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4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

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最終更新日:2011年3月2日

4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

2011年3月

調査情報部

◆ブラジル◆

 
 

(1)2011年2月における生産見通し

 生産の約9割を占める中南部地域では2010/11ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)の生産がほぼ終了した。大半の砂糖・エタノール工場は昨年12月末までに操業を停止しており、大雨による収穫遅延で圧搾が3月ごろまで続いた前年度に比べ早期の終了となった。同地域における4月から12月末までのさとうきび生産量は5億5500万トン(前年同期比5.6%増)、砂糖生産量は3350万トン(粗糖換算、同18.2%増)、エタノール生産量は2530万キロリットル(同10.3%増)と、いずれも前年度を上回ったとみられる。
 
 2010/11年度におけるブラジル全体のさとうきび収穫面積は、前年度の砂糖価格高騰による作付け増加を受け、796万ヘクタール (前年度比5.4%増)に増加するとみられる。しかし、さとうきび生産量は6億1850 万トン(同2.1%増)と予測され、前月から700万トン引き下げられた。
 
 これは、主産地中南部で乾燥した天候により単収が低下したこと、また、一部の工場が糖度を高めるためさとうきびの生育期間を延ばし、収穫を翌年度に回したことが影響したためである。これにより、砂糖生産量は過去最高の4090万トン(粗糖換算、同13.3%増)に達するものの、前月予測を20万トン下回るとみられる。なお、エタノール生産量は2760万キロリットル(同8.7%増)と予測される。
 
 

(2)貿易状況

 2010/11年度の砂糖輸出量は、生産量の下方修正により前月予測を30万トン下回るものの、増産と世界的な需要の高まりを受け、2840万トン(粗糖換算、同10.1%増)に増加するとみられる。ただし、国内価格が国際価格を上回る状況となり、一部の製糖業者が輸出向けに販売した砂糖を買い戻して国内に供給するなど、輸出動向に不透明な面もある。ブラジル最大の都市サンパウロでは、砂糖の卸売価格が上昇を続け、1月の平均価格は1ポンド当たり41.33セントに達した。
 
 
 
 
 1月の砂糖輸出量は130万トンとなり、前月(200万トン)および前年同月(180万トン)のいずれの実績よりも大幅に下回った。これは、前述の製糖業者による輸出向け砂糖の買い戻しと、国際砂糖価格の高騰で輸入国の需要が減少した影響とみられる。主要輸出先はロシア、ポルトガル、モロッコであった。
 
資料:LMC “Monthly Sugar Report, February 2011”
ブラジルさとうきび産業協会(UNICA) “Media Center” 2011/1/19記事
 
 
 
 
 

◆インド◆

 
 

(1)2011年2月における生産見通し

 2010/11インド砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、前年度の砂糖価格高騰による作付け増加を受け、516万ヘクタール(前年度比24.8%増)に増加し、さとうきび生産量も前年度から大幅増加の3億6300万トン(同29.1%増)と見込まれる。また、砂糖生産量は砂糖価格の上昇とグル(*注)需要の減少を受けさとうきびの砂糖への仕向け割合が68.5%と、前年度と同様高い水準になるとみられることから、砂糖生産量は2880万トン(粗糖換算、同41.7%増)と前年度から大幅な回復が予測される。なお、1月末までの砂糖生産量は前年同期比12%増加の1120万トンに達したとみられる。ただし、主産地のマハーラーシュトラ州で、季節外れの降雨により製糖開始が例年に比べ遅れ、糖度も低下したこと、また、ウッタル・プラデーシュ州では、生産者と製糖工場によるさとうきび価格の交渉が長引き製糖開始が遅れたほか、単収が当初予測を下回っていることなど、豊作見通しへの懸念も生じており、引き続き動向が注目される。
 
*注:インドの伝統的な含蜜糖
 

(2)貿易状況

 2010/11年度の砂糖消費量は2550万トン(粗糖換算、前年度比2.2%増)と、3年ぶりに生産を下回るとみられる。このため、輸入量は前年度から大幅減少の80万トン(粗糖換算、同79.7%減)と予測される。なお、政府は2011年1月1日、粗糖、白糖の輸入関税(各60%)を復活させたが、同月8日に再び撤廃し、免税措置は2011年3月末まで延期されることとなった。理由は明らかにされていない。
 
 砂糖生産の大幅な回復が見込まれる一方、輸出については不透明感が強まっている。政府は昨年12月、OGL(注1)方式で国産原料由来の砂糖50万トンの輸出を許可したが、今年に入り、国内食料価格の高騰を理由に輸出計画を見直すこととした。国際砂糖価格が高騰するなか、業界は早急な輸出実施を求めているが、政府は生産見通しがより確実になるまで慎重な姿勢をとるとみられる。
 
 仮に今年度の生産が豊作となれば、輸出量は300万トンに達すると見込まれ、この内訳はOGLによる国産砂糖輸出130万トン、ALS(注2)制度下の輸出120万トン、輸入粗糖を原料とする精製糖工場(stand-alone refiner)による輸出50万トンとされる。
 
 
資料:LMC “Monthly Sugar Report, February 2011”
 
注1:OGL(Open General Licence)とは、登録を行った業者に対し、個別のライセンスを取得せずに輸出を許可する制度。
注2: ALS(Advanced Licensing Scheme)とは、輸入粗糖を精製後、一定期間内に再輸出することを条件に輸入関税を免除する制度。
 
 
 
 

◆中 国◆

 
 

(1)2011年2月における生産見通し

 中国における砂糖生産の約9割は南部で生産されるさとうきびを原料とし、残りは北部のてん菜に由来する。2010/11中国砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、前年度の砂糖価格高騰による作付け増加を受け、152万ヘクタール(前年度比3.9%増)に増加するとみられる。
 
 さとうきび生産量は前年度からかなりの程度増加の8970万トン(同10.5%増)と予測されるが、主産地の広西壮族自治区と雲南省で昨年12月から1月にかけて寒害が発生した影響から、さとうきび由来の砂糖生産量は前月予測を80万トン下回る1100万トン(粗糖換算、同1.4%減)とみられる。なお、1月末までの生産量は前年同期比11%減の490万トン(白糖換算)となった。
 
 2010/11年度のてん菜収穫面積は前年度から大幅増加の19万ヘクタール(前年度比47.6%増)と予測される。てん菜生産量は、一部地域で干ばつにより単収が低下したことから、前月予測を50万トン下回るものの、710万トン(同40.5%増)と前年度から大幅な増加が予測される。てん菜由来の砂糖生産量も前月予測から10万トン引き下げられたが、前年度から大幅増加の90万トン(粗糖換算、同41.1%増)に達すると予測される。なお、1月末までの生産量は前年同期比27%増の75万トン(白糖換算)とみられる。
 
 これらのことから、中国全体の砂糖生産量は前月予測を100万トン下回る1190万トン(粗糖換算、同1.0%増)と、前年度からわずかな増加にとどまるとみられる。
 
 

(2)貿易状況

 政府は、国内砂糖価格の上昇を抑制するため、今年度において3回にわたり合計62万トン(白糖換算)の国家備蓄を放出した。なお、前年度においては、8回にわたり合計171万トン(白糖換算)が放出された。
 
 2010/11年度の砂糖消費量は前年度並みの1500万トン(粗糖換算)と予測され、前月から80万トン引き下げられた。これは、砂糖の価格高騰により需要が異性化糖などへシフトしているためである。消費量は下方修正されたものの、依然生産量を大きく上回り、また、国家備蓄も減少していることから、輸入量は前年度から大幅増加の210万トン(粗糖換算、同32.9%増)と予測される。
 
 2010年12月における粗糖・白糖輸入量は、国内需給のひっ迫を受け、前年同月の約6倍となる12万5000トンに増加した。輸入先の大半はブラジルであった。
 
資料:LMC “Monthly Sugar Report, February 2011”
 
 
 
 

2011年3月

フィリピンにおける最近の砂糖需給動向
〜2010/11年度も国内供給不足の見通し〜

調査情報部

 
 
 フィリピンは近年、年間200万トン程度の砂糖を生産し、基本的に国内消費を自国で生産される砂糖で賄ってきた。また、生産の多寡にかかわらず、特恵アクセスが認められている米国向けに輸出を行っているほか、2000年代以降は、砂糖産業の近代化による生産量の増加を受け、余剰分をアジア諸国へ輸出してきた。
 
 我が国にとっても、同国はタイ、豪州、南アフリカに次ぐ粗糖輸入先となっており、年間1〜4万トン程度が供給されている。最近、アジアの砂糖需給は、豪州やインドネシアの悪天候による減産などでひっ迫感が強まっており、また、国際砂糖価格も高水準で推移するなか、フィリピンの供給余力が注目される。本レポートでは、同国の最近の需給動向について紹介する。
 
*注:本レポートの数量は粗糖換算である。
 
 

2008/09年度以降、減産傾向

 1990年代、フィリピンの砂糖生産はとうもろこしやバナナなど代替作物との競合、都市化に伴うさとうきび栽培面積の減少、干ばつや病虫害の影響で低迷したが、2000年代に入ると、高収量品種の普及や製糖工場の近代化により増加傾向で推移し、余剰分をインドネシアや日本などのアジア諸国へ輸出するようになった。また、同国は米国の関税割当制度に基づく特恵アクセスが認められており、生産量の多寡にかかわらず、毎年14万〜18万トン程度の砂糖を米国に輸出している。
 
 しかしながら、2008/09フィリピン砂糖年度(9月〜翌8月)は、原油や肥料価格の高騰による生産コストの増加、悪天候による歩留まりの低下の影響を受け、生産量は前年度から大幅減少の206万トン(前年度比19.2%減)となり、消費量(215万トン)を下回った。2009/10年度においても、台風や干ばつ被害により、生産量は197万トン(同4.2%減)と前年度からさらに減少し、消費量(219万トン)を下回った。
 
 砂糖生産が減少する一方で、消費量は人口増加や経済発展に伴う食品加工部門の需要増で増加傾向にある。国内供給の不足を受け、2009/10年度には27万トンの輸入が行われ、フィリピンは2001/02年度以来の純輸入国となった。特に2010年5月以降、輸入量は急増し(図1)、その大半がアジア最大の輸出国タイからのものであり、マレーシア、ブラジルがこれに次ぐ。国内供給が不足する状況下においても、同年度には米国向けに砂糖18万トンが輸出された。
 
 
 
 
 
 
 
 

国内価格の高騰続く

 政府は、国内市場の流通を管理すると同時に、輸入関税を課すことで国内砂糖価格を高水準に維持している。このことは、国内の砂糖産業を保護する反面、多くの島から成るフィリピンにおいて砂糖が不正に輸入される原因ともなっている。
 
 過去5年間をみると、2009年前半までは精製糖の小売価格は高くても1キログラム当たり39ペソ(79円:1ペソ=2.02円*注)程度であったが、同年後半から上昇基調となり、2010年12月には同62.84ペソ(127円)に達した。このことからも、国内需給がひっ迫した状況にあることがうかがえる。
 
 国内価格の上昇を抑制するため、農政省と貿易産業省は、砂糖の推奨小売価格(SRP:the suggested retail price)を2010年1月以降、1キログラム当たり52ペソ(105円)とし、これを上回る価格で販売する業者に対しては店舗閉鎖命令や罰金を科すなど、小売価格の監視を強めている。しかしながら、国内価格は依然として高い水準にあり、また、小売業者からは、砂糖の卸売価格自体が上昇しており、SRP以下の価格で販売すれば赤字になるとの不満も出ている。
 
*注:TTS相場1月最終日
 
 
 

2010/11年度の生産は前年度並みにとどまる見込み

 2010/11年度の砂糖生産量は、ラニーニャ現象による大雨で製糖開始が遅れた上、さとうきびの糖度も低下したため、前年度並みの196万トン(前年度比0.5%減)にとどまるとみられる。一方、消費量は223万トン(同1.9%増)に増加すると予測され、前年度に引き続き生産量を上回るとみられる。
 
 また、2010/11年度の輸入量は、2008/09年度以降、減産で在庫率が低下する中、米国向けの砂糖輸出が14万トンと設定されていることから、前年度の約2倍となる51万トンに増加すると予測される。砂糖価格が高騰すると、甘味料需要が異性化糖(HFCS)などへシフトする可能性がある一方、国際価格の高騰で砂糖の不正輸入が減少する傾向にあることから、同国の需給はよりひっ迫し易い状況にあるとされる。
 
 2000年代以降、フィリピンは我が国を含むアジア諸国に砂糖を供給してきたが、最近では異常気象などの影響により生産量が減少している。その一方で、国内消費量は堅調に推移し、また、特恵アクセスが認められる米国向け輸出を確保するために、他国からの輸入が必要となるなど、需給状況に変化が生じている。2010/11年度においては、生産が引き続き低迷し、供給余力も低下するとみられるだけでなく、輸入の増加によってアジア需給をひっ迫させる一因ともなり得るため、引き続き同国の需給動向が注目される。
 
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
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