道内の畑作地帯の中には、冬季間の降水量が少なく硝酸態窒素が土壌に残存しやすい地帯で、野菜作跡地など多量の無機態窒素の残存が想定される場合がある。また、新規購入地や借地など、過去の有機物投入履歴が不明な場合も少なくない。このような場合には、0〜60cm土壌無機態窒素診断が活用可能である。
本法を実践するには、まず「当年春の0〜60cm土壌硝酸態窒素量(kg/10a)」を求める必要がある。この分析は小型反射式光度計を用いて行うことができる(詳細は「北海道施肥ガイド2010」のp.39〜40を参照して頂きたい)。
次に、後述する「Nスコア法」と同様に、「当年春の有機物施用量に対応したNスコア」を表3から求め、以下の手順(1)〜(5)に従って窒素施肥量を決定する。
(1)当年春に0〜60cm土壌無機態窒素を測定し、以下によりNスコア合計推定値を計算した後、窒素施肥量を決める。
(2)Nスコア合計推定値=
〔当年春の0〜60cm土壌硝酸態窒素量(kg/10a)×1.1+当年春の有機物施用量に対応したNスコア(表3)〕
(3)窒素施肥量(kg/10a)=21−Nスコア合計推定値
(4)得られた窒素施肥量は、ほ場条件に応じて±1(kg/10a)の範囲で加減する。
(5)上記で計算した窒素施肥量が4(kg/10a)未満であるときは、初期生育確保に最低限必要な窒素施肥量(スターターN)として4(kg/10a)を施用する。
資料:「有機物等の窒素評価に基づくてんさいの窒素施肥対応」(平成19年普及推進)
計算例:「当年春の0〜60cm土壌硝酸態窒素量(kg/10a)」は5.5 kg/10a。当年春にたい肥(単年施用と連用5年未満)を2t/10aと牛尿を2t/10a施用した場合、表3から「当年春の有機物施用量に対応したNスコア」は2×1+2×2.5=7となる。すなわち、「Nスコア合計推定値」は5.5×1.1+7=13.05となるので、窒素施肥量は21−13.05=7.95 (kg/10a)となる。