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平成22年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会の概要について

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最終更新日:2010年11月4日

平成22年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会の概要について

2010年11月

那覇事務所

はじめに

 平成22年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会が当機構那覇事務所の主催により、平成22年10月14、15日の両日、沖縄県石垣市において開催された。
 
 同検討会は、各地域のさとうきび生産者、糖業、研究者、行政などの関係者が一堂に会し、さとうきび生産および製糖に関する諸課題について、鹿児島・沖縄両県の関係者が共通認識を持つとともに、諸課題の解決のための現場における具体的な方策を検討することを目的として行っている。
 
 今回の検討会では、
 (1)海外の糖業事情
 (2)砂糖政策をめぐる現状と課題
 (3)担い手育成対策
 (4)増産に向けた取組
 (5)地域・試験研究の取組
 について報告があり、それぞれ意見交換等が行われた。また研究機関等の展示ほおよび試験ほ場の現地視察を実施した。
 
 
 
 
 

1.海外の糖業事情

 当機構調査情報部調査課の中司課長代理から、ブラジルさとうきび産業の情勢として、砂糖・エタノールの需給動向と最近の業界動向、また、同部情報課の宇敷課長から、米国の砂糖をめぐる状況とフロリダのさとうきび産業の現状と課題などについての報告が行われた。

2.砂糖政策をめぐる現状と課題について

 農林水産省生産局生産流通振興課の酒井砂糖類調整官から、砂糖政策をめぐる現状と課題について、同課土地利用第3班甘しゃ糖係の村松氏から、平成23年度農林水産予算概算要求の概要などについて解説が行われた。

3.担い手育成対策について

(1)当機構鹿児島事務所の肥後所長から、平成22年産対象甘味資源作物生産者要件審査申請提出状況について報告が行われ、22年産からの要件見直しに係る移行状況について説明が行われた。
 
 
(2)沖縄県農林水産部糖業農産課の島尻課長から、
  (ア)要件見直しを受けた取組
  (イ)適正防除に向けた啓発資料の作成
  (ウ)今後の取組
  (エ)担い手育成の方向性
  などについて、
 
  鹿児島県農政部農産園芸課の伊藤特産作物対策監から、
  (a)担い手育成の取組
  (b)担い手育成の取組事例
  (c)今後の取組
  などについて報告が行われた。
 
 
(3)沖縄・鹿児島両県の生産者から各地域の担い手育成の取組報告が行われた。報告者は沖縄県からは、伊是名島の西宣保氏、石垣島の上原重次郎氏、南大東島の宮平昌氏、鹿児島県からは種子島の西田勉氏、奄美大島の西善隆氏、沖永良部島の福井源乃介氏であった。
 
  主な報告の概要は、
  (ア)各地域のさとうきび生産概況
  (イ)各地域での勉強会および制度説明会の実施
  (ウ)JA、生産組合が中心となった農家への基幹作業の委託を推進する取組
  (エ)防除の実演会の実施
  などであった。
 
 
 また、資料提供があった、鹿児島県徳之島の松山洋次郎氏から、「神嶺地区営農推進協同組合の取組み」と題して、受託組織設立(神嶺地区営農推進協同組合)の経緯および地域の小規模農家を組合に受け入れ、効率よく肥培管理作業を実施し、生産農家の所得向上を目指している現状などについて報告があった。
 

4.増産に向けた取組

(1)沖縄県石垣島の當銘悟氏から「親子で引き継ぎ築くさとうきび栽培〜機械化一貫作業体系と創意工夫で大規模経営〜」と題して、ハーベスタや全茎式プランタなどの大型機械を導入し、植付けから収穫まで機械化一貫作業体系を確立し、また、夏植え1作型から春植え・株出し体系へと作型を転換することで、経営の安定化を図っている現状などについて報告があった。
 
 
(2)鹿児島県徳之島の太孝一郎氏から「さとうきびでゆとりある経営をめざす!」と題して、平成6年に耕耘機1台から就農した後、次々にハーベスタ、トラクターなどの大型機械を導入し受託組織の規模を大きくしていった経緯や、作業機の改造等による効率的な機械作業と、株出面積・株出回数の増加により、さらなる増産・増収を図っていく取組などについて報告があった。
 
 
(3)沖縄県宮古島の川満長英氏から「私のさとうきび栽培」と題して、宮古地区のさとうきび生産の状況説明のあと、自らの栽培の特徴について紹介があった。また今後は、かん水の実施や株出し栽培の拡大、後継者の育成も視野に入れた規模拡大を図り、さらなる単収の増加および品質の向上に取り組むと報告があった。
 
 
(4)琉球大学農学部地域農業工学科の上野教授から、「品質取引用NIRスペクトルデータを高度活用した一筆施肥・栽培システムの構築について」と題して、現在、糖度測定に使用されている近赤外線(NIR)のデータを高度に活用し、糖度だけでなく、蔗茎中に含まれる窒素、リン、カリウム、マグネシウム、カリウム等を算出し、そのデータをコンピュータにより一筆ほ場単位で管理し、GIS(地理情報システム)を併用して使用することにより情報を視覚化して、施肥・肥培管理の適正化を図る増産と高品質化を実現するシステムについての報告があった。
 
 

5.地域・試験研究の取組

(1)沖縄県農業研究センター石垣支所の比屋根主任研究員から「八重山地域のさとうきび栽培における赤土流出対策について」と題して、沖縄県農業研究センター石垣支所がこれまで行ってきた八重山地区の赤土流出抑制対策である
  (ア)グリーンベルト(緑地帯)の設置
  (イ)緑肥のすき込み
  (ウ)排水の改善
  (エ)夏植の早期植付けによる裸地期間の短縮
  などの取り組みに加え、新たな対策として、さとうきびの夏植え栽培において、植付けと平均培土の直後に泡盛蒸留粕をほ場に散布すること等によって、赤土の流出を抑制する効果について報告があった。
 
 
(2)南西糖業株式会社業務部推進課の千葉課長から「計画搬入の現状と電脳手帳の活用」と題して、従来の営農手帳(野帳)を電子化して、農家の耕作のデータをリアルタイムで把握する電脳手帳(営農手帳システム)を導入し、安定した操業やさとうきび生産量を正確に把握する取組について報告があった。
 
 
(3)試験研究発表
 はじめに、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センターさとうきび育種ユニット長の寺内上席研究員から、近年のさとうきび研究の動向について紹介があった後、
 
  (ア)沖縄県農業研究センター作物班、伊禮上席主任研究員から「ポスト不萌芽時代の株出し栽培技術」について
  (イ)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所飼料作環境研究チーム 安藤上席研究員から「養分動態から見たサトウキビ生産の持続性」について
  (ウ)鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場 作物研究室 樋高主任研究員から「鹿児島県における株出し栽培の現状と今後の課題」についての報告が行われた。
 
 

6.現地視察

 以下の機関の担当者から施設の概要説明および視察先のポイントの紹介を受けた後、展示ほおよび試験ほ場の現地視察を行った。
 
(1)沖縄県八重山農林水産振興センター
 
(2)沖縄県農業研究センター石垣支所
 
(3)国際農林水産業振興センター
 
 
 
 
 
 

おわりに

 今回の検討会では、さとうきび生産者、糖業、研究者、行政の関係者を始め約230名の参加があり、担い手育成、増産に向けた取組みなどについて意見交換が行われた。今回の検討会で報告された事例や研究などを、各地域での取組の参考として活用していただき、さとうきび生産の一助となれば幸いである。
 
 開催に当たり、開催地である石垣島の関係者をはじめ、数多くの皆様から多大なご協力をいただいたことに深く感謝いたします。
 
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713