される。輸出遅延は、港湾処理能力を上回る砂糖の出荷や降雨による船積みの中断が原因とされ、国内6カ所の砂糖輸出港(サンパウロ州のサントス港やパラナ州のパラナグア港など)で荷積みを待つ船舶数は例年の2倍以上とみられる。
 
 政府統計によると、2010年7月の砂糖輸出量は290万トンに達し、過去最高であった2009年9月の255万トンを大きく上回った。砂糖出荷が平年を上回るペースで行われる背景には、前年度に主産地の中南部において大雨により生産が停滞し、一部の出荷が2010/11年度に持ち越されたこと、国際市場において過去2年間に砂糖需給がひっ迫した結果、在庫が低水準となっている上、北半球の生産が10月以降に開始されるためブラジル産砂糖の引き合いが高まっていることがある。ブラジルの輸出量は世界の約5割を占めており、国際需給に大きな影響力を持つ。
 
 
資料:LMC “Monthly Sugar Report, August 2010”
   UNICA “Brazilian Sugarcane Industry Association” 2010年8月3日記事
   SECEX(ブラジル開発商工省貿易局)“Brazilian Trade Balance-Monthly”
 
 
 
 

◆インド◆
〜モンスーン期の降雨増加により2010/11年度の砂糖生産量は2660万トンの
見込み〜

(1)2010年8月における見通し

 2010/11インド砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、前年度のさとうきび価格高騰により作付けが増えたことから494万ヘクタール(前年度比25.1%増)と大幅な増加が見込まれる。
 
 さとうきび生産量についてはモンスーン期の雨不足による単収の低下が懸念されていたが、7月に入り降水量が前月の平年比84%から91%となり、今後数週間の降雨で平年並みになると予測されることから、LMCは前年度から大幅増加の3億3230万トン(同22.0%増)と見込む。さとうきび生産の回復により、同年度の砂糖生産量は2660万トン(粗糖換算、同31.0%増)と大幅に増加するとみられる。

(2)粗糖・白糖貿易状況

 2010/11年度の砂糖生産量は2660万トン(粗糖換算、前年度比31.0%増)、消費量は2550万トン(粗糖換算、同2.0%増)と予測される。このため、インドは3年ぶりに砂糖自給が可能になり、輸入量は120万トン(粗糖換算、同68.4%減)と前年度から大幅に減少するとみられる。
 
 インドでは通常、粗糖、白糖輸入にいずれも60%の関税が課せられるが、これらは2010年12月末まで一時的に免除されている。国内供給の回復による砂糖価格の下落を受け、砂糖業界は課税の再開を求めているが、政府はインフレを懸念し、早期再開に慎重とされる。一方で、新年度が開始される2010年10月までには再開されるとの見方が広がりつつある。
 
 
資料:LMC “Monthly Sugar Report, August 2010”
 
 
 
 

◆中 国◆ 〜2010/11年度は増産にもかかわらず輸入量大幅増加の見通し〜

(1)2010年8月における見通し

 中国における砂糖生産の約9割は南部で生産されるさとうきびを原料とし、残りは北部のてん菜に由来する。
 
 2010/11中国砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は147万ヘクタールと前年度並みにとどまるものの、単収は干ばつの影響により1ヘクタール当たり58トンに落ち込んだ前年度から同67トンに回復が見込まれることから、さとうきび生産量は9890万トン(前年度比15.0%増)とかなり大きく増加するとみられる。
 
 なお、集中豪雨および台風の影響で主産地の広西壮族自治区および広東省では7月、地滑りが発生したがこれによるさとうきび生産への影響は現時点では確認されていない。
 
 一方、2010/11年度のてん菜収穫面積は、黒龍江省および新疆ウイグル自治区で作付けが回復していることから28万ヘクタール(前年度比86.7%増)に増加するとみられ、てん菜生産量は970万トン(同94%増)と大幅な増加が見込まれる。原料作物の増産により、中国全体の砂糖生産量は1360万トン(粗糖換算、同15.3%増)とかなりの増加が予測される。
 

(2)粗糖・白糖貿易状況

 2009/10年度の減産による国内需給のひっ迫を緩和するため、政府が8月12日に同年度において7回目となる砂糖の国家備蓄放出を行った結果、合計放出量は146万トン(白糖換算)となった。
 
 2010/11年度の砂糖生産量は上述のとおり回復が見込まれるものの、消費量は1600万トン(粗糖換算、前年度5.3%増)とこれを大幅に上回るとみられる上、前年度の放出により国家備蓄が枯渇することから、輸入量は250万トン(粗糖換算、同66.7%増)と前年度から大幅な増加が予測される。ただし、中国では異性化糖の生産が増加しており、価格次第では砂糖から異性化糖へ需要がシフトし、砂糖輸入量が予測を下回る可能性もある。
 
 
資料:LMC “Monthly Sugar Report, August 2010”
 
 
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
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