続けて開催された、現地検討会の講演では、北海道から「第4期北海道農業・農村振興推進計画におけるてん菜生産目標の考え方について」として、農家の高齢化の進展と一戸当たりの作付面積の拡大から、今後は直播栽培が選択肢の一つであることと、北海道の畑地産地資金において、直播栽培における収量減を考慮した一定程度の支援を検討中との説明があった。
次に、道総研十勝農業試験場から、「てん菜直播に関わる諸問題と技術的対策」として、てん菜農家経営における直播栽培のメリットについて説明があり、生産者には収量がやや低下してもコストの削減と労働時間の短縮を目指す経営も選択肢の一つであると紹介した。
最後に、生物系特定産業技術研究支援センターから、次世代農業機械等緊急開発事業(緊プロ)開発機「高精度てん菜播種機」の概要が説明された。手間がかかるてん菜の移植栽培は規模拡大の障害となっており、省力的な直播栽培の普及を目指し、慣行比1.5倍ほどの作業速度でも精度よく施肥播種が行え、かつ安定した収量が得られる高性能なてん菜播種機が開発されたと紹介があった。
本機は今まで直播手法の欠点とされていた、鎮圧が不十分な場合の出芽率の低下に対し、種子を土に密着させるための専用の種子鎮圧輪を装備し、春先の強風により芽の損傷を受けるなどの風害問題を軽減するための防風壁を作る(播種位置の両側に∧型土手を形成する)装置(耐風害播種床機構(注3))も備えたものとなっている。
参加者からは、本播種機を用いた場合、風力や風向の違いによる風害被害の減少程度に関する質問や播種機本体の価格、オプションの装備に関する質問などがなされ、生産者の関心の高さがうかがわれた。
現在、てん菜作付面積の減少に歯止めがかからない中、移植栽培よりも省力化が図られる直播栽培の占める割合は、平成22年産で12.0%である。平成18年産では6.0%だったものが、4年間で2倍になっている。今後も直播率が少しずつ増えていくのは確実であり、本播種機の生産者への普及が直播面積の一層の増加、ひいてはてん菜の作付面積の増加に寄与することを期待するものである。
(注1)原料てん菜立会業務功労者表彰とは、原料てん菜の立会業務において、受渡し並びに測定立会人として、その職務を誠実に尽くし、てん菜産業の振興発展に功労顕著な者を平成9年度から表彰しているものである。
(注2)原料てん菜立会人とは、農協が生産者団体と糖業者が協議の上選定、てん菜協会が認定し、その委嘱を受けた者が、生産者団体を代表するJA北海道中央会と糖業3社による原料てん菜の受渡しと測定の場に立会う者をいう。
(注3)播種機構後方に耐風害播種床形成機構を装着可能となっている。耐風害播種床機構は、ハ型軸上に異径車輪を配置し、1畝辺り左右1対で構成されている。前方の施肥作溝部、施肥覆土部により形成された盛土を耐風害播種床形成機構で押圧し、播種位置の両側に∧形状の防風壁を形成するものである。