最終更新日:2010年12月27日
日本カラメル工業会 (池田糖化工業株式会社 瀧本 寛)
はじめに
カラメルの始まりは、さとうきび搾汁液やメープルシラップを煮詰めたとき、偶然得られた風味のよい焦糖であるといわれている。また、パンやケーキを焼くときつね色になることや、みそやしょうゆの醸造で時の経過とともに色が濃くなることも、自然にカラメルが生じているから起こるといえる。カラメルの自然な色合いは、食品のおいしさを引き立たせる名脇役として利用されている。本稿では、カラメルの概要、用途と種類および食品添加物としての位置付けについて紹介する。
1.カラメルとは
カラメルは、ポルトガル語とスペイン語ではともにCaramelo、フランス語でCaramel、ドイツ語でKaramell、英語でCaramel、中国語で焦糖と表記される。
欧米では、古くから家庭で、糖を加熱して得られた手作りカラメルが料理に利用されていた。19世紀になると、商業的に生産されたカラメルが菓子や飲料、ビールなどに利用され始め、明治初期にドイツからカラメルが初めて輸入され、ほどなく、砂糖を原料とする国産カラメルの製造販売が開始された。大正から昭和初期においては、カラメルは主に、しょうゆ、ソース、佃煮などに利用されていた。昭和30年代以降の経済成長とともに、食の洋風化、多様化が進み、多くの加工食品が生まれ、カラメルの用途が広がった。そして、食品産業の発展とともに、カラメルは種々の食品や飲料などに利用されている。
カラメルは、でん粉加水分解物、糖蜜または糖類の食用炭水化物を熱処理して得られたものであり、食品や飲料を褐色に着色するために広く用いられている着色料であり、医薬品や化粧品などにも用いられている。
カラメルは、褐色の液体または粉末で、カラメル特有の風味を有し、水に溶けやすく、油脂や有機溶媒には溶けない。カラメル溶液は、淡褐色から黒褐色を呈す。カラメルの色は、熱や光に対して安定で、pHの変化による色調変化はない。
2.カラメルの用途
カラメルは、商品として100年以上の歴史をもち、日本のみならず、世界各国で様々な食品や飲料に使用されており、食品用着色料の中では用途が最も広く、使用総量が最も多いものである。
天然系色素および合成色素を含めた日本の食品用着色料市場において、カラメルは数量ベースで80%以上を占め、需要量は約17,000トンといわれている。
カラメルの主な用途例としては、清涼飲料水、アルコール飲料、漬物、しょうゆ、ソース類、みそ、生菓子、菓子、乳製品、加工食品、調味料、医薬品、化粧品およびペットフードなどがある。カラメルは、それぞれ、食品や飲料などの性質に合わせて、風味、色力色調、食塩に対する耐塩性、クエン酸などの酸味料に対する耐酸性、果汁などに含まれるタンニンに対する耐タンニン性、耐アルコール性など、それぞれ必要とされる適性を有するものが使用されている。
また、カラメルは、着色の他に副次的効果として食品や飲料に、ロースト感の付与、フレーバーとの相乗作用、にがみ付与、コク付けなどの特性を利用することもある。カラメルの用途別需要内訳を図1に示す。